第5話「シャル・ウィ・ダンス…?」

翌日ー

その日のシフト

ウエダ・ミスターブラザー・小堀


「いいか…? 危機を感じたらすぐ知らせろ、俺でもパーティーズの能力はわからねぇ…」


「そうなんですか…? そもそもパーティーズとは一体…」


「パーティーズは007直属の組織じゃねえ、外部の組織なんだ。あくまでパートだからな。だから能力とかはなにも分かんねえ」


そう聞き、ディグに危機感がつのる。お兄さんはこの事を何回も言っていたが、ディグは全然聞いていなかった。


「あら、小堀くん、戻ってきたのね? 今日も頑張るわよ」


ウエダが話しかけてくる。パーティーズも表の顔はただのパートだ。


「ああ…はい、事情があって…、今日はよろしくお願いします。」


ウエダの眼光は細く鋭かった。ディグの正体を覗き込もうとしているようだった。


「お兄さん、パーティーズって言っても、あのおばさんだけですか?」


「ああ…、そこが謎だ。なぜいつも複数形で呼ばれるのかが分からねえ」


「様子を見ますか……。」


その時、ディグは後ろから何者かに押される。


振り返ると、緑の店員用の服を来た女が歩いていた。


後ろ姿しか見えなかったが、完全にウエダの後ろ姿ではなかった。


驚いて後を追おうとしたが、既に女の姿はなかった。そして女が向かった先には、ウエダがいた。


「ど、どういうことだ…?」


明らかに何かが起きていた。その時、ディグはお兄さんの言葉を思い出した。


「もし相手がしかけてこなかったら、こっちから行くのも手だ。お前は能力が無いんだろう、これをやる。」


ポケットにはお兄さんから貰った専用ナイフが入っている。


ディグは心に決めた。今ここでウエダを殺ると。


その頃、ミスターブラザーはと言うと


彼は彼で、ウエダを追いかけていた…。


(小堀には任せらんねえと思ってウエダを監視してたが…、なぜコンビニの外へ出た…?)


現在、ウエダは店内にいる。小堀の目の前に。だが、ブラザーも確実に、ウエダを追ってきていた。


彼は大きな違和感を抱きながら、ウエダの足を凍らせる。


「……やはり付いてきたか、店長の息子さん」


「なぜコンビニを出た…。今は勤務中だぞ…」


「あなたと小堀、2人とも裏切り者のようね、始末してあげる」


「今小堀はコンビニに1人なんだろ…、すぐに違和感に気づき、ここに協力しに来るぞ!」


「フフフ…気づいてないのはあんたじゃない…」


「なんだと!?」


同じ時間、確かにウエダはコンビニ内にも存在していた。


そのウエダを今、ディグが殺そうとしているのだから。


お兄さんの前にいるウエダの姿が溶ける。


「な、なんだッ!?」


そうして出てきたのはまた別の姿だった。


「私はイシカワよ…、これが私たち"パーティーズ"の能力。私たちは複数でひとつの能力"シャル・ウィー・ダンス"を所持しているッ!!」


「な……なんだと…………?」


──その頃店内は──


ディグは今まさに、ウエダを殺そうとしていた。


ナイフを振りかざした瞬間、ウエダが振り返る。


「あら…どうしたの? 小堀くん…」


ウエダは全てを見透かしていたかのようににやりと笑う。


「後ろをご覧なさい?」


そう言われディグは素直に後ろを振り返る。

後ろにはまた別の女がいた。


「私はミシマ……、あなたを監視させてもらっていたの」


「な、なにッ!! あんたいつから!!」


再びウエダの方を見ると、さらに人数が増えていた。


「私の能力"シャル・ウィー・ダンス"は他人を収納し、私の姿に変えられる…! 」


「な、なんだと…、く、お兄さんッ!!」


「無駄よ…、いまイシカワがあいつをおびき寄せてるわ。あいつはいま2kmほど離れたところにいる…」


「な、なぜそんな詳しい情報が…?」


「私に1度収納された人間の心は全て共有される。イシカワの脳から情報を受け取ったの…」


「そ、そんな…」


ミスターブラザーもいない状況で、多数対一人。ディグは絶望した。


その頃、2キロ先でミスターブラザーも敵と対峙していた。


「タイマンじゃあ俺には叶わねぇだろ…、なにが目的だ…!」


「私はあなたをおびき寄せれればいいの…、丁度今小堀くんは殺される寸前…。ここからどれだけ早くても5分はかかる。それだけ時間があれば十分だわ…」


「……!! そっちが目的が、クソッ!! お前だけでも殺してやるぜッ!!」


「"収納"ッ!!!」


掛け声と共に、イシカワの姿が消える。


「クソが! はめられたッ!!!」

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