第16話「道場」

ディグは、冷たくなっていくブラザーを背負いながら、走っていた。


「も、もう僕の家ですからね……」


もうブラザーは反応しない。


彼は死を迎えたのだ。


しかしディグは諦めずに、自分の家まで連れていった。


それを死ぬ直前に察したのか、ブラザーの身体は能力によって凍っていた。


腐敗臭などがしないよう、ブラザーの最後の気遣いだろう。


それをディグは家の冷凍庫へ無理やり入れる。


ディグは復讐を誓った。


復讐を果たすためには、今のディグには力不足にも程がある。


自らを強くする方法を模索するべく、ホンダのもとへ行くことにした。



「ホンダさん! 僕はどうすれば強くなれますか?」


ディグは早速ホンダの小屋へ行き、問いかけた。


ホンダの顔は呆れたようだった。


「恨みは恨みを買うなぁ……コモンよ。」


「? 僕は強くなりたいんです」


「そうじゃろうな……。お主には能力は……?」


「ないです。というか能力なんてものも、最新知りました。」


「ほう……。じゃあ……、そうじゃな。機械を使うか」


「機械……いや……機械というより……、むしろなんか、根本的に強くなりたい……」


「そうか……、いいじゃろう。 修行ということじゃな? それならいい相手がいる。」


そういい、ホンダはなにか紙に文字を書いた。


そのままそれをディグのポケットにいれる。


「師範の名前と住所じゃ。無礼はないようにな…」


「わ、わかりました! ありがとうございます!!」


ラボを出て、その紙を見る。


"格闘道場 サトウトシヒコ"と書いてあった。


「怖くないといいなあ……」



紙に書いてあった住所は、山奥だった。


歩いて2時間、既にディグはくたくたであった。


しかし、そろそろ山頂である。


山頂に古びた建物があった。まさに、道場、といった建物だ。


(あれが道場か……? ボロいな……)


道場と思わしき建物には、大きく「佐藤」と掲げられていた。


(あれかよ……)


その時、轟音がひびき、地面が揺れ始めた。


(な、なんだ……!)


くたくたの足で踏ん張りながら道場へなんとか向かおうとすると、急に顔に衝撃が走った。


そのままディグは気を失った。


──3時間後


頬に走った痛みで目を覚ます。


するとハゲ散らかした男が自分をビンタしていた。


「起きるのがおせぇよオオオッ!!」


目が合うや否や男はディグを投げ飛ばす。


「グワッ」


その男こそが、この道場の主である。


"体罰の擬人化"「サトウトシヒコ」


「おせぇ! なにもかもおせぇだろぉ!!」



─────その頃、さいたま支部


「到着しましたぜ……、ワタナベくんよォ……」


見るからに不機嫌なウエダと相方のカワハラヅカがさいたま支部に到着していた。


「電話先では取り乱してしまいましたが……、僕は新しい副店長ですから、立場は上です」


「そうなんか…? へぇ…まあいい、それで、任務は?」


「"小堀"の暗殺です。ですが居場所も分からないので、あなた達の探偵としての力も借りたい……」


「報酬は?」


「月給5ヶ月分です」


「乗ったッ!!」


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