第26話 マリエルの秘密
私はマリエル
王宮では宮廷魔術師と呼ばれ、教会では聖女と呼ばれている。
過去の戦役で治癒魔法により負傷した兵を助けまくったことから、神の奇跡と噂され、ついには教会から聖女などと勝手に認定されてしまった。
だいたい自然信仰を信じるエルフである私に教会の聖女っておかしいでしょ?
もっとも私には信仰なんてないのだけれど、いろいろと都合がいいので聖女に認定は甘んじて受けた。
元々魔法に長けていたことから、国王の依頼で勇者一行の魔法の指導を行うことなった。
並行世界があり、そこに私たちのように生活する人々がいるということは知識として聞いていた。
より詳しくは、昔知り合った『不死族』という種族の人から聞いたことがある。
あの人の話では、『不死族』はこの世界と並行世界を転生を繰り返して行き来するらしい。
とても信じられない話だけど、あの人の語る話は鮮明な描写で作り話とは思えなかった。
並行世界には魔法が存在せず、私たちと大差ない文明が生きていると話していた。
魔法のない世界で生まれ育った子供達に魔法を教えると、1日にして魔法の発動を成功させた。
この子達は全員魔法の天才だった。
一人を除いて
理由はわからないけど、織田くんは、最初魔法を使えないふりをしていた。
私の魔眼で彼がフリをしていることが分かったけど、その事に気づいたのか目の前で杖の集中をやってみせ、そして杖を壊した。
彼が最初に杖を折った時に、品質不良ではないかと杖を疑ったが、持ち帰って調べても異常は無かった。
それから織田くんは毎授業、初歩の基礎練習を続けた
「織田くん、調子はどう?」
「はい先生、杖を3秒光らせる事に成功しました。」
嬉しそうに言った彼の足下には何本もの折れた杖が落ちていた。
私の魔眼で見ると空気を入れすぎた風船が割れるように杖が壊れているということが分かった。
このような魔力量は通常は考えられないことだけど。
私は、集中するのではなく力を抜いて『手加減して』魔力を注ぐイメージを持つように指導した。
今では3秒杖を保たせる事に成功している。
今ははっきり言ってクラス一の落ちこぼれ魔法士だけど、何かで化ける可能性はあるわね。
私には彼らに言っていない秘密があった。
でも、その秘密を打ち明けることは、まだユーリ副隊長に止められていた。
その判断もわかるし仕方がないことだけど、
でも彼らの信頼を裏切っているようで私は心が痛んだ。
そして、それを打ち明けることはまだ怖い。
早く打ち明けられる日が来ることを私は望んでいる。
そして、許してもらうことを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます