第55話 波乱のベストカップリング開始

 竜弥は的中して欲しくない予感が的中したと噛み締められるほど実感していた。


 城崎ハク、姫咲香織が司会進行役だ分かった時点でこうなりそうだというのは分かっていたことだったのだ。ハクはアニメやゲームを見てからというもの関係というものが好きになったのだ。


 仲間、絆という呼び方をするときもあるかもしれないが彼女の場合はてぇてぇと言う言葉をよく使うのだ。尊いだとかただ見守っていたいという意味が込められているこの言葉は最近のオタクの間でよく使われている言葉であり、香織の場合はてぇてぇというものについて語らせると話が長くなってしまう。


 竜弥がそれを味わされた高校時代、彼は彼女の話をいつも黙って否定も肯定もすることはなく聞いていたことが原因?だったのか、彼女は熱く語り始め某ロボットもの、少年と少女の熱い物語が描かれる作品があるのだが、その作品についてずっと語り出し挙句の果てには……。


「私あの作品大好きなの!!少年少女が一緒に戦うあの作品が好きなの!!打ち切りとか言ってくる奴が居たら私がぶっ●してやるからな!!」


 と言い出すほどだったので流石に竜弥は止めたのであった。

 当時の竜弥はあまり否定も肯定もしない性格だったのが珍しく竜弥が敗北を認めた瞬間だったのだ。彼女がこんなにも関係というものに対して熱く語り出してしまうのかには理由がある。彼女はボーイミーツガールと呼ばれるもの。所謂、少年が少女と出会うような物語が大好きなのだ。彼女がそういう作品を好きになったのには理由があり、大人気アニメ映画作品の一つであり天空の城を探し出す作品があるのだがその作品で男女の関係が本当に好きで彼女は男女関係が熱い作品を漁るようになったのだ。


 因みにその作品はどちらかと言うと、サングラスをかけた敵キャラの台詞が有名だったりしてア香織もよく使っていることが多いが恵梨に「引かれるから止めな」と止めることも多かったが此処に関しては今でも変わらずにいるようで最近では哀れな某仮面キャラの台詞である「知らぬよ!!」を連呼したり、甘党で可愛いと有名な暴力団組長の台詞である「まだやる?」と言い出したり、某天才的なアイドルの「嘘はとびっきりのラブなんだよ」とか色んな作品の台詞を言いまくるせいで彼女の配信は滅茶苦茶であり、初見が「マジでずっと喋ってて怖いし何言ってるのか分からない」と言ってドン引きするレベルである。


 一応彼女の名誉のために言っておくが、彼女の話を理解する為に彼女が連呼している作品の台詞を理解しよう?とする為なのか作品を履修する者も増えている為、結果的に布教活動?にもなっている。また、本人がアニメや映画の同時視聴をするおかげもあってか履修できている視聴者も多いのだが彼女はキャラが死ぬ度に咽び泣く為次の話に行くのが結構長い。


 繰り返す言っておくが彼女は本来そんなに悪い人間ではない。

 問題なのは彼女の前でアニメや漫画、ゲームの悪口を言うとマジで拳を握ってくるため、手が出やすい人というのもあって、似た者同士ということでハクは獅童のコラボ相手に選ばれることもあった。もう一つ、彼女の名誉のために言っておくが彼女は危ないネットミームには全く触れようとしない、理由は火遊びは嫌だかららしい。


「それでは今最もホットの尊い関係の六組をご紹介します!!」


 城崎ハクはかなり気合が入っており、張り切っている様子。

 さて此処まで彼女の紹介をしてきたが彼女はというものが大好物なのである。恵梨が竜弥と千里の関係を見て喜んでいるのを見て「キモい」と言っているが、彼女もまた二人の関係が好きなものであり割と二人の関係というものを見て更にああいったものを尊いと考えるようになったので原因はあの二人にあると香織は割と責任転嫁しているのだ。


