第13話 それから50年後
『インフェルノ ノヴァ』
俺の使った戦略級魔法であり、擬似太陽を作り出す魔法だ。
この魔法は魔法陣を使用した儀式魔法に分類され魔法陣の作成から魔力の注入と準備に3日を要する。
威力は絶大であるが、なにぶん使い勝手が悪く、脅し意外に使いようがない。
俺は、ラーズの計画に乗りこの魔法を使用した訳だが、ラーズの計画通り、ゴブリン達の殲滅と、無血で王国の侵攻を食い止めた。
さらに旧王国の王都まで手に入った訳だが、これは意図したものでは無かった。
「ラーズ、こんな人族との最前線に住まわせられないだろ?
正直、ここまでは求めて無かったのだが。」
「魔王さま、今までは魔族領からの王都までの間にゴブリン達が住まう魔の森が広がり緩衝地帯となっていましたが、それが無くなった訳です。
今後、人族の侵攻を食い止める最前線としてここを拠点としました。
ちょっと大きな砦だと思ってください。」
「そうはいうがな。
まあお前が必要だと思うのだから必要なのだろうけど、まさか追放された王国への復讐とかじゃないだろうな?」
(ラーズ) ギクッ(汗)
「そういえば、ラーズの親父さんの元で国の再建が進められているってレギンから報告を受けているけど、帰りたければ帰っていいぞ。
お前が王女になるかもしれないだろ。」
「いえ、私には兄がおりますので父のことは心配ありません。
今後もお慕いする魔王さまの元で励みたいと考えており、帰りたいという気持ちもありません。」
「お前がそう思うなら俺としてもありがたいと思う。ラーズのことは歓迎するぞ。
何か褒美でもとらせたいが何か欲しいものはあるか?」
ラーズは恥ずかしそうに顔を赤くするとモジモジしながら俺におねだりしてきた。
「それでは遠慮なくお願いします。
私を魔王さまの眷族にしてください!」
「えぇ!!意味わかって言ってるの?人族の世界に戻れなくなるぞ!」
予期せぬラーズのおねだりに流石の俺も慌てていた。
不死族にとって眷族とは、魂を共有するものという意味をもつ。
俺が死ねば眷族も死ぬ。
また俺が生まれ変われば、また眷族も生まれ変わるという訳だ。
まあ、俺から眷族の縁を切ることは出来るが、眷族にしてくださいというのは、貴方の奴隷にしてくださいという非常識なお願いだった。
聡明なラーズが分からない訳でもないが...
「ラーズの気持ちは分かった。
即答は出来ないがよく考えておく。
俺にも覚悟が必要だからもう少し時間をくれ。」
ラーズは照れながら、
「分かりました。楽しみに待ってますね。」
と答えた。
それから50年後
ラーズの親父さんからしてひ孫が新王となった世代のこと
混沌そした荒れた世の中で教会がその勢力を取り戻していた。
賢者のもとで勇者召喚の秘術を編み出すことにこぎつけた。
これは時代の節目節目に現れる強大な力を持った勇者を、強制的に呼び出す魔法で、旧王都を支配する俺に対抗するため、呼び出した勇者をぶつけるという計画であった。
そして実際に勇者が呼び出されてしまった。
俺の『インフェルノ ノヴァ』を持ってすれば勇者もろとも王国を消し飛ばすことは出来る。
...が、自分の命が他人の命より軽い不死族の俺としては、大量虐殺するよりは、次の人生を楽しんだ方が良いと考えてしまうのだ。
それよりも俺の為に召喚された勇者を不憫に思い、負い目を感じていた。
「魔王さま、このままですと勇者一行が3日ほどでこの王城に到着します。
いかが対処いたしましょうか?」
「わかったありがとうレギン。ラーズの意見は?」
「状況を分析するに、私ども四天王...いえ私以外の3人の力を持ってすれば勇者と互角に渡りあえます。
が、勇者を殺すことは魔王さまの本意ではありませんよね?」
「さすが俺の眷族だな。」
もう長い付き合いになる四天王は俺以上に俺のことを分かってくれていた。
それだけに俺より先に先立たれるのは辛いなぁ。
「詳しい説明はできないが俺に考えがある。
そこでお前達に最後の命令をするが、この命令は絶対服従だ。もし守らなければ俺の計画は破綻するだろう。
俺は4人を見つめてこう指示を出した。
「誰も殺すな。
自分の命を最優先にしろ。
その時が来たら撤退しろ。
あとは俺を信じて任せろ。」
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