第14話 ステージに向けて 2
「これで私も目指したアイドルに…」
画面に表示されたステージという字を見ながらも、そう思ってしまう。
ただ、すぐに首を振る。
そんな甘い考えではステージでうまくいくはずがないということがわかっているからだった。
何もかもがうまくいく。
アイドル事務所のオーディションに受かったときは、そうだと思っていた。
苦手なダンスも、教えられることでうまくなるものだと思って練習をした。
でも、そんな都合よくはならなくて、結局半年近くも何もうまくいかなかった。
それでも、諦めたくなくて芸能化があるこの学校に入学したことで…
ううん、花澄さんに出会うことで私は少し変わることができた。
オーディションに受かって、ステージに立つのは始まりの一歩にすぎないのだから。
こんなことで、満足してる場合じゃない。
次のステージで、少しでも私の理想とするアイドルにならないといけない。
だったら、頑張ってやるしかない…
そう思っていたときだった。
「何を見ているの?」
「えっと、これは…」
「そうね、他事務所の人間には話すことができないものね」
「すみません」
「いいのよ。でも、今のでわかった。ステージが決まったんだ」
「それは、その…はい」
「どこでやるの?」
「それは、ここで」
そう言って、私は出る内容のものを表示して、さらにはナビアプリを使って場所を説明する。
アイドルとして、どこでやるのかと言われれば、答えなければいけない。
そもそも、調べればわかることなので、隠す必要もなかった。
高南梅は、それを確認すると自らも、検索してどういう内容のステージになるのか、調べている。
「ふーん、前座なんだ」
「はい、でも…」
「いいんじゃない?いい先輩がいるものね」
「それは…」
「恥をかかせないものになるといいね」
「…」
高南梅の言った言葉に、私は何も言えなかった。
高南梅はすでにデビューを果たしている。
人気も、少しずつでも必ず上がっている。
そんな彼女は、アイドルとしてやっておいた方がいいことというものを確実にしているのではないのかと思ってしまう。
私はアイドル事務所に受かったときに、言われたことを思い出した。
多くのステージに立つため必要なことというもので第一に、まずは裏方に好かれる必要があるということ。
それを聞いたところで、最初頭の中は?でいっぱいだった。
でも、アイドルとしてレッスンをするにしても、トレーナーを務めている人たちに呆れられたり、うまくいかなくてどうしようもなくなったり…
そうなったところで、陰口を叩かれていたというのだってわかっていた。
何かをするときには、そこに多くの人が関わっている。
だから、高南梅が言った、恥をかかせないようにという言葉で、心を新たにする。
喜んでちゃ、ダメだ。
もっと、もっと、もっと…
頑張らないといけない。
学校を後にした私は、レッスンに向かう。
踊る曲は決まっている。
事務所先輩である、シノの曲であり、デビューを飾ったときのもの。
事務所に来るまでの間にも、何度もダンスを見て、曲を聞いていた。
「ふう…頑張らないと」
「レッスンを始めます」
「はい」
レッスンスタジオの一室で、私はダンスの練習をするのだった。
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