王国の闇を支配する最強最悪の貴族(陵辱系エロゲ主人公)に転生した俺、アブノーマルな展開は嫌いなので普通に穏やかな生活を……送ろうとしてたんだけど、気付いたら『ある意味』原作シナリオと同じ状態になってた
第七九話 事後処理と、これからのこと そして遂に――
第七九話 事後処理と、これからのこと そして遂に――
我が身に係る問題は、完全なる決着を見せた。
さりとて、このままセルエナを出るというのは、あまりにも無責任というものだろう。
今回の一件を経て、都市を治める主要な上位者が全員、死亡している。
そこを捨て置いたなら、セルエナが長期の混乱期に陥るのは必然。
そのようなことになった場合、責任の所在はこちら側にあるため……
俺はセルエナの政治システムが健全に維持されるよう、動くことにした。
これはセシルと共に幻覚催眠の異能を用いれば、さして困難な仕事ではない。
無論、かの異能はみだりに使うべきでないことは理解している。
だが、幻覚催眠を使用せずに問題を解決しようとした場合、かなりの時間とリスクを伴うため、今回は異能の運用に踏み切ることにした。
そうして、事後処理を完結させた日の夜。
俺は滞在地であるエレノアの屋敷にて就寝し……
久方ぶりに、彼、あるいは彼女と対面することとなった。
視界一面に広がる、無数の液晶画面。
そんな空間の只中にて。
管理者が、中性的な美貌をこちらへ向けながら、口を開いた。
「突然の呼び出しで、申し訳ない」
謝罪と共に、小さく頭を下げてくる。
その時点で、どうにも嫌な予感が芽生えたのだが……
とりあえず今は、管理者の言葉に耳を傾けよう。
「君も知っての通り、私は神に等しい存在ではあるのだけど……しかし結局のところ、管理者という設定に縛られた登場人物の一人に過ぎない。ゆえにこそ、私は特定個人への肩入れが許されない状態となっている。無論、例外的な状況はあるのだけどね」
少々、言い訳じみた文言に感じる。
やはり、ここから語る内容はネガティブなものと見て間違いなかろう。
「うん。その通り。君には大変、申し訳ないのだけど……近い将来、大きな問題に巻き込んでしまうことになる。それはある意味、君の責任問題であると同時に……私の責任問題とも言えるだろう」
なるほど。
少しばかり、話が読めてきた。
「やはり……邪神の消滅が、別の問題を生み出すことになったか」
かの存在は、ある作品の世界観を形成するための必須条件となっていた。
それを現段階において消滅させてしまった場合……
件の作品が、成立しなくなってしまう。
管理者の言う、俺の責任問題というのは、そこを指しての発言であろう。
その一方……管理者の責任問題というのは、いかなる内容なのか。
「現段階においては、そこに対する事情説明が出来ない。前述の通り、私は管理者という設定に縛られているからね。話したくても、ストップが掛かってしまうんだ」
即ち、今回も場当たり的な対応が求められるというわけか。
「うん。ただ……次のシナリオは、あまりにも込み入った内容となっていて……君達と私とで、解決することになるだろう」
……シナリオに、管理者が関わってくる?
それこそ、越権行為というものではないのか?
「平時においては、まさしくその通り。ただ前述の通り、次のシナリオはあまりにも込み入った内容だ。そうだからこそ、私はこうして君とのコンタクトを許されているのだろう」
なるほど。
そもそも、管理者は特定個人に対して、任意に接触出来ない。
そうした「設定」がねじ曲がるほどの大問題が、次のシナリオというわけか。
「……理解と覚悟は出来た。が、話はここまで、というふうでもないな」
「そうだね。次のシナリオが君の責任問題というだけなら、事前通知を行ってからすぐ、元の世界に戻すところなんだけど……今回は、私にも一定の責任がある。だからこそ、謝罪の意を込めて、君にいくつかの利益を提供したい」
管理者からの利益提供。
これもまた、平時ではありえないことだろう。
果たして、彼、あるいは彼女によってもたらされた利益とは、
「事前に提供出来るものが、二つ。これはいずれも情報の提供となる」
まず、一つ目は。
「君に直接的な影響を及ぼす内容ではないのだけど……少し前に、ここへアルト・リステリアの魂と、エレノア・サンクトゥムの精神がやって来た」
「……君の設定を思えば、無作為で別の世界に転生させるべき場面、だな」
「そうだね。けれど今回は越権行為が認められたため……彼等を独自世界へと移し、平和な日常を送れるよう、差配した」
即ち。
今後、アルトはエレノアと共に、幸福な人生を歩んでいける、と。
「そのように解釈してもらって構わない」
「そう、か。……そこについては、感謝の意を述べておこう」
アルトの結末については、ずいぶんと後味が悪いものとして受け止めていたのだが……管理者の越権行為によって、心の中に沈んでいた澱が今、綺麗さっぱりと解消された。
「これは個人の感想なのだけど。やはり物語というものは、ハッピーエンドに限る」
「……であれば。クランク・アップ作品の管理者として存在する君は、ずいぶんと心苦しい日常を送っているのだろうな」
「うん。毎時毎分毎秒、私は開発者達を呪っているよ」
肩を竦めてから、管理者は次の情報を提供してきた。
「これは君に対して、直接的な影響を与える内容となる」
「……聞かせてもらおうか」
どのような大事なのかと、少々、身構えていたのだが。
