王国の闇を支配する最強最悪の貴族(陵辱系エロゲ主人公)に転生した俺、アブノーマルな展開は嫌いなので普通に穏やかな生活を……送ろうとしてたんだけど、気付いたら『ある意味』原作シナリオと同じ状態になってた
第二七話 元・陵辱系主人公と、寝取られモノの悪役
第二七話 元・陵辱系主人公と、寝取られモノの悪役
主に成人向けノベルゲームを開発・販売するメーカー、クランク・アップ。
その処女作に当たるのが、最後の楽園 ――Love Destruction―― である。
本作のあらすじを掻い摘まんで説明すると……
ある秘密を抱えた主人公と、その周囲を固める複数のヒロイン達。
平和な学園生活を送る彼等の前に、ある日、一組の少年少女が現れたことで、穏やかな日常は終わりを迎えてしまう。
悪役の少年……クラウスの手によって、次々と寝取られていくヒロイン達。
謎の美少女……セシリアによって、快楽の虜となっていく主人公。
そして。
主人公とセシリアの秘密が、徐々に解き明かされていき……
ノーマル・ルートにおいては、世界が滅亡へと至る。
……とはいえ。
それはあくまでも、原作の設定ありきのシナリオだ。
最後の楽園に登場する主人公のような秘密など、我が身には宿っていない。
よって今回の事件においては、なんらかの特別なシナリオが用意されているとみて間違いなかろう。
それがいったい、いかなる内容なのか。
そのことについて、授業の最中に考察を深めようと……思ってはいるのだが。
「ねぇ……気持ちいいこと……すき?」
席同士をくっつけ、その身を寄せながら、耳元で囁いてくる。
セシリア・ウォルコット。
彼女には認識阻害の力が備わっているため、どのような行為に及ぼうとも、周囲の面々がその異常に気付くことはない。
それゆえに。
「おっきなおっぱい、すき……? すき、だよね……? これでズリズリしたら、気持ちいい、よ……?」
大胆に露出させた豊満な乳房を、こちらの上腕に擦り付けてくる。
……原作で主人公が受けた色仕掛け、そのものだった。
かの主人公はとてつもない受け身型であり、相手が強引に迫ってきたら、それを固辞することが出来ない。
ゆえに記憶が正しければ、この後。
「誰も、見てない、から……おっぱいで、シてあげる、ね……♥」
授業の最中、セシリアは机の下へと潜り込み、主人公のズボンへと手を掛ける。
そうしてジッパーを下ろし、露わとなった中身を、豊かな乳房で――
といった展開になど、させるわけもなく。
「すまないが、そういうのは他の男子にやってくれないか? 俺は授業に集中したいんだ」
「…………ガマン強い、ね。アルヴァートは」
純白の美貌に小さな笑みが宿る。
その姿はまさに、絶世の美少女と評すべきもの。
外見だけでいえば、我が周囲を固めるヒロイン達すらも相手にならないほど、セシリアは愛らしく、美しく、そして……扇情的だ。
ゆえにこそ、色香に惑わぬはずの心が、ほんの僅かとはいえ動揺している。
……そこに加えて。
「ご、ごめん、エリーゼさん。ここ、ちょっとよくわからないんだけど」
「ん? どれどれ……あぁ、これはだな」
クラウスとエリーゼが、会話している。
それがどうにも不愉快だった。
……不合理な感情だと理解してはいる。
俺の目的は中間層としての平穏な日常のはずだ。
であれば、むしろ、クラウスにエリーゼを……いや、彼女を含む、全員を寝取ってもらった方がいいんじゃないか?
……そのはず、なのだが。
やはり、どうにも、気持ちが悪い。
……俺は今、自らの感情に振り回されている。
ゆえに思考がまとまらない。
「くるしそうだね、アルヴァート。……スッキリ、する?」
「君が話しかけずにいてくれると、たいへんスッキリするんだがな」
意識が少しだけセシリアに逸れた。
そのことが幸いしたか、思考能力が僅かに回復。
それがきっかけとなって……
一つ、大きな疑問が浮かび上がってきた。
「ありがとうございます、エリーゼさん。助かりました」
原作をプレイしたのはかなり前のことだが、それでも詳細は覚えている。
クラウス・カスケードの人格は外見通りの粗野なもので、ヒロイン達に対してはかなり強引に迫っていく……はずなのだが。
「礼など不要だ! 今後も遠慮せず、どんどん頼ってくれ!」
「いやぁ、そんな、恐れ多いですよ。なるべく自分で解決出来るよう、努力します」
……クラウスは、こんな性格じゃない。
そのように考えた瞬間、頭の中にクラリスの姿が思い浮かぶ。
彼女も原作においてはとてつもないビッチという設定であったが、こちらの世界では大きな人格改変がなされていた。
クラウスのそれも、彼女と同様の設定改変によるものか?
あるいは――
今、脳裏に浮かんだ、もう一つの可能性によるものか?
いずれにせよ、近いうちに確かめておく必要があるな。
「授業、終わった、ね……」
「あぁ。君のおかげでまったく集中出来なかったよ。どうもありがとう」
「ふふ……いじけるアルヴァート……かわいい……♥」
艶っぽく囁いてから、頬に「ちゅっ♥」とキスをしてくる。
そんなセシリアの色仕掛けを無視しつつ、以降の授業課程を受け続けた結果……
俺は二人に対する理解を深めていった。
まずはクラウスについて、だが。
「ほう! クラウス君、君は剣術のスジがいいな!」
「あ、ありがとうございます、先生!」
彼は性格こそ別人のようだが、スペックは原作通りだった。
その優秀さゆえか、既にクラスの中でも目立つ存在へと登り詰めている。
一方で。
セシリアはと言えば。
「セ、セシリアさん。もしよければ今度――」
「わたしと、交尾したい、の?」
「ファッ!?」
「ごめん、ね。交尾は、アルヴァートとしか、しない。でも……おクチでなら、シてあげる、よ……?」
こちらも原作通りだった。
設定改変前のクラリスすらドン引きするほどの性女。
だが、それはセシリアを構成する、些細な要素の一部に過ぎない。
彼女は、原作におけるラスボスなのだ。
そもそもクラウスがなにゆえヒロイン達を寝取るに至ったか。
そのきっかけから方法に至るまで、全てがセシリアによる主導であった。
彼女の目的は世界を滅ぼすことであり、そのために主人公とヒロイン達を毒牙にかけたのだ。
そうした原作情報を鵜呑みにしたなら、彼女は要注意人物ということになるわけだが……
今回の事件は、原作の状況から懸け離れすぎている。
よって、セシリアがクラウスを主導し、何かを企んでいるのではなく。
逆に、クラウスがセシリアを主導し、謀略を巡らせているという可能性もあるのだ。
ちなみに……
全てが杞憂でしかない、という考えはあえて排除する。
そうした思考はまさに、寝取られモノの主人公そのものであろう。
彼等は皆、後手に回った挙げ句に全てを失うのだ。
俺はそんな…………いや、失うべき、なのか?
…………そのことについては、あえて思考を停止させておこう。
とにかく。
クラウスとセシリアは今後、共に要注意人物としてマークすべきだろう。
そのような結論を出す頃には、昼休憩の時間に突入しており……
昼食を摂った後、俺とルミエール、エリーゼ、セシルの四人は、生徒会室へと向かった。
そうして生徒会メンバー全員が揃った後。
会長であるクラリスが、口を開く。
「――聖アルヴィディア学園との交流戦について、皆様のご意見をお聞かせ願いますわ」
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