第22話 休日③ 勇者魔王討伐

広場に設けられた仮設の劇場についた後、すぐに午後の部の開演となった。


劇場内は天幕で薄暗くなかなか手の凝ったセットだった。

俺と楠田先生は、ポップコーン(風)のお菓子と炭酸抜きコーラ(風)を手に後方で開いていた席に座った。


今日の演目は勇者による魔王討伐のシーンとのことで、どうやら史実を忠実に再現したドキュメント仕立てという売り込みだった。


「魔王さままもなく勇者が到着します。

私が皆殺しにしてやります。イッヒッヒ」

と悪の女幹部が悪そうに行った。


劇場の前の方には、斉藤胡蝶と式森リエが観劇していた。


「やーね。私あんな下品じゃないわよ。」

と呟くと


「どうしたの胡蝶っち、さっきから不機嫌ね。」


「魔王様はあんなジジイじゃないわ」


と不機嫌そうにぶつぶつ言っていた。



魔王「お前が勇者か?よくぞ四天王3人を退けここまで来たと褒めておこう。3人の恨みはここで晴らせてもらうぞ。」


「死んでないけどな」と俺が呟く。


女幹部「魔王さま私が血祭りにあげて見せます。見ててください。イッヒッヒ」


「だから、下品だって」と胡蝶が呟く。


勇者「魔族は最後の1体まで俺が倒す!王国国民の恨み俺が晴らして見せよう!」


ズバババ


女幹部「アレー」


勇者「四天王最後の一人を討ち取ったぞ!あとはお前だけだ魔王。怒りの刃を受けてみろ『ファイアー』」


セット中央から火が吹き上がった。


「今怒りの刃って行ったよね?なぜ火?」と先生がぶつぶつ言っている。


魔王「うおー...やーかーれーるー」


女幹部「魔王さまお供します。」

切られた胸を抑えながら火(の後)に飛び込む。


「よくやったー」と胡蝶


「えぇ何?」とエリ


勇者「魔王にトドメを!」


と火(の後)に飛び込む。

舞台エレベーターがセリ下がり魔王、女幹部、勇者退場。


「...なんで?」俺:胡蝶



俺と先生は劇場を出た。

「先生、なかなかシュールな終わりでしたね。」


「勇者は、最後なんで炎に飛び込んだんだと思う?」


「パンフレットの解説を読みますと、無事帰還した勇者のお供の話で、燃え盛る魔王のとこに飛び込み亡くなったとのことで、歴史の謎なんですって。」


ほんとかよ。

あの時、勇者が転生の炎に飛び込む理由がないだろ?

俺がそう思っていると、先生は微笑みながら言った。


「私はなんとなく勇者の気持ちはわかるな。

誰も友達もいない異世界に転生して、戦って、その中でライバルの魔王がいなくなっちゃって。きっと勇者は寂しかったのよ。」


「案外そんな感じかもしれませんね。」


本当か物語のフィクションかは分からないが、ちょっと調べる必要があるかもな。



私は覚えている。

スクルドと名乗っていた私が燃え盛る魔王さまの再生の炎に飛び込んだ時のことを。


私が消滅する前に、魔王さまの気配が消えた。

その後、私は炎の中で勇者が炎に飛び込んでくるのが見えた。

一瞬の出来事だけど、あの時の勇者の目、

あれは恋する女の目だわ!

あのひとの獲物を狙う女狐って感じたのをはっきり覚えているから。

勇者など眼中になかったけどその時初めて感じたわ。

勇者は危険だ!

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