第4話「パートとパーティ」



「お兄さん!! なぜ俺の邪魔をした!」


「俺はもうココのやり方には合わねェと気づいた……。」


「組織を裏切るのかッ!? 店長の実の息子のあなたがッ!!」


「そういうことになるな…」


お兄さんの体には冷気が纏われている。


「俺に叶わねぇってことくらい…わかるだろ、ヒラヌマ!!」


ヒラヌマは冷や汗をかいている。彼の体に走る鳥肌は、お兄さんの能力の冷気のせいか、それとも別か。


ヒラヌマ本人にもわかっていなかった。


「"ザ・フライヤー"!! あいつを"揚げ"ちまえッ!!」


しかしヒラヌマの手から放たれた衣は、氷となってその場に落ちた。


「おめェの能力じゃあ、俺には勝てねぇな……!」


「くっ、クソォ───ッ!! テメェ!! 組織を裏切ったら、どうなるかわかってんだろうなぁ!!」


「なに、しばらくはここに潜伏させてもらうさ……彼と一緒にね」


お兄さんはディグを指さす。


「ぐ……今日のところはこれで勘弁してやるぜ……」


ヒラヌマは自分の体の周りに衣を纏い、その場から退散しようとする。


「それは困るぜ、あんまり俺の能力を使わせるなよッ!! "ウォーク・イン"ッ!!」


ヒラヌマは体ごと凍り、大きな氷塊となった。


「このままじゃ邪魔だから、一旦とかしてやる」


ゴミ捨て場には、溶けた後の気絶したヒラヌマだけが残った。



ゴミ捨て場の戦いの翌日──


「店長……、ゴミ捨て場に気絶したヒラヌマがいました」


ワタナベは不機嫌そうにナカムラに話す。


「ヒラヌマがやられたか……、やはり犯人はここの職員か?」


「ええ、おそらく……。このままでは我々の脅威になりかねません」


「そうだな……"パーティーズ"を要請しろ…」


ナカムラの一言に、ワタナベは目を大きく開け驚く。


「パ、パーティーズをですか!? あいつらが店長の命令に従うとは思えません…!」


「組織全体の危機だ……、あいつらも弁えてる…」


「わ、わかりました……。それはそれとして、あの件についてなんですが……」


「心配するな……"実験体"はもう手配してある……!」


───────

その頃、ディグはお兄さん(ミスター・ブラザー)の家に匿われていた。


「な、なぜ僕を助けたんです? あなたは店長の実の息子でしょう?」


「言っただろ……、もうあいつにはついていけない…。完全に暴走をはじめやがった…!」


「そもそも、僕何も知らないんです……。」


「ほう…? エスエーからの使者なのにか?」


「色々事情があって……」


「そうか…俺が教えてやろう」


「いいか……この裏社会には3つの大企業か主に関係している……」


そう言い、お兄さんはディグを指さす。


「まずお前が所属している"エスエープロダクション"……! そして"007"を裏で牛耳る企業、"MSホールディングス"、さらにもう1つ、"株式会社けいS"だ」


「とりあえず敵はMSホールディングスっていうことですか?」


「まあそうなる……、この3企業は名前にSが入っていることから、"3S"と呼ばれ…、お互いにライバル視している」


「敵は一筋縄ではいかなそうですね…」


「ああ…だがひとつ倒す策があるんだ」


ディグには難しい話で、あまり理解できていない。


「策…とは?」


「俺がさいたま支部の"副店長"となる…、そうしたら副店長権限を使えるようになる、すると…、俺はもっと強くなれるんだ!」


「はあ……」


ディグは半分くらい聞いていなかったが、とりあえずMSホールディングスが"007"の上部にあり、お兄さんが副店長になりたいということだけは理解していた。


「おそらくヒラヌマが倒されたことで店長は動く。お前次のシフトはいつだ?」


「えーと……」


その時、ディグの携帯がプルルルと鳴った。


店長からだった。


「小堀くんさぁー、悪いんだけど、明日入れるかなあ? 明日の13時から17時なんだけど」


「え、昼ですか? まあ、入れますけど」


「本当? ありがとう! じゃあ切るねー」


明日は平日の昼だ。少し違和感を覚えた


「店長はなんだって?」


「明日の昼入れるかって…、承諾しました」


それを聞いてお兄さんの表情が少し神妙になる


「昼か……、普通昼は誰がいるかわかるか…?」


「え? いや、ほとんど入らないんで…、パートさんとかじゃないんですか?」


「ああ…。そうだ……パートだ…。」


「? なにかまずいんですか?」


「さいたま支部のパートは普通と違う……、"ウエダ"という女が率いる傭兵組織……、"パーティーズ"と呼ばれる…!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る