短くも流麗な文体で表現された女子高生の繊細な心の動き。最後の和歌(ネタバレになるため引用は伏せるが、タイトルの紫式部の歌)に込められた名残惜しさや切なさは、現代でも同じなのだとしみじみと思い起こさせる短編。
「めぐり逢て」は『紫式部集』巻頭の歌で、百人一首でも有名な歌だが、藤原定家が『新古今集』に選び入れている歌でもある。物語性のある歌でもあるので一度解説本を片手に詠んでみることをお勧めするが、もし機会があれば定家に「この歌はどんな歌?」と聞いてみるといい。彼はきっと、この短編を読め、と答えるに違いない。