第3話旅へ

あれから2日後雨が降り誰にも見られないチャンスと思い旅に出る準備をした


「ペン、もういるもんはないか?」


「団長・・・後ろに隠してるのバレバレ」

「それなに?」


「うぇっ!?はぁ・・・くっそ、カッコつかねぇじゃねぇーか」


「それで?なに?」


「お前専用の武器だ、ほんとは学園に行く前に渡す予定だったんだがな、早まっちまった」


「専用、武器⋯」


「ほら、握ってみろ」


そう言われ武器を受け取った


「わ、わかった⋯ってなんか曲がってるんだけど⋯」


「いいから、抜いてみろよ」


言われるがままに鞘から抜いてみる

薄い赤、夕日のような色をした刀身が見えた


「・・・・これは、刀?」


「よくわかったな、その通りだ」

「お前の戦い方に合ってる剣だ」


戦い方、か…

あいつに負けた構えを真似てただけなんだけどな

いつの間にか癖になっちまってたな


「有難く受け取ります」


「ペン・・・」


「副団長!」


「これは私からです」


副団長はムキムキゴリラの団長よりだいぶ小柄の細マッチョの女性だ

脳筋団長と違って力もあり頭も良いそして何よりとってもかっこかわいいのだ!尊敬できる!

まさにパーフェクト!


「これは・・・・短剣?」


「はい、切れ味もよくて、剣身や鞘も君にピッタリですよ」


それを聞いてすぐに剣を抜く


「綺麗、」


綺麗な水色だった

まるでよく晴れた空のような剣だった


「ありがとうございます!絶対大切にします」


「いや、金がないなら売ってもいいしお前を守るためなら折れてもいい、だから生きろよ」


「・・・・はい!!」


僕を大切に思ってくれていると分かる真っ直ぐな言葉、そして純粋な瞳

この2人なら本当に信頼出来る


「団長、副団長、僕はもうペング・ヨーグではありません」

「・・・・レイです!」


「それなら俺の苗字、ロイナをやるよ」


「いえ、私のバーグの方がいいです」


「あの、ではどちらとも取ってローグにします」


「それでは俺の功績を名乗れねぇーぞ?」


「いいんです、2人が僕を大切に思ってくれている証のこの武器と名前で」


「元気にしろよ?」


「何年かかってもいいから、いつか顔見せてね」


「はい、行ってきます!」







さーて、どこ行こっかなー

冒険者ギルドでレイってのはもうしたからー

苗字つけいこーっと


「すみませーん」


「あ、ペンちゃ((ゴホンッ!! ンッ ンッ…レイさん昨日ぶりですね」


顔見知りギルド職員の女性、ハルカさんの机にギルドカードを置き話しかける


「昨日の今日で申し訳ないんだけど、ギルドカードの名前、苗字つけてくれない?」


「苗字ですか?てかその荷物もう旅に出るんですか?今日は雨ですし日を改めた方が」


「いや、今日出るって決めたんだ」


ハルカさんの言葉を遮りそう告げた


「そうですか、寂しくなりますね」

「ではギルドカードお預かりします」


「よろしく」




「レイさん!出来ましたよ!」


「ありがとう!思ったより早くて助かるよ」


「じゃあ、今までありがとう」


「はい、元気に旅を楽しんで来てくださいね」


「うん、いつかまた会える日を楽しみにしてる」





雨降ってるおかげで人がいないのは助かるなー

体冷えるからだいぶ寒いけど


嘘だろ、この雨の中人が倒れてる


「君!大丈夫かい?意識はある?」


だいぶ痩せ細ってる

それに10歳にも満たないくらいの幼い子供じゃないか、


「・・・・だ、れ、、?」


「良かった意識はあるんだな」

「僕はレイ、君は?」


「わ、からない」


「・・・・家族は」


「もう、いない・・・・」


「そうか、とりあえずそこの店に入ろう」




「おーペン坊久しぶりだな、っておい!その子どうしたんだ!」


入ってすぐ店の店主のゼノフさんに話しかけられた


「ゼノフさん、僕はもうペングではないです」

「レイ・ローグ、レイって呼んでください」


「わかったが、その子どうしたんだ?」


「店の前に転がっていましたけどゼノフさんがした訳ではありませんよね?」


「当たり前だ!だからその顔やめてくれ!笑顔のくせに怖い!!」


「ならいいんです」

「タオルと暖かい飲みもの用意してくれませんか?」


「お易い御用だ」





「君、自分のこと説明できるかい?」


「・・・・はい、」


「まず、あそこにいた理由は?」


「・・・・・・・・」


「嫌ならいい、ココアが冷える前に飲みな」


「ありがとう、ございます、、」


そこから彼はポツリ、ポツリと話し始めた


「俺は、男爵の七男らしいです」

「けど、メイドの子って殴られたりご飯抜かれたり、使用人にも同じ扱い受けて」

「見方だった母さんも、もう、いなくて、、」


「そうか、ゆっくりでいいぞ」


それからは溜め込んでた感情の蓋が外れたように泣きながら話した


「・・・それでも、この形見だけは、守らないとって、思って、」


そう言って澄んだ空のような、綺麗な色をしたブローチをポケットからだした


「そう、思ってたのに、兄弟に、取られかけても何も言えないで、でも、俺、これを、守って・・・・」


「そうか、頑張ったんだな、後悔することはない、お前はすごいよ、よく守り抜いた」


僕はそれ以上はなにも言わずに、

声を殺して泣く彼の頭を

無言でただただ撫でてやった

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