第二章

第33話 戻る日常 1

アイドルにならないと答えてから、一週間がたった。

ステージの後にも、天音とは少しではあったけれど、連絡はする仲にはなっていたけれど、お互いに私がアイドルにならないのかという内容には触れないでいた。

だからか、自然に内容は他愛のない内容ばかりだった。


「今日はいい天気ですねって、私は恋愛したての中学生か?」


送った内容を見て、そんなことを思う。

でも、そんな内容以外送れる内容もないということもわかっていた。


「幸來、それじゃ、行ってくるから」

「うん、お姉ちゃん、行ってらっしゃい」


部屋に入ってきたお姉ちゃんはそれだけを言ってから出ていこうとしたところで、何かに気づいたのか、私に近寄ってくる。


「お姉ちゃん?」

「じっとして…」

「うん」


お姉ちゃんは、すぐに私の顔をまじまじと見る。

何か気になるところがあったのかな?

そう思っていると、お姉ちゃんは私の体を触る。

そして、何かに気づいたのか、すぐに頭をなでられた。


「無理はしないように」

「わかってる」


そう言うと、今度こそお姉ちゃん、静香は出ていく。

本物のアイドルとして仕事している静香は、多忙なのだということを、私自身もわかっている。

それでも、毎日のように行く前に私の顔を見るのには理由があった。

それは、私の体調を確認するためだった。

小学生のときから、アイドルを夢見ていた私は、中学生になってアイドルのオーディションを受けるために、ダンスを練習したり、歌を練習したり、とにかくアイドルを目指すためにいろいろなことをしていた。

小学生のときよりも、具体的に考えて…

だからなのかはわからないけれど、私は気づいたときには病気になっていた。

気づいたのは、ダンスの練習をしていて、少しめまいがした。

疲れているのかなと思った私は、休憩するために飲み物を飲もうとした。

家の自分の部屋でやっていたことだったから、すぐ近くに飲み物もおいていた。

だから、何も心配していなかった。

でも、気づけば私は倒れていた。

起きたときには、私はお姉ちゃんである静香が目の前で泣いている姿を見た。

何が起きたのかわからなかったけれど、貧血だと、このときは考えていた。

それでも、大きな音がして私が倒れたので、心配になった両親とお姉ちゃんによって、大きな病院に連れていかれることになった。

ただの疲れなのか、そんなことを言われるのだと、考えていた。

でも、言われたのはお母さんも一緒にいいですかというものだった。

中学生ということもあって、一人で話しくらい聞けると言っていたけれど、その言葉を聞いた私はお母さんと一緒に説明を受けることになった。

そこであったのは私自身には信じられないもの。

心臓の病気がみつかったのだ。

いくつもの説明を受けたけれど、基本的には薬によって病気を抑えることで、完治を目指すというものだった。

次の日から、私は薬を飲み続ける生活になった。

できたはずの運動も、動くたびに気づけば動機が速くなっていて、長く続けられなくなった。

リハビリという感じで、ゆっくりと体に負荷をかけるために、私が行っていたのが、プールでの運動だったりした。

でも、病気になって一番大きな変化というのは、家族が遠くなってしまったということだった。

薬によって完治できなかった際にかかるお金を少しでも稼ぐためにと仕事に行くお父さんとお母さん。

私がやりたかったことである、アイドルに私がなることができなくなって、それを見ていたお姉ちゃんが代わりという風にアイドルになった。

だから、こうしてアイドルの仕事に行く前には、絶対に私の体調をチェックするようにして部屋に入ってくる。

私が天音のステージに乱入をしたということについては、同じ事務所に所属しているお姉ちゃんは知っていて、あのときアイドルにならないと言ったこともあって、これまでと同じように天音と一緒にレッスンをすることもできなくなってしまった。

それを仕方ないことだというのをわかっている。

少しだけでも、アイドルと同じステージに立てて、プラスで大きな歓声を受けられたということだけで私は嬉しかった。


「少し前まで、本当に忙しかったからな…」


先週の今を考えると、そう考えても仕方ないことが多く起こったから、今日ゆっくりしていると、どこか違和感があった。

何もすることがないのも、なんだかなと思ってしまう。


「部屋の中にずっといるから、余計なことを考えちゃうんだよね」


少し前までダンスで体を動かしていたのに対して、今は何もしていない状態だった。

体を動かしていないせいで、よくないというべきか、昔の出来事も思い出すことになってしまったのだから…

そう思った私は外に出ていく。

薬を鞄に入れて…

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