 此処まで姫咲香織、城崎ハクという女性の話をしてきたが彼女の話はまた今度の機会に話すとしよう。


「最初はV-Next随一の仲の良さ?の二人組!!」


 最初に紹介をされたのはV-Nextと呼ばれる企業に所属するVsingerの二人組である。


「はーい!!みんな初めましてー!!浜羽サユー!!と……」


 結ばれた黒髪を揺らしながらも彼女はにこやかな笑顔で挨拶をする。

 同じV-Next所属の神代に負けないぐらいの大きな声で元気よく挨拶をしていたが彼女が神代と一番違うのは関西弁を使うところである。


「はーい!ベストカップリングというのは個人的に解釈不一致な神代マナでーす!!」


「なんでや!?さっきの紹介でもあったやけどウチらはV-Next随一の仲の良さやん!!は!?もしかして嫌々も好きーっちゅうことか!?もう照れてまうまやないか!?」


 一人で会話を続けている浜羽。

 彼女のもう一つ特徴的なところはやたら喋るところ。初配信ではコメントとずっと会話していたせいで次の同期と配信時間に被ってしまうかもしれないという事件が起きてしまい自分のことをカップラーメンができる三分間の間に話を済ませてなんとか終わらせることに成功。更にカラオケ屋のホラーゲームでは幽霊相手に一曲熱唱するという謎のこともしたり、幽霊だと思っておらず話しかけたりと割と珍事件なことが発生していることが多い彼女である。


「いや……違うよ……なんか気づいたら応募させられたし……」


「はぁ!?ウチらなら勝てる言うてたのマナやないか!?なんで急に冷たくなるんや!?」


「あーいやちょっと回線が悪くなってきたかな……」


「心の回線が悪くなってるだけやろ!?それ!!?」


「相変わらず仲が良い二人組!!いやーこれはもしかしなくても優勝候補かもしれないね!!」


 心の回線が!と言っているときにマナは「おー!!上手い上手い!」と言っていた。

 彼女達の関係を初めて見た人たちは仲が悪いのか?と勘違いしてしまうだろうが本当は違う。裏では結構二人で話をしたり一緒に花火大会に出かけたりすることもあるので仲は決して悪くはない。二人のファン同士も二人で絡むことがあるコラボでは発狂するレベルで喜んで居たりするのである。因みに変な話ではあるが、浜羽は割と冷たくされているのを喜んでいる節もあるらしい。


「続いて……一組が急遽参加できなくなってしまったことにより参加していただき誠にありがとうございます!ノアカナです!!」


「息子に参加して欲しいと頼んだときに悲しい思いをしましたNoAです」


「え?なに?悲しい思いって?どういうこと?一回断られたの?振られたの?」


「ハク?」


「ああーごめんねNoA……じゃあなにがあったのさ?」


 NoAの極道の圧に負けたハクは素直に謝罪をすることによって指を詰めるのを回避されることになる。彼女達は何度かバーチャル世界で会った事はある為、顔見知り程度な関係なのだ。


「あー……えっと……」


 奏多はかなり言いづらそうにしている。

 周りは「どうしたんだろう」と言った感じで奏多の方を見ているのを彼は白状すると、出演者一同及びコメント欄がざわつき始める。流石のロウガも「え?」と言って奏多の方を見ていた。


「えぇ!?ほんまにそんなこと言うたの!?」


「あーいや……だってほら俺、NoAママと親子みたいなもんですよ!?カップリングなんてそんな……それじゃあまるで……」


「奏多、それ以上喋ったら二度と喋れないようにするから」


「す、すいません……」


「ま、まあ……奏多も年頃だしな……」


 これ以上の言及はするなと釘を刺される奏多。

 驚愕のあまり思わず聞き返してしまったサユとなんとか最低限の擁護をしてあげたロウガであったが、今回ばかりはNoAじゃなくても誰もがそれを聞けば「は!?」となる内容。その内容が……。