次に語られた内容を耳にしたことで、俺は脱力することになった。
「実に下劣な話ではあるのだけど……君の中にある、性生活に関しての不安材料に対して、答えを提供したい」
「…………」
「君はこう思っているね? 愛する者達と肉体的な交流を楽しみたいが、しかし、昂ぶった情念を思うがままに解放したのなら、今回のような問題が生じるのではないか、と」
「……否定は、しない」
どうにも気恥ずかしい内容だが。
しかし管理者は平時の通り、淡々と結論を口にした。
「そこに関しては、何も問題はないと断言しよう」
「…………」
「今後、君が誰と、どのような関係を持ち、どれほどの欲を解放しようとも、そこが大きなトラブルの引き金になるといったことはない」
「……つまり、彼女等との交流によって、今回のような問題が起きることは」
「二度とない。ここは明確に断言出来る」
その理屈について、管理者は次のように述べた。
「そもそもの話だけど、全体シナリオの構造上、君には高度な性生活が推奨されている。今回の一件はある種のバグのようなものであって、それが二度、三度と繰り返されることはない。端的にいえば……君が欲を解放する瞬間を、世界そのものが望んでいるということだ」
管理者という存在に、ここまで強く、断言されたなら。
それは真実であると、捉えるべきであろう。
「…………」
「さて。伝えたいことは全て完了した。後は、君次第だ」
そのように述べた後。
管理者は、俺を元の世界へと戻し――
数日後。
俺達はリングヴェイド王国へ帰還すべく、リンスレットがチャーターした飛行艇へと乗り込んだ。
その一団の中には、エレノアの姿もある。
今後、彼女はセルエナの住民ではなく、王国の民として生活することになるのだ。
我が妻の、一人として。
愛する者が一人増えたことにより、俺の努力量は増えることになるだろう。
それは将来的な話、だけでなく。
すぐ間近に迫った、あるイベントに関する内容でもある。
……さて。
我々が乗り込んだのは、一般的な飛行艇ではない。
富豪層向けの、超高級機である。
リンスレットはなにゆえ、それを選択したのか。
理由は至極単純。
夜の営みに、極めて便利だからだ。
簡潔に言えば、この高級旅客機は富豪層向けの、空飛ぶラブホテルということになる。
そしてリンスレットが取った部屋は実に広々としており……
多数を相手取ることに、特化したような有様であった。
「アルヴァート。少し、待ってて、ね」
セシリアに促され、一時、部屋から出る。
それから入室の許可が出たため、ドアを開け放つと……
そこには、扇情的な衣装を身に纏う、美少女達の姿があった。
レースクイーンに似たそれを目にして、俺はセシリアの発言を思い返す。
セルエナへ向かう最中、飛行艇のカジノにて、彼女はこう言った。
“ねぇ、アルヴァート。あれ、どう、思う?”
“あれ、着てたら……交尾するとき、もっと興奮、してくれるかな、って”
俺は彼女へ、こう返した。
平時であれば、その通りになるだろう、と。
事実、まだ時刻は真っ昼間だというのに……俺はもう、準備が出来ていた。
そんな有様を彼女等へ晒しながら、脳裏にセシリアの言葉を思い浮かべる。
“じゃあ……悪い人格、やっつけたら……”
“皆で、あれ着て、ご奉仕してあげる、ね……♥”
今まさに、そのときがやって来たのだ。
もはや邪魔立てするような者はおらず、その不安もない。
だからこそ、俺達は。
「リ、リングヴェイドに帰還するまでの、時間」
「ま、丸一日……可愛がって、くださいまし……♥」
恥じらいながらも、己の意を表明するエリーゼとクラリス。
「お食事が運ばれてきたときに見られちゃってもぉ~、問題ないですよねぇ~?」
「うん。この旅客機は、そういう目的のためにあるようなものだから」
「むしろ、見せ付けるべきだと、思う。わたし達が、どれだけ、愛し合ってるのか、を」
艶然と舌なめずりをする、超肉食系の三人。
そして。
「や、やっと、アルくんに……♥」
期待感を込めた目で、こちらを見るエレノア。
その隣で。
「事前に宣言した通り……報酬はたっぷりといただくから、覚悟しなさい♥」
当代最強から、一人の女となったリンスレット。
それから。
「ほ、本当に、よかったのか? 旦那様」
エリー。
彼女は今、あえて存在消滅の異能を解除し、皆の前に姿を現していた。
「確かに、貴女の役割とその性質を思えば、合理的な判断ではありません。しかしながら……ここに至り、合理性を重視するほど、俺は冷徹な人間ではありませんよ、ミス・エリー」
今回の一件において、MVPを選ぶとするなら、彼女ではなかろうか。
それぐらいによく働いてくれたし……互いの想いを、誰よりも強く確認出来た。
ゆえに今回。
彼女も、これから行うことに、参加してもらうことにした。
唯一の問題としては、同一人物であるエリーゼへのフォローだが……
ここは認識阻害により、別の顔として認識しているため、エリーゼがエリーの正体に気付き、パニックとなるようなこともなかろう。
――かくして。
「で、では、まず」
「じゅ、準備の段階から」
「始めちゃいますねぇ~♥」
エリーゼ、クラリス、ルミエール。
三人が先陣を切ったことで……
待ち望んだ営みが、開幕の瞬間を迎えるのだった。
~~~~あとがき~~~~
ここまでお読みくださり、まことにありがとうございます!
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