第11話 最後通牒
オーエン騎士団長にとってイリアスは、もと主人の娘であり、今でもイリアスの両親に忠誠を誓っていた。
イリアスに最後に会ったのは今から10年以上前のことであった。
「イリアス様、すっかりお美しくなられましたな。
貴方様が追放されたこと聞き心配しておりましたが、まさか魔王軍におられていたとは。」
「私のことで父を巻き込んでしまいました。
父に尽くしてくれていた貴方には申し訳なく思っています。」
「イリアス様、何があったのですか?
教会の者からは異端審問にかけられ追放されたと聞いております。お父上にも聞きましたが何もお話にはなられませんでした。」
「父は貴方を巻き込みたく無かったのでしょう。
父は私の話を信じたが故に辺境の地へ飛ばされましたから貴方を自分と同じ目に合わせたくは無かったのでしょう。」
「貴方の父上は常に正しかった。
分かりました。私に貴方の話をお聞かせください。」
イリアスは、王立学校での研究した結果を騎士団長に説明した。
それは教会の教えと相入れないものであった。
「つまり、教会の教えにより、同胞であった魔族を異端としたということですか?」
「そうです。
そして魔王さま配下の陣営と、バンパイアロード率いる吸血鬼族、ゴブリン、オークなどは別々の陣営となります。」
「それではなぜ教会は魔族を異端としたのですか?」
「人類の敵を作ることが信仰を広める上で都合が良かったのでしょう。
もしくは神がいるのなら神の意思かもしれません。」
「なんというかことだ...到底信じられない話ですが、そう考えると辻褄があう。」
「王国の中で教会の力は強大です。貴方がこの話を広めようとすれば私の様に異端審問にかけられるでしょう。」
オーエンは考えた。
(イリアス様の話が真実であるのであれば、この先の魔族領へ侵攻する大義はなく、無駄な命が失われるだろう。でも今の私には戦争を回避する手がない。)
「私は、この仮説を追放され、どうしても知りたかったので魔王さまの元にむかいました。
そしてその仮説が真実であったことを確認しました。
それ以上に、私にも考えが及ばなかったことを知ったのです。」
イリアスは、自分を信じてくれたオーエンを信頼し話し始めた。
「魔王さまは慈愛に満ちたお優しい方です。
魔王さまは人族との戦争は望んでおりません。
それどころか、交戦的な魔族が人族に手を出さないように監視して人族を守っているのです。
しかし、それ以上に魔王さまが強大な力を持つ恐ろしい存在と知りました。」
イリアスは当初の計画に従い、王国騎士団長であるオーエンに最後通牒を告げた。
「今日から7日後の明朝、緩衝地帯であるこの砦から王都との魔の森を殲滅し、魔王さまの力の一端を示します。
今後王国がどう動くかはそれを見て判断しなさい。
なお魔王軍は、今日から1月後を持って王都を魔王領とします。」
イリアスはそういうと、砦から立ち去って行ったが、オーエンにはそれを引き止めることは出来なかった。
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