『え!?僕が恵梨さんと出るんですか!?え!?いやでも僕と恵梨さんって息子と母親ですよ!?そ、そんな二人がカップリングなんて危ない関係みたいで駄目ですよ!!』


『は?』


 恵梨はこのとき本気でキレていた。

 元々一枠足りなくなってしまった分を香織から「ガチファン君と出ればいいじゃん」と言われて恭平のことを誘ったのだが返って来た答えがこれだった為、本当に彼女の血管という血管が脳血管が一つ切れる音をしながらも彼女は本気で彼に対して説教をした。


『いい!?恭平!!恭平はいい子だし、優しい子だしゲームも上手いよ!!カッコいいところも見せられるのもいいと思うし大会もかなり優勝したり、爪痕を残せたりしてて此処最近は名が知れて来てるから今の内に言っておくけど、そうやってすぐ変な想像するところは本当にダメだから!!最近女性Vに対してセクハラ発言してるのは今後揚げ足取りされるからやめておきなよ!?分かった!!?』


 手に持っていたコーヒーが入ったカップを何度も恭平に突き付けながらも珍しく彼女が大きな声で長い言葉を喋っていたが奏多は全て本当のことだった為、何も言い返すことが出来なかった。





「な、なんか凄い衝撃の告白の後だから紹介に戻るのに凄い不安が残ってるけど……じゃあ続けて行くね……」


 奏多の衝撃の告白の後一組ずつの自己紹介が続いていた。


「さて!!最後の一組の紹介となりました!!最近割と話題沸騰中!!?アイオライト所属久狼の二人組です!!」


 若干熱が入ったような言い方をするハク。

 二人が後輩であり、自分にとって大事な友人ということもあるのかもしれない。


「初めましての方は初めまして!!こんろー!!孤高の狼!!どうも神無月ロウガです!!正直不安で仕方ないですが全力で頑張らせてもらいます!!」


 視聴者に俺がこういう企画に出ると言ったとき、印象に残らせるためにも何か付け足して見たらと言われて付け足したのがこれなのは俺の視聴者に本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになってくる。すまない、みんな……。何も思いつかなかった。


 このとき、ロウガの視聴者達はコメント欄で頭を抱えながらも「大丈夫、二人の関係は誰にも負けないから」と次へと切り替えていた。一度の炎上を乗り切った彼の視聴者はこの程度ではへこたれないのだ。


「こんドラ、みんなに届け私の音楽!久龍アンナだよ……!!今回はベストカップリングと言うことで二人がどれだけ仲良いかを見せられたらいいなって思ってるよ!!」


 問題児の一組に比べれば比較的穏やかな自己紹介と意気込みで終わった久狼。

 印象的に残ったかはともかく二人にとっては此処からといったところだろう。


「我が社の後輩が大変仲が良いと聞いていますからね!!もしかしたら優勝なんてこともあり得るかもしれないと期待しちゃいたいけど此処にいるメンツも中々濃いカップリングだからね!!簡単には行かないと思うけどね!!」


 ハクはグッと堪えていた。

 自分が今言及している相手は恵梨たちやマナたちに比べれて一歩も二歩も行っていることが分かっていたが言っては駄目だとグッと堪えて公平性を持たせようとしていた。


「という訳で全組の自己紹介と意気込みを終えたということなので此処からはルールの説明でございます!!今回このベストカップリングはポイント制であり、司会進行役の私が指定したお題に対してまずどちらか一人がお答えしていただきます。それについての印象的な話をお話しつつ、答えてもらった質問の答えが一致した場合のみその一組に対して1ptが加算されていきます。こちらがルールになりますね」


 『印象的な話気になる』

 『男女ペアなところは結構気になるよね』


 コメント欄的にも今回のルールで一番気になるのは印象的な話というところだった。

 これは確かにルールとして面白いもの。回答した一人が何故そこが印象的だったのかという話をしながらお互いの絆が確かめられるというわけなのだから。


「ではまず最初の質問です……これはベタかな?お互いの第一印象です!こちらどちらの印象でも構いませんのでそれを先に決めてから互いに書き始めてください」


 『ノアカナは……』

 『これマユナが一番やばいかも……』

 『久狼って言及したことあったっけ……?』


 お互いの視聴者がお互いのVに対して第一印象のことで言及していたか思い出したり、なんとなく何を言い出すのか予測しているようだった。特に一番察していたのはマユナだった。


