第八三話 美少女育成SRPG(陵辱モノ)


 纏装姫士リベリオンライフ。


 クランク・アップ史上最高売り上げを記録した本作は、アレス・ソフトという別メーカーとの共同製作となっていた。


 アレス・ソフトというのは成人向けゲーム業界における巨星の一つであり、少しでもその手の作品に触れた者であれば、誰でも知っているほどのヒットメーカーだ。


 彼等の作品は総じて高いゲーム性を有しており、代表作であるブレイド・クエストに至っては、成人向けの域を遙かに超えた完成度を誇っていた。


 そんなアレス・ソフトがゲーム部分を担当し、クランク・アップが世界観とキャラクター、シナリオを担当。


 そのような組み合わせが凄まじい化学反応を引き起こした結果、業界史に名を刻むほどの傑作が誕生したというわけだ。


 アレス・ソフトによる、極めて完成度の高いSRPG要素。

 クランク・アップによる、陰惨かつ淫靡なシナリオ。

 特に後者はアレス・ソフトとの意見交流を経て、幾度も改稿を繰り返したとのことで、その甲斐あってか、普段のバッドエンド一辺倒な内容とは一線を画していた。


 クランク・アップ特有の暗澹たる雰囲気を強く残しつつも、最終的には希望が絶望を打ち砕くといった熱い展開へ突入し、清々しいほどのハッピーエンドで決着する。


 贔屓目なしに見ても、そのシナリオは業界史上、最高峰の完成度であった。


 そこに加えて、極度に面白みの強いSRPG要素が、シナリオと連動するような形で挿入されており……


 発売初日においては、やめどきが見出せぬまま、丸一日が過ぎていた。


 中毒性抜群のゲーム要素と、引きの強い見事なシナリオの合わせ技。

 人間的にも性的にも魅力的な、二人の女主人公。

 これほどの傑作に、ハマらぬはずもなく……


 ゆえにこそ。

 本作の主人公である、時雨アスカが今、すぐ目前に立っているというこの状況は。

 原作のファンとしては、狂喜乱舞したくなるほどの僥倖であった。


 ……もっとも、そのようなみっともない姿を実際に晒すようなことはしないが。


 俺は努めて冷静に、現状を観察し続けた。


「後輩ちゃん達は下がっとき! こいつらはウチがやる!」


「「「は、はいっ!」」」


 群れなすストレンジ・ビースト。

 その威容を前にしてなお、アスカは悠然と笑い、


「ほな……行くでぇッ!」


 大剣を構え、果敢に踏み込む。

 その運動速度は凄まじく、敵方との間合いが瞬時にゼロへと至り、そして。


「はぁッ!」


 裂帛の気合と共に、一閃。


 叩き斬られた淫獣が絶命し、ドロドロと溶けていく様を尻目に、彼女は二体目、三体目と、瞬く間に敵方を討ち取っていく。


 その勇ましき姿は、胸を打たれるほど格好の良いものだった。

 が……

 アスカの雄姿を目にしていると、少しばかり不純な気持ちにもなる。


 何せ、彼女の出で立ちは極めて扇情的なものだ。


「やぁッ!」


 大剣を振り回す度に、豊かな乳房が淫らな躍動を見せ、


「はッ!」


 踏み込む度に、ミニスカートから覗くむっちりとした尻たぶが、いやらしく揺れ動く。


 ……今の俺は、妻達と肌を交えたことで、賢者タイムになっている、はずなのだが。


 まるで彼女へ呼応するかのように、肉体が強い反応を見せ始めていた。


「相手方は、魔法少女陵辱モノの女主人公。我が身がなんらかの反応を示しても、無理からぬこと、か」


 今は純粋に、アスカの雄姿を称えたいのだが。

 どうにも、ままならないものだな、と……

 そんなふうに思った、矢先の出来事だった。


「っ! ア、アンタはっ……!」


 彼女がストレンジ・ビーストを殲滅した、次の瞬間。

 その目前に、黒ずくめの男が、突如として姿を現した。


「――全く以て、活きの良い娘だな、貴様は」


 まるで合成音のような声が、頭部全体を覆う仮面の向こう側から、放たれた。

