第18話:悪戯の代償
「ひっく、ひっく、うえええ酸っぱいのじゃぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
「泣くほど辛いんならやらなきゃよかっただろうに」
「この私にイタズラしたんだもの、とーぜんの報いよ報い」
テレサさんが泣きながらしそふりかけおにぎりを頬張っている。
それを見て今度は自分の手にあるおにぎりに視線を落とす。
……これ、食べなきゃダメかぁ。
まあ自業自得と言われればそれまでなのだ。
ちなみに最初にテレサさんに食べさせたくらいのレベルだったら美味しく頂けた。
やりすぎたなぁ。
「ちなみにこの件に関しては米原さんも特別扱いしないのでちゃんと食べ切ってもらうからな」
「当然です」
天王寺さんから念を押されるが、言われるまでもない。
食べ物粗末に扱うのはダメ絶対。
これは揺るがない、譲れない信念。
だから自分のやった事にはちゃんと責任を持って、けじめをつける。
とはいえ、ものがものだけに覚悟がなかなか決まらずに、ズルズルとここまできているのも事実。
いや、あるにはあるのだ。美味しく食べる方法が。
おいしくなーれ。
多分、これを使えば美味しく食べられるんじゃなかろうか。
使いたくない。めっちゃ使いたくない!
でも、使わざるを得ないッ!
くっそ、永久封印するつもりが、まさかこれを使う日が、しかもこんなにも早く訪れることになるとは、夢にも思わなかった。
でも、気休めでもいい。少しでも美味しく食べれたらいい。……いいなぁ。
ええい、男は度胸だ!今は女だけど!オレンジ色の髪の死神さん、度々申し訳ないけどもう一回覚悟を決めるエネルギーください!
「お、おいしくなーれ」
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
くっっっっっっっそ恥ずかしい!恥ずか死する!
誰得なんだよこれぇ。
[声が小さくてスキルがうまく発動しませんでした]
なんでじゃー!!!
声量求められるのこれ!?で、発動しなかったってことはもう一回やるの?これを?やりゃあいいんだろこんちくしょー!こうなりゃヤケだ!
「おいしくなーれ!」
[気持ちがこもってなくてスキルがうまく発動しませんでした]
ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
「おいしくなーれ♡」
[スキル発動に笑顔がたりませんでした]
クソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
思わず手に持ってたおにぎりを叩きつけるところだったわ!
たった一言に求められる条件が厳しスギィ!
くっ、落ち着け俺、クールにいこう。まずは深呼吸だ。すーはーすーはー。
よし。
まずは笑顔、ヨシ。
次に気持ちを込めて、最後に声量に気を付けて。
ついでに語り掛けるように口元に手を持って行って。
「おいしくなーれ♡」
ぴこん♪
お?さっきまでと違って何か効果音ぽい音が頭の中で流れたぞ。やったか?
さっきまでと何か違いはないかじーっとおにぎりを見つめる。……見た目は変わらないか?いや、なんかちょっとだけキラキラして見える。……気がする。
味はどうだ?あーん。
「はむっ」
もっきゅもっきゅ。
……
「酸っぱぃ……なんでぇ」
めちゃくちゃ酸っぱい。酸っぱすぎて顔が
ダメだ、涙でてきたわ。
あんだけ恥ずかしい思いしたのに酸っぱいのは変わらないし、やり損ていうかガッカリ感が半端ない。
「もう一度やってみたらどうじゃ?」
「なるほど、でも効果重複するのかな?って」
何気に声に反応して、あれ?ってなって顔をあげたら三者三様だけど、三人ともニヤニヤしてこっち見てた。もしかして……
「見てました?」
「かっわいかったわ!恥ずかしそうにやるのも凶悪だったけど最後のは特に」
「いやーいいもん見た。アキバのメイドさん楽に超えてんな。行ったことないけど」
「是非!ワシのおにぎりにもぜひ頼む」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
もーやだこの世界ぃぃぃぃぃぃ!
「チュン」
雀も見てたらしい。どことなく生暖かい目で見られてる気がする。
「お前もかよぉぉぉぉぉぉ!」
今すぐ物言わぬ貝になりたい!
誰にも邪魔をされずに海に還れたらいいのに!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます