第3話 汚い男となめ子
「くくく」
場違いで不謹慎で不気味な笑い声に、田中夫妻は困惑で泣きそうになりながら顔を上げる。
「ああぁかぁわいいぃ。ほら見てよぉ。くく、うふふ」
田中夫妻に向かってにたにた笑いかけているのは、
そしてその男は、とにかく
「ねぇ。なめ
男は一方的に田中夫妻から視線を外すと、何かを握った自分の両手を見て、気持ちの悪い笑みを浮かべる。
男の手に収まっているのは、体長二十センチメートルほどの、尻尾までころころと
ヒョウモントカゲモドキはヤモリとはいえ、壁面や天井を這うことはできず、また、しっかりとした
「あらぁ、なめ子ぉ、おうちに帰るぅ?」
男は
しかし、さっきまで大人しく男の手に収まっていたなめ子は急に気が変わったらしく、男に撫でられていることなど気付いていないかのように、短い手足をじたばたさせて外の世界へ這い出ようとし始める──。
「なめ子がそう言うなら、帰ろっかぁ」
──『夜間救急動物病院はなおか』の、受付カウンターの中へ。
「すみません。うちの兄でして」
そう言いながら現れたのは、花岡である──。
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