第九六話 レベルアップ


 電子音めいたそれが脳裏に響いてから、すぐ。

 我が目前に、半透明な板状の何かが、顕現した。


 そこには文字が記載されており……

 その内容は、次の通り。



『パラメーター』

 名称:時雨アスカ

 基礎lv:12

 燼器Lv:10

 HP:700

 MP:300

 体力:400

 筋力:500

 耐久:600

 敏捷:500

 特攻:200

 特防:500


『燼器スキル』

☆パッシブ

 怪力無双Lv2:全パラメーターに10%の補正。

☆アクティブ

 轟斬撃Lv1:MPを50消費し、対象に筋力参照の20%ダメージ。



 ……この世界について、俺は「まるでゲームの内部であるかのようだ」と、そのように考えることが、多々あった。


 しかしまさか、ここまであけすけに、ゲームそのものといった要素が存在するとは。


「おおきにな、アルヴァート! アンタとヤったことで、なんかウチ、一つ成長出来た気がするわっ!」


 どうやら、アスカにはこのメッセージウインドウが見えていないらしい。

 やがてそれは消失へと至り……

 次の瞬間。


「ぅあっ……!」


 小さな悲鳴が耳に入る。

 そちらへ目をやると、そこには。


「く、う……!」


 纏装を消失させ、元のブルマ姿に戻ったキリカの姿が、あった。

 悔しげに顔を歪ませる彼女に対して、相手方は苦笑しながら、


「まぁ、仕方ないよ。キリカは後方支援型だから、さ」


「……そんなの、関係、ない」


 慰めの言葉は、しかし、余計に彼女の自尊心を傷付けたのだろう。

 悔恨の情を見せながら、拳を強く握り締めるキリカ。

 そんな様相を目にしながら、アスカは言う。


「ポテンシャルはあると思うんやけどなぁ……」


 実際のところ、アスカの言葉は正しい。


 纏装姫士リベリオンライフは、育成系SRPGの一面を有しており、アスカとキリカ、二人の主人公を育てることで、ハッピーエンドを目指すという内容になっている。


 両者の成長能力は、アスカが早熟であるのに対して、キリカは大器晩成型となっており……


 そして。

 本作は、周回を前提とした作りとなっている。


 そう、即ち、本作は魔法少女陵辱モノであると同時に、ループモノでもあるのだ。


 バッドエンドを積み重ねる度、二人の能力は少しずつ継承されていき……

 ハッピーエンドに到達するには、キリカの潜在能力をいかに解放していくかが、重大な鍵となる。


 ……もっとも、それは原作においての話であって、現状に当てはまるかは定かでないが。

 しかし、原作のシステムがこの世界でもある程度、踏襲されているということは確かだ。


 であれば。


「……日常生活を通して、両者を育成せよ、と。管理者は暗に、そう述べているのか」


 きっとそれが、破壊者の打倒に繋がるのだろう。

 と……そのように確信した、直後。


『緊急連絡』


『都内七番地区にて、ストレンジ・ビーストと、再世教会の幹部と思しき存在を確認』


『時雨アスカ、華宮キリカ、ならびにアルヴァート・ゼスフィリアの三名は、ただちに現場へと向かってください』


 スピーカーから発せられた音声に、周囲の面々がざわつき始めた。


「か、幹部が、出たなら……」


「先輩達の出番、よね……?」


 アスカ達は二年生であり、まだまだ未熟者として扱われている。


 無論、アスカ自身は上級生とタメを晴れるほどの実力者ではあるが……皆の常識からすると、それでも、幹部を相手にするというのは分不相応に感じられるのだろう。


 実際のところ。

 原作でも、似たような展開があった。


 上級生を差し置く形で、幹部が存在する現場へと、出撃の命を受ける二人。

 それはある画策によるもの、だったのだが……


「この世界においては、まるで参考にならない知識、だな」


 ともあれ。


「よっしゃ! 行くで、二人とも!」


 好戦的な笑みを浮かべながら、躊躇うことなく駆け出すアスカ。

 その背中を追いながら、キリカが呟いた。


「どうして、あたしが……?」


 当惑した様子の彼女に並ぶ形で、俺も地面を蹴る。


 そして。

 現場へと到着した、その瞬間。


 暴れ回るストレンジ・ビーストと、その傍に控えた女幹部の姿を目にして……

 俺は、無意識のうちに、呟いていた。


「アレは……」


 悠然と立つ、女幹部。

 その容貌は白銀の仮面によって覆われており、判然とはしない。


 だが、顔は厳重に隠している一方で、エロゲの宿命というやつか、出で立ちは極めて露出度が高く、実に扇情的なものだった。


 特に胸部に至っては、ほとんど裸体も同然の状態となっていて。

 その豊満さと、形の良さは、ある人物を連想させるものだった。


 即ち――



「――――セシリア?」






 ~~~~あとがき~~~~


 ここまでお読みくださり、まことにありがとうございます!


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 今後の執筆・連載の大きな原動力となりますので、是非!

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