 彼こそは本作のラスボスにして……アスカを初めとする、纏装姫士の宿敵。

 その名は。


「ノワール・エンド……!」


 歯噛みする彼女へ、奴はくつくつと喉を鳴らし、


「今回は……私自ら、相手をしてやろう」


 言うや否や。

 ノワール・エンドの周囲に、三体のストレンジ・ビーストが顕現する。


 奴は邪神の復活を目論む、秘密結社の総帥にして……

 ストレンジ・ビーストという概念を創り出した、諸悪の根源である。


 そんな彼が新たに創造した三体の怪物は、触手のバケモノという印象から大きく外れたものではなかったが……


「っ……!」


 アスカでさえも戦慄するほどの、圧力を放っていた。


「さぁ、私に見せておくれ。貴様が悶える姿を」


 瞬間。

 三体の怪物が同時に動いた。


 まるでイソギンチャクのような姿をしたそれらは。無数の触手をアスカへと伸ばし、その肉体を絡め取らんとする。


 その速度は、今し方まで相手取っていた連中とは比にならぬもので。


「くっ……! あかん、このままやと……!」


 彼女の運動能力を以てしても、回避するのが精いっぱい。

 攻めに転ずるといったことが、まったく出来ない状態となっていた。


「せ、先輩っ!」


「あたし達も……!」


「加勢します!」


 後輩等が勇気を振り絞り、戦闘へ参加しようと動く。

 が……残念ながら、それは逆効果となってしまった。


「やめぇ! アンタ等じゃ、こいつらは――」


 後輩達に気を向けた瞬間。

 アスカの足に、触手が絡み付く。


「しまッ……!」


 目を見開いてから、すぐ。

 三体のストレンジ・ビーストが一斉に、触手の先端から粘液を放出。

 それをもろに浴びたことで……


「て、纏装、が……!」


 ゆっくりと、溶けていく。


 纏装姫士が身に纏うそれは、ダメージ状態を表す、一つの指標となっていた。

 大きな損傷を受ける度に衣装が崩れていき……

 裸体に近しいほどの状態となると、彼女等のスペックは著しく低下する。


 今やアスカは、敵方の粘液によって大ダメージを受けており、だからこそ。


「もはや、なんの抵抗も出来まい」


 笑声を零すノワール・エンド。

 それに対して、アスカは悔しげに歯噛みすることしか出来なかった。


「さて、では……後輩共々、可愛がってやろうか」


 宣言すると同時に。

 後輩達が触手によって絡め取られ、粘液を浴びせられてしまう。


「ぅあっ……!」


「くっ……!」


「んぅっ……!」


 戦闘能力を失った、纏装姫士。

 そんな彼女等が行き着く先は、ただ一つ。

 触手達による、陵辱だ。


「ウ、ウチはどうなってもえぇ! だから、仲間は――」


「お断りだ。皆例外なく、責めさせてもらう」


 無情な言葉に、アスカが悔恨の情を浮かべると同時に。


「ひぃっ……!」


「せ、先輩……!」


「や、やだ……! やだぁ……!」


 後輩達が、触手の餌食に――

 と、そんな展開を前にして。

 俺は、当然ながら。


「ファイア・ボール」


 火球で以て、介入する。


 果たして我が魔法は彼女等を絡め取る触手を焼き切り、そして、イソギンチャクめいた醜い体を燃やし尽くした。


「んぁっ」


 落下するアスカ達の肉体を、魔法で以てフォロー。

 そして彼女等が無事に着地したことを確認した後。

 俺は一歩、前へと踏み出て。



「――ここからは、このアルヴァート・ゼスフィリアが相手を務めよう」






 ~~~~あとがき~~~~


 ここまでお読みくださり、まことにありがとうございます!


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 今後の執筆・連載の大きな原動力となりますので、是非!

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