第5話 晩餐

「さあ皆んな、大いに飲んで食べてください!ちゃんと食べないと明日の訓練がもちませんよ!」


とユーリ副団長がにこやかに話しかけたが、


「俺、走りすぎて食欲ないよ...」

「俺も」

「私、フルーツだけでいいかも」

「私見るだけで気持ち悪...」


とみんなグロッキーだった。


楠田先生が、


「副団長、生徒達にお酒を勧めるのはやめてください。まだ子供ですよ!」


と言うと、副団長は慌てた様子で


「それは申し訳ありません。こちらでは15歳で成人になりますので、そちらの文化のことは失念しておりました。」


と言った。


こんな酷いことを強いているが、副団長は根っこから紳士なんだろうなぁ。


楠田先生は、当然、俺らとは別枠の扱いで、皆んなの担任として精神的ケアをする任務を与えられていた。



食欲ない者は早々と自室に戻る中で、残った者たちは和やかに晩餐を堪能していた。

育ち盛りの高校生であり、斉田以下、体力的に余裕がある運動部連中は特に食欲旺盛だった。


「この肉めっちゃ美味えぞ!」

「俺、こんなギャー◯ルズみたいなデカい骨付き肉食うの夢だったんだ〜。」



イケメン目当てで残った女子達がユーリ副団長を取り囲んで黄色い声をあげていた。


「あの〜副団長に質問があるんですけど〜交際してる相手とかいるんですか?」


「お恥ずかしながら...今は独身ですね」


「キャァー!」


イケメンは女子の気力を回復するらしい。




そんな騒がしい中で、俺の横では黙々と食べ続けている女子がいる...


斉藤さんだ。


「斉藤さん、倒れるまで走ったのによく食欲あるね。」


「(モゴモゴ、ごっくん!) そりゃ走ったらお腹減っちゃうじゃない?私なんてぜんぜん普通だよ。」(目立たないように隠れているのに話しかけないでよ。気遣いが出来ない男ね!)


「さすが斉藤さんはアスリートだね。やっぱすげぇなぁ。」(いやいや普通じゃないだろ。もしかしてこの子が勇者か?)


「織田くんこそ最後まで残ってすごいじゃない。私見直しちゃったよ〜。」(ほんと帰宅部なのに体力お化けね。もしかして彼が勇者じゃないの?)


真桜・胡蝶 (彼女とは(彼とは)お近づきなるのやめとこ...)

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