「おっ一番早かったね……!!マユナからマナどうぞ!!」



『うるさい』


 『予想通りで草』

 『デスヨネー』

 『えぇ……』


 書かれている内容は至ってシンプル。

 ただ文字として五月蠅いと書かれているのを見てサユは思わず椅子から立ち上がり、「はぁ!?」と言う声が出ていた。


「五月蠅い!?あーいやあれかな?声がとか……?やっぱり大阪の人だからさ」


「あーえっと……一期生の顔合わせのときに一番最初に話しかけてきたのがサユだったんですよ」


「えぇ~そうなの?でもそれって嬉しいことじゃない?だって企業Vなんて顔合わせのときなんてみんな同期誰なんだろ?同期誰なんだろ?とか怖くない人だと良いなとかビクビクしてるじゃん?そんなときに話しかけて来てくれたら普通嬉しいんじゃない?」


「司会の人もそう思うやろ!?ほんまに失礼な奴やな!!!というかどうせそんなことやろと思 とったわ!!」


 サユも自分が書いたものを見せるとそこには「うるさい」と書かれていた。

 二人の視聴者以外、どういうこと?どういうことと言いたくなっているのを堪えながらも二人の話を待っていた。


「あっ一緒なんだ……因みにマナの方は理由は?」


「いや……話しかけてくれたのは嬉しいだけど話が凄く長くて。私が東京の人間って分かったら東京ってどんなところなの?って凄い聞いて来たんですよ。聞いて来るのは全然構わないんですけどなんというか凄い話掛けて来てえ?これいつ終わるの?となって会議始まるまでずっと話しかけれて他の子と挨拶できなかったんですよ」


 香織は彼女がなんとなくお喋りが大好きな典型的な関西人タイプだと分かってきたため、なんとなくマナが言っていることを理解してきたのである。


「あー……つまりしつこかったし五月蠅かったと……」


「いやいや!?司会者さんも何納得してますん!?確かにウチが五月蠅かったかもしれませんけどウチが話しとる間もマナは楽しそうにしてくれたんやで!?それで机の上に置いてあった東京のお菓子とかを持って来てくれて一緒に食べよって言うてくれたんやで!?やのにこの子は今こういうことを言うてくるんやで!!?えげつなくないなんか!!?アンナもこの話前に聞いとるから知っとるやろ!?」


「う、うん……聞いたけど……」


 数回ほどサユともコラボしたことがある久龍は彼女の話に頷いているのを聞いて、「ほらほら!!」と言っているサユに笑いが止まらなくなっていた恭平。


「と、とりあえず落ち着こう!!ほら他の人の回答もあるからさ!!後でその辺ゆっくり話聞いてあげるからさ!」


「ほんまなん!?後で聞いてくれます!?」


 このままだと全く止まらなくなってしまうと判断しつつも女子同士の関係っていうのも悪くないものだと頷きながらも、次にロウガ達の回答が早くに書き終わっていたのを見て表示させる。


『歌うめえ』


 書いていたのは勿論ロウガ。

 ハクが理由を聞き始めると、彼は語り出す。


「森の中でご馳走を食べていると、山奥から歌声のようなものを聞こえて来たんですよ。声に導かれる前に行ったらそこには竜人の姿をした女性が歌っているところを見かけて俺は邪魔しちゃいいけないと思ってすぐにでも帰ろうと思ったんですけど彼女に見つかってしまったんですよ」


