第7話:能力の検証
「チチッ」
「いやぁ、そのちっちゃい身体のどこにそんなに入るのかなぁ」
能力のレベルアップ云々はあったけど、俺は雀がおにぎりを食べるところをずっと見て癒されていた。
で、この子が見た目によらずめっちゃ食うんだ。
最初に用意した分だって、この子と同じサイズで三つ用意したのに、まさかのおかわりを要求された。
いやマジでどこに入ってるんだよ。
さっきの超ジャイアントキリングといい、まさに異世界マジック。
で、あんなつぶらな瞳で見つめられたら、色んな意味でやられてる今の俺に拒否する事なんで無理難題だった。
んで、まあせっかくなのでさっそくさっき追加されたゴマを混ぜて塩ごまおにぎりにしてあげたのだが。
気に入ったのか、これも用意した三つをペロリ。
実にいい食べっぷりでした。
ま、作った側としては嬉しいし、お礼としては喜んでもらえたようで何よりなんだけど。
やっぱり不思議だわ。
「チュン、チュン」
雀が嬉しそうに俺の周りを飛び回る。
「ま、どうでもいいか」
その可愛いらしさを愛でることで他のことがどうでもよくなった。
・
・
・
「あ」
そういえば魔法の検証をしようとしてたんだった。
すっかり忘れた……
まあ、仕方ないよな、ちょっとインパクトの強いイベントが発生した上に、……ちょっと?まあいいや。それに、自分の常識を超える出来事が多すぎた。
ついでに色々あって心が軽くなったうえに雀の可愛さでダメ押しされてたわけだし。
我ながら随分濃ゆい時間を過ごしたなぁ。
よし、魔法の検証をはじめよう。
気持ちの切り替えは大事。
確か木の桶のご飯粒を〜……木の桶が消えてる。
うーん、木の桶はおにぎり握ったら消える仕組みなのか。まあさすがに桶だけ使うっていうのは都合がいいだろうしな。
で、どうしようかな。
自身は相変わらず別段汚れてないし、そういえばあれこれあった雀も何故か見た目は綺麗。なんかの魔法かコーティングの能力でもあるんだろうか?
ま、それはそれとして、これじゃあクリーンの魔法の検証は無理だな。魔法は使ってみたいけど、とりあえずは後回し。他にも検証したい能力はあるし。
あ、おいしくなーれは一生封印で。
チラッ。
で、後ろをチラ見すれば、デカいサイ(仮)の死骸。
正面向いてると嫌でも目に入るから後ろを向いてたんだけど、今度はちゃんと向き合う。
かわいそうだとは思うけど、こっちも命を狙われたんだ。それに雀が何とかしてくれなかったら、ああなっていたのは俺の方だしな。成仏してくれ。
さて、気を取り直して。
しかし本当に大きいな。こういう強そうなやつって、異世界じゃたいてい色々用途があって、高く買い取ってくれるっていうのが定番だ。だからなんとか持って行きたいんだけど、例の空間倉庫の能力に入るかな?
というわけで次の能力の検証は空間倉庫に決定。
「で、どうやって使うんだこれ?」
そういや貰った能力って、ギフトの「握りの極み」以外の使い方の説明ってなかったよな?
