第九九話 刻まれし淫紋の、目的は


 アスカの腕が、こちらの首回りに絡んできて。

 気付けば、俺は横たわった彼女のもとへ引き寄せられ――


「ん、ちゅっ……♥」


 唇が、重なり合う。


「な、ななななな……!」


 目をまん丸に見開きながら、狼狽するキリカ。

 そんな彼女をよそに、アスカは蕩けた目でこちらを凝視しつつ、


「んむっ……♥ ぇろっ……♥」


 口内を犯すように、舌を絡ませてくる。


 アスカからすれば初体験、だからか、技術的にはやや拙い。

 ゆえにこそ、俺は冷静さを保ったまま、現状を考察することが出来た。


 ……彼女の行為はおそらく、セシリア達の手によって刻まれた、淫紋によるものだろう。


 それが具体的に、どのような意図で以て実行されたのかは、依然として不明だが。

 いずれにせよ。

 俺は再び、選択の瞬間に立ち合うことになった、と。

 現状は、そのように理解すべきであろう。


「ぷぁっ……♥」


 満足したのか、唇を離すアスカ。

 互いの唾液が口元で糸を引く様は、実に淫靡な光景であったが……

 そこに興奮を覚えるよりも前に。


「ぅくっ……♥」


 目前にある美貌が、小さな歪みを見せた。


 苦悶と快楽がまぜこぜになったようなその表情もまた、おそらくは淫紋によるものだろう。


 少し彼女から離れて、全体像を確認。

 それからブルマをめくり、下腹部に刻まれた淫紋を目にする。


「……やはり、これがなんらかの影響を及ぼしているとみて、間違いない、か」


 妖しげな輝きを放つ、ハート型の紋章。

 その煌めきは秒刻みで強まっており……それに合わせて、アスカの容態が悪化していく。


「く、うぅっ……♥」


 快感混じりの苦悶。

 それが新たに漏れ出てから、すぐ。

 アスカの鼻から、血液が漏れ出てきた。


「っ……!」


 ここに至り、狼狽していたキリカが正気に戻ったらしい。

 彼女は心配げな顔で、アスカを凝視して、


「ど、どうなってるの……!?」


 不安と恐怖、そして焦燥。

 あどけない美貌にマイナスの情を宿す彼女へ、俺は自らの推察を口にした。


「現段階においては、仮説の域を出ないが……このまま捨て置けば、アスカは命を落としてしまうかもしれない」


「えっ……!?」


「だが確実に、対処法は用意されている」


「た、対処、法……」


「あぁ。そのためにも、キリカ、君に頼みたいことがある」


 こちらの真剣さに対して、彼女も何か思うところがあったらしい。

 キリカは決然とした顔をしながら、小さく頷いた。


「……アスカを助けるためには、何をすれば、いいの?」


 この問いに対して。

 俺は一切のおふざけなく。

 至極真面目に。

 次の言葉を、投げた。



「俺達の自室へ戻って……今朝方、君が見せたアレを、持参してくれ」



 そう述べた直後。


「………………はぁっ!?」


 意味がわからない。

 そんなリアクションを見せてから、彼女は顔を真っ赤にしながら、


「な、ななな、なに言ってんのよっ! こんなときにっ!」


 怒気と羞恥。二つの感情を叫ぶ。


 それも無理からぬことだろう。



 今朝方見せたアレというのは……避妊具である。



 この世界は現代日本のそれとほぼ同一であるため、そういったものが存在していても不自然ではない。


 キリカは手と口でこちらのそれを処理した後、興奮の絶頂にあったらしく、自らの勉強机からそれを取り出し、次のステップへ進もうとした。


 さりとて、それを受け入れたなら遅刻が確定するため、あえて据え膳を食わなかったわけだが……それはさておき。


「アスカを救うためには、一定レベルの快感を与える必要がある、と。俺はそのように推察した」


 成人向けゲームの世界にて、ヒロインが淫紋を刻み付けられ、快感混じりの苦悶を見せているというのは……


 ほぼ確実に、そういうことをせよという世界からのメッセージだと、そのように捉えるべきであろう。


 こういったタイミングで真っ当な貞操観を持ち出したなら、きっとシナリオが崩壊し、破壊者が出張ってくるに違いない。


 ゆえにこそ。


「仮説に信憑性があるか否か……試してみよう」


 躊躇することなく。

 俺は、ベッドに寝そべりながら苦悶するアスカの乳房を、鷲掴んだ。


「んぁっ……♥」


 彼女の嬌声を耳にしつつ……

 体操着を押し上げる双丘を、両手で揉みしだいていく。


「…………っ!」


 何か言いたげではあったが、しかし、キリカは黙したまま、こちらの行為を見守り続けた。


