逃亡貴族、のんびり旅に出る

黒丸

第一章 出会い

第1話自覚ある天才

 ︎︎僕の名前はペング・ヨーグ

 ︎︎正直言って自分は天才なんだと思う

 ︎︎生まれは子爵だ

 つまるところ貴族ということだ

 貴族はその家の教訓によって勉強などがかなり変わってくる

 僕の家は貴族に必要な勉学、そして礼儀作法に続き剣術が採用されている

 さらに運がいいことに祖先は本好きで知識をつけるにも暇を潰すのにも十分すぎる量の本がある

 そして上に姉2人、兄3人という結婚や貢献争いから程遠い丁度いい地位

 冒頭の天才がどーのこーのの話に戻るが自分は要領がとてもいい

 一日に何冊もの本を読むことができ、さらにほぼ全ての内容を暗記できている

 礼儀作法も6歳の頃にはあらかたマスターし、剣術も7歳になる頃には同い年では負け知らず


 これを天才と呼ばずなんと呼ぶのか



 そう思っていた時期が僕もにもあった


 父の良い交流先である僕らの家の1つ上である、伯爵家のミドール家の次男坊

 こいつに剣術でぼっほぼこに叩きのめされた

 僕が初めて味わった負け

 惜しいなんてものじゃなく、圧倒的な強者で、

知識や礼儀作法も僕と並ぶかそれ以上

 その時に思い知った

 上には上がいる、自分はただ自惚れてたんだと

 それから僕は1年かけて必要な勉強を全て終え礼儀作法も完璧にマスターした

 それから日が昇る前に起きて剣を振った

 辺りが真っ暗になるころにメイドに連れられ床に着いた

 何度もう辞めたいと思ったことか

 それでもやらなければという意思がそこにあった

 その思いはその時の悔しさなのか

 はたまた全く別の意思なのか

 別に理由なんかはどうでも良かった

 ただただ剣を振り続けた

 それが正しいかのごとく

 ただ、剣を振り続けた

 まるで絵本の中の勇者様に憧れる子供のような純粋さで


 9になる頃、それを見兼ねた長男が騎士団の訓練場に連れて行ってくれた

 その時知った

 剣は力量だけではいけない、技術がいると

 いや、元々知ってはいた

 しかし知っている技術とは別次元の剣で、隙がなく綺麗で、そして強かった

 それから僕は毎日訓練場に通った

 最初は子供の気まぐれだろうと教えてくれなかったが横で訓練の真似をしていると、1週間経つ頃には少しづつ教えてくれた


 10の頃に技術を全て覚えてやっと騎士団の訓練に入れてもらえることになった

 そこから僕の生活は一変した

 かなりあると自信のあった体力は2時間も持たずに無くなってしまった

 1年間見ていたはずの訓練は思っている以上にしんどかった

 血反吐を吐くような思いだった

 いや、実際に何度か騎士団員との模擬戦で血を吐いたな

 子供に対して!大人気ねぇーよ!コノヤロォ!!

 まあ本気で来てくれとお願いしたのはこっちなんだけど!それでも少しは加減してよ!!


 11になる頃には団長や副団長には適わないが団員達のほとんどに五分五分の勝敗というかなり良い結果を出している

 ちなみに僕に負けた団員は団長からの直々の訓練が追加されていた

 可哀想なので手を合わせておこう

 ご愁傷さまです

 僕は絶対やりたくないです

 それからできるだろうという適当な理由で乗馬を習い始めた

 三月も経つ頃には最初はふらついていたのも嘘のように乗りこなせるようになっていた

 だが馬上剣術、てめぇーはダメだ

 なんなんあの難しさ!

 弓は簡単だ的に当てさえすればいいんだから

 1回でも剣で打ち合えばふらつくし、力量で簡単に落とされる、勝ち目がないじゃないか!

 団長達が僕には無理だとやっと分かってくれたようで魔法剣術に切り替わった

 普通技術がない人達は魔法を発動する際に制御することができず、使うためには専門の学校に行って学ぶ必要がある

 しかし魔法剣術は違う

 幼い頃にやらされた魔力を全身に巡らせる魔力制御を剣にも巡らせるだけでいい

 それで模擬戦をしてみると力で負けていた副団長に勝つことができた

 なんと素晴らしい!

 なぜ今まで教えてくれなかったのか、

 聞くと幼すぎると体が耐えきれなくなりどうなるか分からないそうだ

 なんと恐ろしい、、

 ちなみに団長には呆気なく負けてしまった

 惜しいところまではいくが、相手は流石と言うべきか最後にどこから出てんだと言わんばかりの力でやられてしまう

 聞いたら大人の意地とか言ってくる

 流石に秘密というわけか、解せぬ


 12になると貴族は必ず行かないといけない学園がある、なので学院に入る少し前の時期には学園にむけて勉強の復習をしなければいけない



 それまで両親に許可を取り訓練場で寝泊まりしていた僕はいやだなーぐらいの気持ちで約3年ぶりに実家に向かった



 ほんとに、たまたまだった、、

 帰るのを決めたのは今日だし時間も誰にも言っていないし場所だって寄り道した道から1番近い塀を登った、

 すると、声が聞こえてきた

 父と兄(次男)の声だった

 塀を登ってきたのでバレると怒られると思った僕は息を潜めて隠れていた

 不運だったのか幸運だったのか、

 全く読めない意味深な声で2人が会話する

 事故に見せ掛け僕を殺すと、

 父が言う、学費が高すぎる5人でもう無理だ払っていられない

 兄が言う、強くなりすぎだ反抗などされたら危険すぎる

 、、、そんなくだらない理由で家族を殺すなんて

 その時から、いや負けた時からだろうか、僕は僕自身のことにも関わらず他人事のように感じていた

 それから僕に感情というものが無くなった

 元の僕を自分自身で演じて過ごすようになった

 苦笑い、微笑、普通の笑い、細かなものでも全て再現した

 元々自分を三人称視点で考えていたり癖を探したりしていたから、意外と簡単だった

 そこから全ての時間を勉強の復習に費やした

 まだ記憶に残っているらしく復習は1週間経つ頃には終わった

 団長に稽古つけて貰って学園に行く準備するからもう訓練場には来れません、と言いに行かないと

 何度も練習して違和感のないようにしないとな

 このことを団長達に言って、僕が助かりでもして、団長に嘘の罪を擦り付けられても困るしな

 そう思って訓練場へと、第2の家へと向かった

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