とりあえず空間倉庫の能力を使えるように強く念じてみる。すると。
ポン
軽い音と共に目の前には神様が背負ってたようなリュックサックが現れた。
「おお、分かりやすいな」
何もない空間からポンとリュックサックが出てくる不思議は置いといて、ものとしてはとても分かりやすい。
ちなみに開けて中を覗いてみたら、いたって普通のリュックだった。小さいポケットも同じ。だからこそだけど、ちゃんと空間倉庫として使えるのかちょっと不安になったりもしたけど、使用には全然問題がなかった。
「……すっげぇ」
思わず声が出る。というのも今目の前で、その見た目普通のリュックサックがサイ(仮)をガンガン吸い込んでるファンタジーな光景が展開されてるからだ。
で、数秒もしたら何もなかったかのようにリュックサックだけが残された。
なんか、起きてるのに夢でも見てる気分だ。改めてすごいな、このリュックも、異世界も、神様も。
そんなこと思いながらまずはリュックを持ち上げてみる。
うん、重さは全然感じない。
中を覗いてみると、さっきまであんなにデカかったサイ(仮)が、透明なブロックに閉じ込められたような状態でリュックの中の半分くらいを占拠してた。
これも分かりやすくていいなぁ。理屈云々はこれはそういうもんだと思って、もう考えるのをやめることにした。
超便利。もうそれでいいや。
そう決めてリュックを背負う。
で。
背負うときにせっかくならこれ、消したり出せたりしたらもっと便利なのになぁって思ったら背負ったはずのリュックサックが消えた。
まさかと思い、今度はさっきのようにリュックが出るように念じたら、背負ったはずのリュックがポンと目の前に現れた。
……まさに至れり尽くせり。深く考えたら負けだ俺。
ヨシ。空間倉庫の確認ヨシ!
さてさて、空間倉庫の確認が終われば次は簡易鑑定の検証だ。
幸い、ここは草原だけあって草はそこら中に生えている。なんならキノコなんかもチラホラ生えていて、検証にはもってこいだ。
まずはさっき空間倉庫を使ったように強く念じてみた。
特に何も変化はない。
使い方間違えたかな?と思いつつ、とりあえずしゃがんで目の前に生えてるタンポポみたいな植物を凝視。
「うわっ!?」
そしたら、タンポポみたいな植物の横に漫画の吹き出しみたいなのが現れた。
びっくりしたせいでバランスを崩して尻もちついたわ。
と、それよりもさっき何も起きなかったのは、何を鑑定するのかはっきりしなかったからかな?その辺は分からないけど、能力としてはこれも分かりやすくてありがたい。
そう思いつつ、体制を立て直しながら吹き出しの文字を確認してみる。
[ジャイエカエ]
「……なんと?」
何かよくわからない文字が書かれてた。
あ、文字は読める。意味が分からないって意味で。
もう一回読んでみる。
[ジャイエカエ]
「なんだよジャイエカエって」
結果は変わらなかった。いや、マジでなんだよジャイエカエって。
……とりあえず続きを読んでみるか。
[ジャイエカエ:この世界ではポピュラーな植物。山や平原など生息域は広い。茎がよく食べられていて、シャキシャキ触感で割とおいしい]
……この植物の名前だったのか。
うん、これが食べられることは分かった。能力の使い方も分かりやすかった。
でもほかの植物もこんなファンキーな名前ばっかりだったらどうしよう。
慣れるしかないのかなぁ。
と思いつつ、近くに生えてたちょっとカラフルでいかにも毒ですってキノコに焦点をあて、出てきた吹き出しを読んでみる。
[平原キノコ:名前通り主に平原などに生息。見た目と違って無毒。うま味を多く含んでおり、スープにすると絶品。ただ、似たようなキノコが多い上に、有毒なものも多い。そのためあまり食されていない。ある部族では勇気を試す試練として用いられている]
あ、まともそうなのもある。ていうかまさかの普通のキノコだし、うまいのか。絶品かぁ。無毒と分かってても食べるのに勇気がいりそうなキノコだなぁ。
とりあえず採取。で、早速リュックサックを呼びだして中に放り込む。
そのまま今度は真っ青なホウレンソウのような植物を見てみた。
[癒し草]
「癒し草?」
なんだかファンタジーな植物が出てきたな。
[癒し草:魔力のある所によく生える草。食べられるがかなり苦い。ちょっとだけ傷を癒すためにそう呼ばれている。簡易ポーションの材料]
ポーション!なんか何から何まで定番だなぁ。
けどまあ、そういうのがあるって知れたのは大きい。怪我した時とか役に立ちそうだからね。
というわけで採取採取。
なんだか楽しくなってきたぞ。
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