「えぇぇぇ!?そうだったの!?滅茶苦茶良い出会い方じゃん!!」


 ハクが関心していると、少しロウガとアンナは恥ずかしそうにしているとロウガの後ろからもう一人のロウガが『あの出会いは良かった』と記憶に酔いしれていた。この話は因みにNoAだけが知っており、話を聞いてて満足そうにしている。


「聞いてたの?って聞かれて俺は良かったって言うと少し照れ臭そうに彼女が笑ってくれたのを覚えていて彼女が最後に待たね神無月って笑いながら言ってくれたの方が本当に嬉しかったんですよね」


 『滅茶苦茶イイハナシダナー』

 『前一組のせいで温度差を感じる』

 『久狼てぇてぇ』


 一部の出演者以外及び視聴者は思っていたことがある。

 あれ?このペア思ったより結構ガチだなと……。


「うわっ!!滅茶苦茶いい話!!これはもうお互いが同じ意見でしょ!?じゃあアンナ見せてみて!!」





『うわっこいつ歌下手くそ!!』


 書かれていた回答は彼とは全く正反対の答えであったことに出演者たちが驚きの声を上げていた。中には……。


「いやいや!!アンナ滅茶苦茶歌上手いじゃん!!」


「そうやで!!ウチらもよく歌を聴いてんで!」


 マユナの二人が彼女の回答に対して「いやいや」と首を振りながらもそんなことないよと言っていたが、アンナは理由を答え始める。


「あの……これはロウガから何度も言われてたんで知ってたんですけどでもあのときのアタシってただ我武者羅に歌ってただけなんで上手いなんて自分で思ってもいなかったんですよ。あわよくば誰かに聞いて貰いたいぐらいの感覚だったので……。んで鼻歌交じりで練習がてらに山の奥で歌っていたら偶々ロウガに聞かれてあーもう終わった!!ってなってうわっこいつの歌下手くそ過ぎって思われてるんだろうって思ってたんですよ」


「……待って、回答知ってたのにそっちを書いたの?」


「アタシのプライドが許せなかったので……」


「いやいや!!知ってるならそっちの回答を書いてよ!!?」


 自分のプライドが邪魔をした結果、久龍は違う回答を書いてしまった。

 自分の中ではあのときの歌が未完成なものとしか認識していなかったからである。ストイックで努力家だった頃の彼女の変わらぬ様子にもう一人のロウガは「らしい」と嬉しそうにしていが、二人の視聴者は若干頭を抱えていた。


 二人共もしかしたら自我を出してしまうかもしれないと……。

 二人の視聴者が頭を抱えている間にも他の組の回答が照らし出されており、最後はノアカナのペアとなったのだが……。遅くなっていたのはNoAが何かを書くのを躊躇っていたからであり、ハクは少しばかり嫌な予感がしていた。


「NoA凄い遅かったね?もう大丈夫?」


「うん……」


 頭のなかでこれでいいんだよね?これでいいんだよね?と不安になりながらも、NoAは先に出された恭平の回答を見る。


『いい子』


「あー駄目だよNoA!!書きなおそうとしないで!!」


「え?なに書いたんですかNoAママ……」


「変なのは書いてない!!」


 奏多が書いたのをNoAから見た第一印象であったがNoAは本当に彼に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。

 まるで変なのを書いてしまったと言わんばかりの反応にコメント欄が戸惑っているのを見て、ハクは「じゃあNoAも見せて」と言われるが見せるをかなり渋っているNoA。彼女が此処まで取り乱すなんて珍しいなとなっているロウガであったが、理由はすぐに分かった。





『可愛い』


 『NoAママのSNS見てれば大体実はわかる』

 『メン限の配信皆勤賞だもんね』

 『ママさん凄いな……』


「……相手未成年だよNoA」


「は!?違う!!そういうことを言いたいんじゃないの!!」


 ハクは奏多が未成年である為、NoAが何かエゲつないことでも彼にしているのではないのか?と勘ぐっていたがNoAは全くそういうことはしていないと抗議の声を上げていた。


