第17話「鬼の修行」
「いいかッ!! おれの道場では俺が規範だ! とりあえず自己紹介しろッ!!」
怒涛の勢いで詰めてくるサトウにかなり恐怖を感じながら、ディグは口を開く。
「こ、小堀です……! えっと……、強くなるためにこの道場に来ました……!」
「能力はッ!!??」
「能力はないです…!」
「そうかッ!! 俺はサトウトシヒコ!! 能力は"ナイフル"!! 地震を起こす! 主に機嫌が悪い時になッ!! あと、"トシ師匠"と呼んでくれッ!!」
ディグは先程の揺れを思い出す。
あの規模を気まぐれでやるとしたら、相当の強さである。
「ほらッ!! お前たちも自己紹介しろッ!!」
トシの圧で気づいていなかったが、ディグとトシの他にももう2人、人がいた。
2人ともディグと同じくらいの年齢のように見える。
その中の1人は、ディグが知る人物だった。
「ハヤカワ……? なんでここに!」
「ホンダさんに連れてこられた。俺も強くなりたい……」
ソウダは戦った時よりかなり表情を取り戻していた。
「なんだ、ホンダと紹介とだけあって2人とも知り合いか! じゃあ"イシザキ"! お前の番だ!」
イシザキと呼ばれ、ビクッとしたガリガリの男がおどおど話し始める。
「あ……、えっとイシザキです……イシザキヤクモです……」
「オドオドしてんじゃねぇッ!!」
「は、はい! よろしくお願いします……!」
ディグはこんなひょろひょろなやつがこの男の指導に耐えられるのか、自分のことより不安になってきた。
「よし! 小堀! お前の練習メニューを決めるぞ! その間ヤクモと走ってこいッ!!」
「は、はい……!」
ヤクモはひょろっとした体を持ち上げ、こちらに眼差しを送ってくる。
そのままヤクモは外に出て、靴を履いた。
「走るって……、この山をですか?」
「そうだよ……、着いてこれるかい?」
ヤクモは自信たっぷりにこちらを見た。
相当速いのだろうか。
少し不安を覚えながら、走り出すヤクモについていった。
ヤクモのペースは遅かった。
(このスピードじゃあ、山道とはいえ1キロ10分はかかるな……)
─────
「おい、お前ら、仕事はどうなんだ? 昼でも電話に出ろ」
ワタナベからの着信に嫌気がさしてきたウエダは電話に出なかった。
留守電を聞きながらウエダはため息をつく。
「俺らは昼はただの探偵だからな……コイツの電話に出る必要は無い。」
「僕の能力でいつでも夜にはできますけどね」
「そういうこと言ってんじゃねぇよ……、とりあえず履歴書の小堀の住所に行ってみるか……、いるとは思えねえが……」
案の定、ディグの履歴書に書いてある住所は空き家だった。
しかし、探偵ウエダは粗を見つける。
「これ……、うすく下になんか書いてないか?」
「え……。あー、本当だ。なんか書いてますね」
フェイクの住所の下に、うっすら文字の凹みが見える。
解読は簡単だった。
「コイツ……最初に本当の住所を間違えて書いてやがる……アホだ……」
鉛筆で薄く塗りつぶすと、凹んだ部分がくっきり浮かんできた。
2人は浮かび上がった住所に向かうことにした。
────
───走り始めて8時間が経過した。
「ゼェゼェ……、ヤクモさんッ! いつまで……、いつまで走るんすか……」
小堀はもう満身創痍であった。
開始時から全くぶれないスピードで走り続けている。
「そ、そうだね……、そろそろメニューは決まった頃かな……」
これだけ走ったというのに全く息も乱れていない。しかしおどおどとはしていた。
あたりは既に暗くなっていた。
「戻ろうか」
山頂付近をぐるぐる回っていたため、戻るのにはさほど時間はかからなかった。
「トシ師匠、も、戻りました。」
「戻ったかッ!! 早かったなッ!!」
「ま、まだ早かったですか……?」
「いやいいッ!! メニューは決まったぞ小堀ィッ!!」
ドタンッ!!と激しい音ともに紙を床に叩きつける。
「お前のメニュー表だッ!!」
「 小堀のメニュー
7時 集合
7時10分 ストレッチ
7時20分 ランニング100km
10時 筋トレ
12時 昼食
12時半 対人訓練
2時 ランニング100km
4時 筋トレ
6時 ストレッチ
以上 」
ディグは死を覚悟した。
─────
男たちもまた、ディグの本当の家に着いていた。
「まあ、ボロいな……」
ディグの家はボロアパートであった。
「うわ、鍵あいてる」
不用心なディグの家に忍び込むことは、造作もなかった。
「きったねー、うわゴキブリだ」
「きたねぇっすね……、あれコレって」
カワハラヅカは早速紙切れを見つけた。
「格闘道場……、住所も書いてありますよ」
「おい本当か? 簡単すぎて怪しくなってきたな……」
「まあウエダさんなら大丈夫ですよ、とりあえず行ってみたらどうです?」
「まあ、それしかないか……」
ライフ・オブ・小堀 バクチ @rappen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ライフ・オブ・小堀の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます