第12話:お風呂

「ふぅ〜。いい湯だぁ〜」


 ああ、あったかいお湯が全身に染みる。疲れが抜けてくぅ。今日は特に色々あって疲弊してるからか、もう全身が蕩けてしまいそうだ。

 お風呂に入るたびにいつも思うけど、「風呂は命の洗濯」っていうのは名言だよな。


 ……で、なんで俺お風呂に入ってるんだっけ?


 確か、空腹で倒れてた美人さんに餌付けしたらお家にご招待されて、美人さんのお家にお風呂があって、んじゃあ入る?ってなって。


 いやあ、随分トントン拍子に事が運んだなぁ。


 まあ、お風呂が気持ちいいからいいか。


 この浴場、趣味がいいというか、センスがあるというか、まるで小さなスパ。大理石でできてる浴槽ってなんかそれだけで贅沢な気分。日本の旅館のような和風なお風呂もいいけど、こういう洋風なお風呂も悪くない。

 そんな贅沢を噛みしめるように湯船にどっぷりと浸かる。


 チラ。


 \コンニチワ/

   お胸


 いや、本当に胸が言ってるわけじゃないんだけど。もう夕方っていうか夜?だけど。

 服を脱いだ時も思ったけど、本当にあるなぁ。そこまで大きくはないけど、掴める、軽く揺れる程度にはある。

 そんなこと考えたせいか、頭の中で例の大総統が出てきておっぱいプルンプルンとか言ってやがります。ネットの世界へお帰りください。

 ていうかこの身体、プロポーション抜群なんだよな。ほっそりとしたいわゆるスレンダータイプ?で、グラビアアイドルといい勝負ができるんじゃないかってくらいに。

 脱衣所に鏡があったから下着姿でポーズとったらもう様になる様になる。楽しくなってちょっとの間色んなポーズをとったのは誰にも言えない秘密だな。身体が冷えたからすぐに浴場に入ったけど。

 で、肌もすごいんだ。ツルツルスベスベ。で、張りもあって。

 ただこれ、維持するには色々しなきゃいけないんだろうなぁと思うと少しげんなりする。いや、維持するためのアイテムがないか?

 でもまぁ、お風呂くらいは毎日入りたいよなぁ。はぁ〜心も身体もリラックスするわぁ~。


「邪魔するぞー!」

「へ?えええええええ!?」


 なんて油断してたところに突然扉がバーンと開いたと思ったら、家主がマッパで仁王立ちで登場。


 当然俺びっくり。


 え?一緒に入る気!?あと前!前!デッッッッッ!!せめてタオルで隠して!あ、どうでもいいけどタオルも存在しましたこの世界。


「ちょちょちょ、俺できれば一人でゆっくりしたかったんですけど!?」


 思わずちょっと素が出たけど向こうは一向に構う気配なし。風呂桶を抱えながらズンズン歩いてくる。ていうか最初ひよこのおもちゃと見間違えたかと思ったけど、桶の中にさりげなく雀がいるんですが。お前も入るの?ていうか入れるの?


「堅苦しいこと言うな。おぬしの世界じゃ裸の付き合いという言葉もあるそうではないか」

「確かにありますけど!ていうかお姉さんこっちの世界について詳しすぎません!?」


 「いただきます」や「ごちそうさま」といい、なんでそんな日本の事に詳しいんだこの人!?


「よいではないかよいではないか」

「よくないです!ってか答えになってなーーーーい!!!」


 割と広めの浴場に俺の叫び声が響き渡った。

「ふぃ~。やっぱ風呂はいいの~」

「そうですね」


 結局押し切られたというか、強引に湯船に入ってきた美人さんとの入浴タイム。俺の癒しの時間は既に終わったらしい。

 で、まあそこそこ広い浴槽のおかげで少し距離をとれるのが本当にありがたいんだけど、元男の俺としては超目のやり場に困る。自分の体ならまだしも、他の人の身体を見るのはそこはかとない罪悪感がちょっとね。それでもさっき不可抗力とはいえ見てしまった身体は……すごかった。

 さっき自分の身体を評価した時、グラビアアイドルとタメを張れると評したけど、美人さんはグラビアアイドルが裸足で逃げ出すプロポーション。とてもさっきおにぎりを馬鹿食いしたのと同一人物とは思えない。あ、もしかしておにぎりの栄養、全部胸に行って……っていかん、これ以上の変な想像は鼻血がでる。

 雀と言い美人さんと言い、どこにそんなに入っていってるんだろうか。

 その雀はというと、湯船に浮かんで目を細めていた。いや鳥って確か羽を濡らしちゃいけないんじゃなかったか?大丈夫なんだろうか。


「どれ、程よく身体も温まったし、そなたの背中でも流してやるとするかのう」

「ヒェッ、結構です。もう上がりますのでぇ!」


 思わず上ずった声が出た!そりゃそうだ、そんなことになれば刺激も申し訳なさも計り知れない!いくらなんでも女になったばかりの俺にそんなキャッキャウフフイベントは無理すぎる。てかこんな百合イベ、ゲームとか空想のものじゃないのかよ!?

 雀の心配してる場合じゃねぇ。逃げるんだよォ~!


「ただいまテレサぁ!俺も一緒に風呂入る……」


 とにかく逃げ出そうと脱衣所へ急いで向かおうとしたら、まさか脱衣所の扉が開いて誰かが入ってきた。


「へ?」

「あ?」


 あまりにも想定外すぎて固まる。てか向こう、入ってきたタオルを腰に巻いた男も固まった。


 お互い変な声を出した後、沈黙。カポーンという音が聞こえたような気がした。


「いつまで見ておるこんの痴れ者がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「へぶらっ!?!?!?」


 その空気をぶち壊したのは、美人さんと美人さんが投げた風呂桶。見事男の顔にクリーンヒット。

 風呂桶が顔面に直撃した男はものの見事に吹き飛び……てか、風呂桶が当たったにしてはおかしい、まるでトラックにでも轢かれたのかと思うくらいに面白い吹っ飛び方をしながら脱衣所の奥の方へと消えて行った。


 え?今の誰?今何が起こった?一気に色々起きすぎて頭が処理しきれないんですけどぉ!?











ちゃんとサービスできたかな?

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