第2話正々堂々と

 稽古という名の苦行を耐え抜いた僕は帰ろうとしたところで団長に捕まり別室に連れていかれた


「おいペン!!やる気はあるのか!」


 団長に急に怒鳴りつけられた


「もちろんありますよ!団長に負けるのはいつも通りではないですか!力量をやる気で片付けるのはやめてください!!」


 バレる訳にはいかないためいつも通りを装い完璧に返した


「おまえ、この一週間で何があった。話せ。」


 一体この団長はどこまで察せれるのか

 まるで心が読めているみたいだ


「は?何を言っているのですか団長、何もありませんよ、美味しいご飯のことでも話したらいいんですか?」


 バレないようにと皮肉をたっぷり含んだ言葉を返した


「んなこと聞いてねぇ!その勝つ気のない剣を振るうようになった理由を聞いているんだ!!」


「何を言っているんですか!僕はずっと勝つ気で剣を振り本気でやっていますよ!」


「これまではな!今日は違う!!なんだその義務作業のような戦いは!勝っても負けてもどうでもいいとすぐに分かるような剣は!いい加減にしろ!関わってきた年月でそんなのはすぐに分かる!!」


「ですから!何も無いと!言っています!」


「はぁ、これを持て」


 そう言って訓練用のなまくら剣を投げつけてきた


「なにするんですか、危ないじゃないですか」


「死ぬ気で、勝つ気でかかってこい、負けたら話せ勝ったら何も言わなくていいお前の好きにしろ」


「意味は分かりませんが勝てば納得して頂けるんですね?分かりました」


「いくぞ!!」


 その声と同時に消えたかと思うような速さで後ろに周り斬りかかってきた


「うっ、、」


 剣を受けたがいつもより重く、跳ね返すことなど出来そうになかったので剣の重心をずらし地面に落とそうとした


「ふんっ!」


 まるで分かってたかのように剣と剣を離しもう一度斬りかかってきた


「ふっ!」


 反射的に後ろに下がり今度は自分から斬りかかった


「やぁ!」


「まだまだぁ!!」


 そう言って剣を受けた団長は一瞬にして跳ね返してきた


「くっそ、、」


 貴族に相応しくない言葉を漏らし、剣を構え直し本気で来る団長に言葉をぶつけた


「おい!クソ団長様よー!!勝ちに行くからな!もう僕知らねぇーからな!」


「おうクソガキ!やっとやる気か!こいや!」


 そう言って僕は体にいつもより多く魔力を流した

さらに周りを軽く見渡してから剣の構え方変えた


「は?お前、なんだその構え」


 団長の言葉など無視し、戦略を考える


「行きます、、」


 考えついた瞬間、自分で思っているよりかなり低めで冷淡な声が出て、次の瞬間には斬りかかっていた


「ぐっ、」


 魔力をさらに込めたため、力は同等程度になった

 そして剣から力を抜いた

 そのせいで押されていた団長はバランスを崩し、それを見逃さずすぐに斬りかかった


「せいっ!」


 勝てる、そう思った瞬間消えていた、いや、消していた感情が一気に湧き上がってきた

 このまま僕が勝つと、団長も僕を嫌いになってしまうんじゃないか、殺そうと思うんじゃないか

 そう考え、少し剣が止まり剣筋がズレた

 それを見逃す団長ではなかった


「バチィンッ!!」


 甲高くとても大きな音が響いた


 団長が僕の頬を思いっきり叩いた音だった


「相手が俺でなければ試合の最後の斬撃になるだろう、なぜだ、なぜ止めた」


「・・・・わかりません」


「お前がわからんなら俺もわからん、とりあえずあの1週間であったことを話せ」


 団長は首の後ろ当たりをかきながらそう言った


「・・・・・・・・・・」


「えぁっ!?すまん!痛かったか!?」


「え?」


「え?ってお前!ほら!お前が泣いてるの初めて見たぞ!やりすぎたか!?ほんとすまねぇ!」


「泣いてる…?」


 そう言って自分の頬を触ると生暖かい水が流れており自分が泣いているのだと自覚した


「なにこれ止まんない、なんで泣いてるの?わかんないよ、」


 それでも涙は止まらない

 むしろ酷くなっていく


「うぅ・・・・ぐすっ・・・・」


「・・・・何があったか話せるか?」


「父と兄が僕を事故に見せ掛けて殺すって・・・・」


「そうか・・・辛かったな・・・・」


「⋯⋯うるさい!一体お前に僕の何がわかるんって言うんだ!!!」


 なんでここまで怒っているのかも分からないけど、自分でも驚くほどに声が出た


「お前だって・・・・お前だって本当は思ってるんだろ!!」


 周囲に噂される悪名

 ついに家族にまで言われる始末・・・・

 あいつらは言っていた


「僕のこと・・『呪われた子』って!!」


 呪われた子・・・・僕は2歳から3歳にかけて元々父と同じ緑色だった髪がどんどん色が消えていきついには白に変わっていた


「思ってねぇーよ、んな事」

「俺はお前の気持ちなんてわからん、剣が好きってことしか知らねぇ、けどお前が・・・・愛想笑いばっかしてるお前が話してくれたことに・・・・なんか、こう・・・・嬉しくなっちまったんだ」

「だから、俺を頼ってくれ偽善だって思われたって構わねぇただ、お前のやりたいことを教えてくれ」


 そしたら手伝うからよっと照れたことを隠すように笑う団長を見て、僕も自然と笑えていた


 おっさんの照れ笑い需要ないですよ、照れ隠しとして言おうとした瞬間、無意識のうちにそんな言葉が口からこぼれ落ちた


「旅がしたい、のんびりと何も考えずに色んな国とか景色とか見てみたい」

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