第19話 訓練の日々と成長の兆し

ダン兵長はによる基礎訓練と格闘訓練

ユーリ副団長による剣術や槍術

マリエル先生による魔法


1日体を極限までいじめて、次の日には座学と魔法で頭をいじめる。

体力と精神の回復を効率的に繰り返すというルーティーンが決まってきた。


ユーリ副団長は他の団員を連れてきて、マンツーマンで指導を行った。


俺の相手は、ジーク兵長。騎士団で副団長に次ぐ実力者らしい。


ダン兵長の取り計らいでジーク兵長をつけてくれたのだが、


「織田!踏み込みが甘い!」「脇が隙だらけだ!」「力任せに振り回すな!そんな振りかぶるな!」


とジーク兵長の檄が飛ぶ。

そんな事言ったって、俺は剣士じゃないし。

魔王軍では最高指揮官だから戦場出ないし。


(ジーク兵長)

ダンから見どころがあるって言われたがなんだこいつは?

勇者の可能性があるって?

勇者って感じじゃねぇ。バーサーカーの間違いだろ?

荒削りで基本のきの字もないが、一撃一撃が重いってもんじゃない。

重装鎧を着せてハルバートを振り回させれば戦場では無敵だろ。


はっ、はっ、はっ...

「ジーク兵長、ありがとうございました!」


「こちらこそいい訓練になったよ。君は大した体力だなぁ。」



俺がこの地を離れていた100年ほどでずいぶん魔法研究も進化していた。

マリエル先生の魔法の授業は興味深いものであった。

とはいえ、実技がうまくできる訳では無かったが...


パキッ


「織田くんは今日も見学しててねー」



訓練はめちゃくちゃハードであったが、ユーリ副団長と楠田先生の精神的サポートと、豪勢な食事で脱落者もなく毎日が過ぎていった。


また、マリエル先生の魔法の授業を受けてから一部の生徒がメキメキと力を付けて行った。


「まいった!!」


「やったー!ブイ!」


式森リエさんが斉田を負かした瞬間だった。


マリエル先生直伝の魔法による身体操作により、体力的に劣る女子達も運動部男子を超える動きをするようになってきた。


実戦では、継続戦闘能力、精神力、判断力などいろいろな要素が必要であり必ずしも当てたら勝ちの一本勝負の序列どおりとはいかないが、それでも最初にへとへととなっていた頃に比べてメキメキと力をつけていた。


一本勝負の序列でいうと、やはり剣道女子の斉藤さん楠田先生が飛び抜けで強く、剣道ルールなら騎士たちでも敵わなかった。

楠田先生は魔法が全然ダメみたいで、身体操作なしでなんであそこまで動けるのだろう。

次に式森さんら身体操作に長けた数人、俺なんて半分ちょい上くらいじゃないか


まあ目立たなくなって良かったけどなんか悲しい。



そんなこんなで訓練も折り返しを過ぎたころ。

夕食時にユーリ副団長からこんな話があった。


「これまで一人の脱落者もなくよく頑張ってくれました。

皆さんの頑張りと日頃の労をねぎらって明日は休みとします。

皆さんには報酬をお渡ししますので、街に出て買い物でも楽しんでください」


ユーリ副団長が楽しげにいうと


「ええ〜マジ」


「買い物できるの?やった〜」


「ちょっと信じられないんですけどーー」


と生徒たちは一斉にいろめきだった。


ユーリ副隊長は、この日のために用意した街の情報を集めたチラシをみんなに配ると、みんなそれぞれ仲のいい友達グループで集まりどこに行くかなどの計画をたて始め、普通の高校生らしくはしゃいでいた。


さて、よく考えると俺だけ3組で仲のいい友達居ないボッチだからなぁ。

と一人考えていると、

酔っ払ったダン兵長とジーク兵長がニヤニヤしながら俺のところに近づいてきた。


「おー、織田よー。お前友達もいないぼっちか?」


ダン兵長がニヤニヤしながらからかってくると、ジーク兵長が


「俺たちも明日は休みだ。ぼっちでかわいそうな弟子を遊ぶに連れて行ってやる!

お前はガタイが良いから俺たちと行っても目立たねぇ。どうだ?」


とニアニアしながら言ってきた。


「どこへ行くんですか?酒とかは楠田先生に怒られちゃうんで俺ダメですよ。」


「酒も良いが明日は酒じゃねえ」


といいジーク兵長は、耳に近づきコソコソと


「女だ。いい娼館を知ってるんだぜ。

俺に任せとけば良い女を抱かせてやる。」


と言ってきた。

俺は焦って


「いやいやまずいっすよ!」


というと、ジーク兵長は更に

「お前チェリーか?

お前に女がいないってのは調べがついてんだ!

この国じゃ十五で成人だからナーンも問題ない。」


と言ってきた。


いやいや童貞っていえば童貞だが、違うっていえば違う。

興味ないか?って言われれば興味がない訳、ではない。

ここから俺の冒険が始まるのかぁ??

っと一人盛り上がっていると


楠田先生が割って入ってきた。

なんかちょっと酔っ払ってるようで目が座っている。


「聞こえましたよ。

い・い・お・と・な・が!

未成年に何をそそのかしてるんですか?」


と切れていた。

ダン兵長とジーク兵長は、その大きな体を縮こませながら、ボソボソと


「だってよぉ。ボッチでかわいそうにしてたからよぉ。」

「ここ世界じゃ15をすぎりゃ娼館にも行くしー

実際俺も通ってたしー」


「何をボソボソと言っているんですか?

この国がどうか知りませんが、織田くんはうちの生徒です。

ボッチなんかじゃありません!

一緒にお買い物に行くんです!」


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