「くっ……♥ ふぅ……♥」


 ぷっくらとした唇から漏れ出る、淫らな声。

 そのリズム感に合わせるように、俺は彼女の爆乳を揉み続けた。


 アスカは下着を身につけておらず、ゆえに体操着越しに伝わるそれは、ナマの触感で。

 やがて掌の中央あたりに、硬いしこりのような感触が伝わってきた頃、


「も、紋章が……!」


 妖しげな輝きを、弱めていく。

 が……完全なる消失には、至らない。


 そのためには、さらなる快感を与える必要があるのだと、俺はそのように推測した。


 そしてどうやら。

 キリカもまた、同じ結論に至ったようで。


「な、なんで、こんな……!」


 現実を受け入れたからこそ、彼女は憤っているのだろう。

 ……その下手人が、我が妻であるという現実に、少々の心苦しさを感じつつ。


「キリカ」


「わ、わかったわよっ! 持ってくりゃいいんでしょっ! ア、アアア、アレをっ!」


「ありがとう。……念のために言っておくが、箱ごと持参してくれ。一つや二つでは済まない可能性があるからな」


「~~~~っ! こ、このエロ魔人っ! ばかっ! へんたいっ!」


 顔を真っ赤にしながら、涙目となりつつ、罵詈雑言を吐き捨てた後。

 キリカは保健室から、出ていった。


「……さて。起きられるか、アスカ?」


「う、うん……♥」


 刻印による悪影響が少しばかり和らいだからか、今のアスカはまともにコミュニケーションが取れる状態にあった。

 そんな彼女の体を、俺は抱き起こし、


「ぁんっ……♥」


 ベッドの縁に腰掛ける、こちらの膝元へ、アスカを座らせた。

 瞬間、ブルマからはみ出たムッチムチな尻たぶが、下腹部に密着し、


「ふっ……♥ くっ……♥」


 おそらくは無意識的な行動であろう。

 アスカは淫らに腰を振って、ボリューム感溢れる柔らかな尻肉を、こちらのそれへと擦り付けてきた。


「キリカが戻ってくるまでに……ある程度の準備を、済ませておこう」


 言うや否や。

 俺は相手方の体操着、その裾口へと両手を突っ込んで。

 直接、アスカの爆乳を揉みまくった。


「んひぃっ……♥」


 時には荒々しく。

 時には優しげに。

 体操着の内側にて、両掌を躍動させる。


 ぐにゅっ。ぐにゅっ。

 もにゅんっ。もにゅんっ。

 たぷっ。たぷっ。


 布地にくっきりと浮かぶ、両手の形。

 それが変化する度に、アスカが淫らな声を漏らす。


「アル、ヴァー、トぉ……♥ ウ、ウチ、もう……♥」


 我慢の限界。

 それは彼女のブルマを見れば、瞬時に理解出来る。


「……キリカが戻ってくるまでは、そこへ進むつもりはない」


 言いつつ、乳房を揉み捏ねていた手を片方、体操着から引き抜いて。


「代わりに……これで、我慢してもらおう」


 宣言と同時に。

 俺は自らの指で以て、アスカを責めた。


 それも、上と下の同時責め。


 どうやらアスカはこちらの行いを気に入ってくれたようで……

 彼女が少々、言及しにくい状態となった頃。


「も、持ってきたわよ、アル、ヴァー、ト……」


 保健室に帰還したキリカ。

 彼女はこちらの痴態を前にした瞬間、脳がエラーを起こしたようだ。


 仕方がないので、俺はアスカを自らの腰元から退かせて、ベッドへと横たわらせた後。


 キリカへと近付き、その手に握られている箱を、受け取る。

 そうしてから。


「外で待機しつつ、誰かが来ないか、見張っていてくれ」


「う、うん」


「もし訪問者が来たなら……申し訳ないが、足止めを頼む」


「う、うん」


 呆然とした調子で、こくこくと首肯を返すキリカ。

 そんな彼女が退室してから、すぐ。

 俺はベッドにて待つ、アスカのもとへ赴いて、


「これから、君の初めてを奪うことになる。それをもし不快に思うのなら……後で、どのような罰も受けよう」


 こちらの言葉に対し、アスカはなんの応答もしなかった。

 その代わりに。


「んへ……♥ へ……♥」


 完全完璧に準備を整えた状態で、股を開き、こちらを誘惑する。

 そんなアスカに応えるべく――



 ――俺は手に持った箱を、開封するのだった。






 ~~~~あとがき~~~~


 ここまでお読みくださり、まことにありがとうございます!


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 今後の執筆・連載の大きな原動力となりますので、是非!

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