第33話 王女がくれたスクロール
「織田くん久しぶりね。あの夜は兄様に邪魔されてお話しできなくて残念だったわ。」
国王らの視察の数日後、社交辞令だと思っていたが、イリアス王女が俺を訪ねて来てくれた。
「兄様に見つかるとうるさいのですぐに帰るわね。
今日来た理由はこれよ。」
と言っても、王女は丸めた紙の筒を渡してきた。
「これはなんですか?」
「これは魔法のスクロールよ。
私が大学で研究しているもので、あなた達を召喚した魔法陣をベースに開発しているわ。
まだ試作段階だから効果は期待できないけど、もしもの時に使って見て欲しいの」
「なぜ俺に?
一つは試作段階で作ったはいいけど、大きな問題があるの。
この魔法陣を起動させる必要魔力量が多すぎて誰にも起動できないの。
聖女様なら可能かもしれないけど、貴方たちを召喚した時みたいに倒れちゃうわね。」
「もう一つの理由とは?」
と尋ねると、王女は悪巧みをするかのように笑い。
「その魔法陣を起動させて、貴方がすごい魔法士だと証明しなさい!
言ったでしょ?貴方は宮廷魔導士になれるわ。」
王女の目は真剣だった。
王女はあわてて言った
「言い忘れてたわ、そもそもこの魔法陣がなんの魔法か説明してなかったわね。
聞いて驚きなさい!これは瞬間移動の魔法陣よ。
とは言っても貴方達がいるもとの世界に戻れる訳ではないわ。
貴方がこの世界で貴方が思い浮かべた場所に瞬間移動する程度ね。」
王女は軽くいうが、そんな価値のものじゃない。
「え?それだけでもすごいじゃないですか。
これがあらば戦争の勝敗だって変わっちゃいますよ。」
と俺がいうと、王女は寂しいそうに言った。
「そうね。
でも私が発明したものを戦争の道具にはしたくないわね。
でも、今の段階では心配する必要はないわ。
こんなもの使えるの貴方だけだもの」
と言い、さらに
「ほんとはね。これは貴方の世界に行くための試作品なの。
お父様が約束したでしょ。
全てが終わったらもとの世界に帰るための研究をするって。
いつか私があなた達を元の世界に返してあげる。」
そう言い残すとイリアス王女は帰って行った。
俺の得意分野は魔方陣を儀式魔法。
当然魔法陣にはちょっとうるさいが、魔法陣の構成を見て一目でわかった。
これは試作品ではなく、間違いなく機能すると。
シスコン王子が絶賛していたがイリアス王女は本当の天才に違いない。
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