第4話 訓練開始

一夜明け、俺たちは王立の騎士学校に収容された。

ここでしばらくの間、戦いに備えた訓練をするらしい。


俺たちは、全員兵士の訓練着に着替えさせられ訓練場に並ばされていた。


「私はユーリ=メキース、第一騎士団の副団長です。」


そう話始めたのは、金髪長身の若い騎士だった。

温和で気品があるイケメンの登場に女子たちがそわそわしはじめた。


「ここでの訓練は100日。それを過ぎれば魔の森に入って実戦となります。

みなさんには最低、魔の森の第一層で生き残れる力をつけていただきます。」


ここまで馬車に乗せられ連れてこられたが、その途中で見た景色に皆んな逃げ出すことが出来ないと悟っていた。


街並みはまるで中世ヨーロッパであり、行き交う人の人種は様々だが、少なくともアジア系の人など居なかった。

運良く逃げても、目立たず生活するなど無理だろう。


「これからの訓練はここにいるダン兵長が君達の担当教官となります。」


そう紹介されたのは、いかにも鬼軍曹という雰囲気を醸し出した年齢40代くらいの浅黒い肌で坊主頭のマッチョの男だった。


「俺は新兵の訓練係をやっているダン=クロップ兵長だ。俺は一兵卒からの叩き上げでユーリ副団長みたいに上品じゃないぞ。これからビシバシ鍛えて行くから覚悟しろ!」


ニカっと浅黒い顔から真っ白な歯を見せ笑っているが、笑っているのにその威圧感は半端ないものだった。




その日の訓練は鬼兵長の予告どおり、厳しいものだった。


始めはただ黙々とだだっ広い訓練場をただただ走らされた。


30分もすると、ほとんどの女子と帰宅部で日頃運動をしていない男子が脱落していくのだが、脱落しそうになると後ろから鬼兵長が檄をとばし限界まで走らされた。


「このクソムシども!もっとキリキリ走れねぇのか!」


1時間後、

俺の他、運動部の男子5人に加え、斉藤さんが走り続けていた。


「おおお前らまだ余裕そうだな!俺からのプレゼントだ。」


鬼兵長はそう言って、器用にもどこからか持ってきた鎧の鉄兜を一人ずつ被せていった。

これは流石に息苦しく、柔道部の近藤が倒れ、その次に突然斉藤さんが倒れて脱落した。


兜で顔は分からないけど、さすがの全国レベル剣道少女も限界だったのだろう。


(胡蝶)

まあ。

元魔王軍幹部の私にはこのくらいは余裕ですけど!

このまま走り続けたら流石にまずいっしょ。怪しまれるっしょ?

ちょっとわざとらしいけど、幸い兜で顔分からないんでこのまま一抜けしよっと!



さらに1時間後


流石にまずいよね。怪しまれるよね。

残ってるの俺とバスケ部の斉田だけじゃん...こいつ勇者じゃね?

どこかでわざと倒れようかと思ったけど、その度に軍曹が煽るから走っちゃうじゃん。

俺演技下手だし。

いつのまにか鎧フル装備じゃん。


そんな感じで走り続けると、斉田がよろけ

キラ✳︎キラ✳︎キラ✳︎✳︎✳︎...

鎧の中でゲ◯吐きながら倒れて行った...


根性あるなぁ

やっぱ勇者か?



「よーし、今日のところはこの辺で勘弁してやろう!」

とニカッと笑いながら鬼兵長が言った。


「お前なかなか良い筋肉してるじゃないか!これから鍛えがいがありそうだ!特に目をかけて鍛えてやる!」


と俺に笑いかけた。

初日からやらかした...(汗)











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