第2話「007」


ディグはコンビニへ入る。


裏には店長アサムラが椅子に座しており、明らかに表社会のものではない威圧感を放っている。


「あら、小堀くん? どうしたの?」


見た目に似合わぬ優しい口調で話しかけてくる。


「事情があって、もう一度ここで働かせてくれませんか?」


そう言うと、アサムラは少し驚いた顔をした。


「あなたみたいな子がそういうなんて、よっぽどのことがあるようね、いいよ!ここで働きな!」


アサムラは快諾した。明らかに怪しいような台詞だが、ディグが疑うことは無い。


だがディグは"任務"を認識していた。


エスエープロダクションから受け取った紙に書いてある情報をトイレで隠し読みしながら、任務を進める。


『007 幹部リスト』より

「アサムラ」 通称:TENCHO

"007"さいたま支部のボス。今までに殺した人数は1000人を優に超えると言われている。今回の任務の最終目標は、アサムラの暗殺である。


そのため、ディグは怪しまれずに職場へ溶け込み、絶対にバレないよう暗殺する必要があるのだ。


「じゃあ小堀くん、アイスのフェイスアップしてきてよ」


そんなもの、ディグがわかるはずがない。


「あー、忘れちゃったんですけど、マニュアルとかって…」


「? 何言ってるのよ、小堀くんが作ったやつがあるじゃない!」


ナカムラはそう言ってクリアファイルを取り出す。


「俺が……作った……。そうでしたね……」



アイスの作業をしていると、突然声をかけられた。


「小堀くん! これぐちゃぐちゃすぎますよ」


声をかけてきたのは、確かー"ヒラヌマ"だ。


"ヒラヌマ"

"007"さいたま支部の戦闘隊長。

完全に要注意人物だ。


しかしもう1人、データにない男がいた。


男の名前は「ワタナベ」。どんな人物が全く分からない。


彼の情報を収集すべく、ディグはコミュニケーションを測った。


「あれ? 君は……誰だっけ」


「忘れちゃいましたか? 前入ってたワタナベですよ。最近たくさん入れてもらってるんです」


「ああ……そうだったっけ。よろしく……」


話しやすそうではあるが、彼の言葉の節々にはどこか、企みを感じた。


ディグは数日かけて、ワタナベの情報を得ることを目標とした。


数日後


その日のシフトは、アサムラの息子とワタナベとディグだった。


アサムラの息子………データによると…


"ナカムラ ヒヅキ" 通称:ミスター・ブラザー

幹部らからは"お兄さん"とも呼ばれる。

高い戦闘能力を誇るという噂。


心無しかミスターブラザーとワタナベの仲は悪いように感じた。


だがディグはこの日、ある決意をしていた。


ワタナベの住まいを特定することだ。


時刻は既に22時を周り、ワタナベは帰宅。そこへ着いていく。


だがワタナベも一筋縄ではいかなかった。なにか気配を感じたのか、自転車を止め、後ろを振り返る。


咄嗟に身を隠すディグ。ワタナベはそのまま来た道を引き返し始めた。


ディグは尾行を中止し、しっぽを巻いて逃げた。


だがディグは大きな落し物に気づかなかった。


ワタナベは来た道になにか紙が落ちていることに気がついた。


その紙には『"007" さいたま支部 滅殺計画』と書かれていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る