「そやけどウチも分かるかもしれんな。奏多はにくそい生意気やけど可愛いところもあるもんな」


「はぁ!?ぼ、僕が可愛い!!?」


 NoAに言われたときは親馬鹿が発動していて少し恥ずかしい思いをしていた奏多であったが、サユに言われた途端に動揺を隠せず大きな声を上げているのを見て司会進行役であるハクが「落ち着きな」と止めているのであった。


「でもアタシも分かるかも?まだ奏多君のことよく知らないけど確かに可愛い所もあるなって思う」


「え!?あ、ありがとうございます!!」


 奏多は舞い上がるようにして嬉しくなってしまっていた。表向き、配信上では絡んだことはない為出す事はなかったが「千里さんにも可愛いって言われた……嬉しいけど男として可愛いっていいのかな。いや、最近は男の娘とか言うのも主流?主流は言い過ぎか?みたいなもの流行ってるしなぁ……」とブツブツ言っていると、NoAが釈明をし始めた。


「あの……本当に犯罪臭するとかそういう意味での可愛いとかじゃなくてVになる頃に何度か打合せがてらに顔合わせしたことがあるの。初めてVの子を担当するし、どんなの子なのか実際に私の目で確かめてみようってそしたら来たのが高校生ぐらいの子で本当にびっくりしてえっ!?可愛いと思って」


 彼女は彼が竜弥からサインを貰った子だと分かるまで少し時間が掛かった為、初対面で彼のことを見たとき「可愛らしい男子高生が待ってる!?」と思わず思ってしまったということであるのだが、ハクとサユはドン引きしていた。


「え?こわっ……」


「うわっやっばいわこれ……」


「え!?」


 ハクは年下趣味がない訳ではなかった。実際、アニメで出てくるような少年キャラは好きである為、本来であればNoAの気持ちを分かってあげられるのだが彼女の言い方が舐め回すような言い方をする為、親友に恐怖心を感じていたのだ。


「あの~聞くのが怖いな……。会ったのって一度だけじゃないよね?確か配信上とかSNSでも何度か会ってるって言ってたもんね」


「……そうですね、NoAママにはご飯をご馳走になったり旅に連れて行ったりしてもらったこともありました」


「……旅って流石に泊まりじゃないよね?」


「泊めてない!!」


 収集が着かなくなると判断した奏多はNoAママに助け船を出すが彼女は全く正常な状態ではなく、有らぬ疑いを掛けられた状態になっていた。彼女はロウガと和解する前は彼の話題さえ出さなければ割と彼に対して愛情を注いでいた。先ほど話していたようにご飯を一緒に食べたり一緒に日帰りで帰れる旅行をしていることもあったのだ。此処までするのには理由があり、彼が東京で一人暮らししていることもあり、尚且つゲームばかりさせるのもどうかと思い企業勢でもない彼のことを出来る限り彼女はサポートしてあげているだけなのである。


 ただ誤解されているのは彼女の言い方が気持ち悪いだけなのだ。

 


「……犯罪起こすのだけは勘弁してね」


「しないから!!」


 出演者一同、コメント欄が驚いているなかロウガは唖然としていた。

 NoA、恵梨は割と常識人ではある為まともな人だと言う印象が強かったのだが彼女のイメージが総崩れした瞬間でもあったのだ。


「こりゃ荒れそうだね……というかノアカナって結構仲良かったんだ……つーか質問聞くの怖いんだけど……奏多君はある程度はまともそうだからあの子に聞くか……」


 頭を抱えることになった香織ことハク……。

 机の前で立ち上がりずっと机を叩きながらも抗議を続けていた恵梨ことNoA……。ハクより恐怖だったのはNoAだということを思い知らされるロウガの三人であった。







「助けてくれぇぇ!!私はただてぇてぇ合戦を見たかっただけなのになんでこうなるんだ!!!助けてくれ!!!もうやだ!!!」


 波乱のベストカップリングは続き彼女、城崎ハクのもう一つの特徴それは彼女は苦労人であり不憫属性だということ……。

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