壬《ジン/みずのえ》陽水

【壬】陽水 季節:冬  方位:北  

   根…亥(11月)、子(12月)、(丑(1月))生まれ


 見かけは柔らか(豊かさ、楽観的、鷹揚さ)で人に合わせることが上手でも、その力量は大きく、性質は剛(ゴリ押し、強引さ、洪水)です。

 流れて留まらない(人に合わせられるが剛直な面もある)。水は知恵を表わす(処理能力が高い)。大過すると草木も一緒に流す(周囲を巻き込んで失敗する)。


 「壬水ジンスイ通河ツウガ」大河・湖沼・池沼・大海。川に通じて海に流れ込む大きな水。大地の上をあちらこちらと流れ行くダイナミックな水です。

 壬は大きな河川、海などになぞられます。山間から流れる水が、せせらぎとなって集まり、やがて川となって、海へとたどり着きます。

 このように、その姿を絶えず変えながら、力強く流れるのが壬の特徴ともいえます。また、放っておくと、低い方へ楽な方へと流れていってしまうという特性を持ちます。


 見かけは柔らかでも性質は剛直。水は万物の源泉であり、常に流動し、どんな器に入れてもその姿を変えて馴染みます。柔軟でフレキシブルな発想ができ、深謀遠慮に長け、知略に優れた活動家です。

 海や大河が氾濫を起こした時のように、一度感情が決壊すると手がつけられません。

 一方で温かく接してくれる人にはそれに応えるなど、人によって違う顔を見せる複雑な人でもあります。


 壬水は陽剛の水ですので、滔々と流れる河川にもたとえられるものです。水旺月に生まれ、さらに壬癸水を天干に見ますと、水勢氾濫し、万物を流し去ってしまう恐れがあります。このことを冲天奔地チュウテンホンチと言います。

 壬水丙火を離れず、丙火壬水を離れず、と言われるのは、輔映湖海の象をなすからであり、また丙火の心臓と壬水の腎臓には密接な関係にあることをも暗示しているのです。

 水大過するなら、戊土によって制水するか、甲木によって納水するかのいずれかです。

 また、壬水は五行として木を生じはしますが、癸水のように木を滋木培木して質的に強化する作用はありません。

 乙木と並びますと、たたでさえ陰にして湿なる乙木を過湿にし、湿木無焔シツボクムエン、さらには漂泛ヒョウハンの木としてしまう恐れがあります。

 壬は丙を喜ぶ。



*理想:山岳の鉱脈(庚金)や辛金の水源があって流れ清く。

    壬水は庚辛を水源とします。

    堰き止められることを嫌い、河川増水すれば堤防の戊土で洪水を防ぎます。

    治水がしっかりとしていない川は、洪水となって、人々に甚大な被害を与えます。

    ある程度、強い状態の壬は、戊土の「コンクリートによるダム」で抑え込むか、甲の「森林の自然のダム」によって樹木の根に吸わせて、濾過していくかのどちらかです。

    ただし、どちらか一方しか使えません。コンクリートのダムを設置すれば、自然が破壊されてしまうのと同じ原理です。

    いずれの処方箋も、戊土や甲木を単体で用いるのではなく、必ず丙火の太陽とペアにして用いていきます。

    丙火の代わりに、同じ火の五行の丁火を使うのも可能ですが、やはり理想は太陽の丙火を使いたいところです。

    戊土と丙火を使って、川の流れを抑え込んでいく処方箋は、堅くて真面目な人格者のような生き方となります。きちんと勤めますが、面白みに欠け、ストレスも溜まりやすい傾向です。

    また、壬はあまりに強くなりすぎてしまうと、戊土があっても海底に沈めて暗礁とし、かえって水かさが増してしまいます。

    甲木と丙火を用いていく命式の人は、そばにいる人を楽しませながら、上手に人生を楽しむことができる人です。

    気ままな生き方になりやすく、規則に厳しい職場で勤めるのは、息苦しく感じるタイプです。

    壬水が強いにもかかわらず、甲木も戊土もなく、丙丁が命式にたった一つだけある場合には、比劫争財の形となりやすく、人生を狂わせる星ともなりかねません。

    このような場合には、人生の方向づけをしてくれる甲木もしくは戊土を、後天的に取り入れるようにします。

    また、その丙さえもなく、命式全体が水ばかりでできているような場合には、お金もいらなければ、地位や名誉も要らない、男性の場合なら、女性も要らないといったような、世間離れした考え方をしやすくなります。

    逆に、壬が弱まりすぎている場合には、遠慮しがちで、自分をあまり強く打ち出していかない性質となります。

    その場合、金の五行と水の五行によって、勢いを強めていきます。

    金の五行はゆっくりと少しずつ水を生み出して強めます。

    それに対し、水の五行は一気に日主を強めてくれますが、その分、強引さが伴います。

    水の五行の鑑定法は、その水質がどういう状況なのかを見ていくことにあります。

    「庚辛」は、水の水温を下げると同時に、知恵深くなる作用をします。

    特に庚金は鉄錆となって、清濁併せ持つような知恵の使い方となりやすく、この場合は、甲木と丁火を使って、上手に庚金の知恵をコントロールしていくようにします。

    また、己土が混じることを「己土濁壬」と言い、知恵が濁りやすい象意となります。

    この場合、日主が強ければ甲木を使い、日主が弱ければ庚金を使って、水の流れを濾過して、濁りを解いていきます。


*五常:「智」物事を推し量る頭の働き


*長所:好奇心旺盛で、何事も体験して納得する人です。

    水がさまざまなものを巻き込むようにとても社交的。いろいろな世界を自由に泳ぎ、どんな人ともよく馴染んで多くを吸収し、自然と人の先頭に立つことも多いでしょう。

    融通が利く。忍耐力。度量がある。


*短所:悪い点が出ると無責任にその場で流れ去ったり、そのときの気分次第で目標もなく流されていく人になったり。

    人に馴染みやすいぶん、周囲に左右されやすく、人任せ、成り行き任せのルーズな生き方になる傾向も。

    清濁併せ呑みますが、付き合う相手や身を置く環境には注意が必要。

    ゴリ押し、強引。依頼心が強くなる。策謀的。


*開運法:水は一つの場所にたまると濁って腐ります。

     束縛されたり狭い環境で同じことばかり繰り返したりしていると運気が低迷しがち。

     澄ますためにも刺激を求めて自由な環境に飛び込みましょう。

     自分を叱ってくれる人がそのきっかけになります。

     壬水は、心の中に持っている奔放さや投げやりな部分を出すと、運勢が閉ざされてしまいます。

     そして、一つ一つを焦らずに前に進んでいくことで、本来の壬の賢さが発揮され、素晴らしい人生となります。



★干合「丁壬干合」化木

 丁火 ─ 壬水 ⇒ 木に化す ⇒ 乙木 ─ 甲木

 ※月支に寅木・卯木があり、他に金の五行がない場合に化す。

 大量の水が小さな火を消す関係。海の灯台とも。

 壬は束縛を嫌い冒険を求めますが、丁の傷つきやすく過剰に反応する面を補う。

 木の本能である所属する組織や家庭を守り育てようとする意識が強まります。


★天干の冲

 丙(陽火・南)⇔壬(陽水・北)

 これらの冲もまた争い、事故、暴力などの原因となります。

 ゆえに戦いや紛争、暴力などが起こったら冲が鍵となりうるでしょう。




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