第3話「バトル・イン・ゴミ捨て場」



ワタナベは紙をひろいあげ、凝視する。


そのまま紙を破り捨て、帰路についた。


次の日、ディグがシフトに入る際、アサムラとワタナベが何かを話していた。


「やはり……いますね…"内通者"……!」


「そうか……。あぶりだせワタナベ。この件はヒラヌマのみに伝えろ」


「わかりました店長。必ず犯人を見つけてみせます」


その日のシフト


ヒラヌマ・ワタナベ・ミスターブラザー・小堀


ヒラヌマがディグに話しかける。


「なあ……昨日バイトが終わったあと…なにしてた?」


「え? いやあ……なにも」


「……そうか、ならいいんだ…」


その様子を怪訝な表情でミスターブラザーが見ていた。


ヒラヌマはその後数分黙り、また話しかけてきた。


「ワタナベの後をつけたりしたか……?」


「な、何を言ってるんだよ! そんなことするわけないだろ!」


「……ゴミでも捨てに行こうじゃあないか、小堀くん」


そう言ってヒラヌマはゴミ袋をまとめ、ディグを外に出させた。


「わざわざごみ捨てに2人もいらないんじゃないか?」


「折り入って話そうじゃあないか……この紙について」


そう言ってヒラヌマは、エスエープロダクションから配布された任務の紙を見せつける。


「な、なに!? それは!!」


「やはり貴様かッ!! この裏切り者が!!」


「し、しまった!」


「やはり"内通者"はお前だったか……! 怪しいと昔から思っていたッ!!」


「ま、まてヒラヌマ! 俺はほとんど知らないんだ、お前らを倒せとただ命令されただけで!!」


ヒラヌマはそんなこと気にもとめず、話を続ける。


「なんにせよ敵だな……。今ここで排除しておくべきだ」


「は、排除ってなんだよ! 殺すってことか!? そんなことできるはずないだろ!」


それを聞き、ヒラヌマはにやりと笑う。


「あんた……本当になにもしらないんだな……。俺はそろそろ200人になるか、殺した数は」


ディグは焦る。半分パニック状態だ。


「ば、バカめ! 俺はスマホを持っている! 今既に、警察に連絡してやった!!」


ディグの携帯はプルルルと鳴り、確かに警察へ電話をかけていた。


ヒラヌマはそれを黙って見つめる。


数十秒経ったが、警察は出ない。


「"007"は国家権力も厭わないッ!! と言うより……国家権力と合わさり、初めて秘密結社となる!!」


「な、何を言っているんだ」


「ここはセブンイレブン……。だから"007"ッ!! そしてテメーがかけた番号を言ってみろッ!!」


「"110"……。ハッ!!」


「そうだッ!! 我々を止めるものは存在しねぇ!!」


「警察とも協力関係だと……もう、ダメなのか…!?」


「察しが悪いが、ようやく気づいたか、無能め」


「くそ!! 俺だってやってやる!!」


そう言い放ち、ディグはポケットから隠し持っていたサバイバルナイフを取り出した。


その時、ヒラヌマの手のひらから、肌色のどろどろした物体が放出された。


「!? なんだそれは!!」


ディグは驚くが、ヒラヌマは得意げな顔をしている。


ヒラヌマの手のひらから出たものは、ディグの腕に飛び跳ね、付着し、じりじりと熱を発生しはじめる。


「アツっ!! なんなんだ!?」


「俺の能力だ……。もしかして能力を見るのも初めてなのか?」


「の、能力だと!? ふざけたこといいやがって!」


「俺の能力は"ザ・フライヤー"、テメーは今もう、"揚げ物"なんだよ……」


ヒラヌマはさらに"衣"を放出し、ディグへまとわりつかせる。


「アツっ、アッツアアアアア!!!!」


「これは随分歯ごたえのない揚げ物になりそうだな……」


ディグはなにもすることができなかった。


このまま死んでいくのかという悔しさから、1滴の涙を零した。


しかし、異変が起こった。その涙が凍ったのだ。


そしてその涙が凍るとともに、衣も冷え、剥がれ落ちていく。


「なッ!! この能力は!!」


ディグは背後に心強い気配を感じた。


「能力も持ってねーヤツを一方的に潰すのは、男らしくないんじゃねーのかぁ!?」


金髪の長身の男が店内から突然飛び出してきたのだ。


「お兄さんッ!! なぜ邪魔を!!」

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