第18話 違和感
今回のゲームは俺がダブルキルをしたことによりかなり会議は大きく動いた。更にもう一人の人狼は奏多であった。残りはNoAとメア、蓮司となっていた。奏多は自分を疑われたが、機転を効かせることによって自分を標的から遠ざけたのだ。そして、一番丸め込めやすい蓮司を味方につけて票を分散させたのだ。
その結果、今回の投票は分かれた状態になり俺は全く疑われていないということになっていた。これに関してはかなりラッキーだった。メアは俺のことを疑っている様子はなく、NoA……の姉御は俺のことを少し疑っていたがこの試合勝ちだ。
最終的に奏多と俺がNoAの姉御を挟み込むに成功して殺害できた。
俺は人狼として二勝出来たのだ。初めてにしては中々なものだったんじゃないだろうか。
「まさかロウガ君が人狼だったなんて……」
俺が人狼だったことにメアは驚きを隠せないようだった。
「今回の試合、最初に復讐したい二人を殺せてラッキーだったよ。獅童と玲菜をね……」
「さっきの試合の話ならごめんってロウガ……」
獅童は反省している様子だが、このまま許すと言う訳にはいかないだろう。
俺のことを散々騙してくれたんだしな……。俺が獅童と話していると、玲菜は不服そうに俺に異議を申し立て来る。
「ロウガ様、私関係ないじゃない」
「関係はあるだろ」
「絶対関係ないじゃない、私何も言ってないのに」
言われてみれば、玲菜は俺に対していい気味だと言っていたぐらいで……いやあの発言ちょっとイラっと来たから当然の報いなのは間違いないだろう。
「今回ばかりは俺達の完全勝利だなロウガ」
「ああ、それは間違いないな奏多。次あるときも俺達で勝とうぜ奏多」
俺と奏多のコンビネーションは間違いなく最強なものだった。
奏多は自分にヘイトを向かせることで俺にヘイトを向かわせることなく話を進ませることが出来ていたのだから。
「カッコつけてるところ悪いけど私はまだ二人のこと恨んでるから」
「それは……すいません」
忘れていたことを完全に思い出させられた。
三戦目のあの試合俺は完全にミスをしてしまったNoAの姉御を人狼だと勘違いしてしまっていたのだ。出来ればそれを思い出したくない俺は今の今まで忘れているフリをしていた。
「明日までにケジメつけといて」
「は、はい……NoAの姉御……!!」
結局この人が本当に恵梨なのか、分からなかったけどこの若干圧を感じる喋り方はちょっと違う気がする。あいつは元ヤンと言えど、話していれば優しい奴だと分かる。NoAさんも圧の中で優しさというものを感じるがちょっと違う気がする。
俺の勘違いだったのかな……。まあ、今はそんなことはどうでもいいか。
「それにしても蓮司は結構正直者だったわね……」
「俺もインポスター一緒になったときは不安だったけど、マジでそれが的中するとは思わなかったわ」
通話を切る前、獅童が変な声を出しそうになっていたのはその為か。
俺は少し違和感を感じていたが、それに従っていればメアのことを殺すこともなかっただろうな。
「す、すまん獅童……あまり嘘をつくのが得意ではなくてはな……」
蓮司は人狼やった際、疑われたとき反論することが出来ずすぐに自分が人狼だと認めてしまったのだ。それを聞いていたとき、俺は思わず驚愕したし周りも困惑していたがきっと蓮司は嘘をつけないタイプなのだろう。
「俺は正直メアに殺されると思わなかったけどな」
「アハハ、ごめんねロウガ君……。でもロウガ君ならきっと許してくれると思ったから……ね?」
まああのときは敵だったけど、仲間でかつ清楚の女の子に殺されると思えば悪くな……発想が随分キモイな。俺は自分の頬をつねりながらも今考えようとしていたことを速攻で忘れようとしていた。
それぞれが会話を続けるなか、四試合も行ったことで試合回数的にもちょうどいいだろうということでここら辺でお開きと言うことになった。それぞれが配信の挨拶をして配信は終了となり、次々と通話から抜けて行くなか、俺と獅童だけが通話に残っていた。
「あの二人、間違いなく……」
「どうした與那城?」
「え?あ、ああ……なんでもないよ」
與那城が誰かのことを言っていたみたいだが、誰のことなのかは理解できなかった。
「楽しかったか與那城?俺のことを欺いて」
これ以上聞き出す必要もないだろうと思い、俺は今日の人狼ゲームが楽しかったかどうか聞いていた。もちろん、これは冗談のつもりで言っていた。
「そのことはごめんって竜弥兄……でも竜弥兄も楽しかっただろちょっとした小芝居みたいのが出来て」
「まあ楽しかったっちゃ楽しかったけどな、與那城は?」
配信も終えたことだし通話も誰も残っていなかった為、俺は本名で與那城のことを呼んでいた。
誰かに聞かれていたとしてもさっきまで残っていた奴なら本名を他人にばらしたりすることはないだろうけどな……。
「人狼ゲームだっけ?初めてしたけど、結構楽しいゲームだな!」
人狼ゲームというよりほぼパッションでなんとかするゲームだったけど、そこはまあ気にしなくていいところか。楽しければなによりもいいことだしな。実際、俺もかなり今回のゲームは熱中させてもらったしな。
「そうか、與那城が楽しかったなら俺はなによりだよ」
俺が部屋に入ったとき、かなり落ち込んでいた様子であった。
今回のコラボ配信ちゃんと喋れるか心配だった。途中黙ることはあったけど、あれは與那城なりにゲームのことを考えていたのだろう。
「なんだよその言い方、まるで私のこと心配して……ごめん竜弥兄」
自分が昨日落ち込んでいたことを思い出したのか與那城は俺に謝罪をしてきた。少し意外だったが、俺は気にせず彼女の謝罪を受け取った。
「別に気にするな、色々あったんだろ」
「う、うん……そう……だな」
「與那城……?」
「ん?ああ、ごめんごめん。ちょっと音声途切れ途切れでさ、本当にごめんな竜弥兄」
なんだこの違和感は與那城とずっと話していて違和感のようなものを感じていた。それがなんなのかは分からなかったが與那城の悩みはかなり大きいものだということはなんとなく分かった。だけどそれを今は知ることは出来ないだろう。なにかきっかけのようなものがあれば聞き出すことも出来るかもしれないけど……。
それも今は難しいだろう。
「竜弥兄携帯鳴ってるぞ?」
「ん?ああ、本当だ……ちょっと出てみる」
スマホを確認するとそこに恵梨の名前が出ていた。
もしかして例の件のことが分かったのだろうか。俺は急いで電話に出た。
「例の件分かったよ」
「そうしたら……高校時代よく通っていた喫茶店で話がしたいんだけどいい?」
「構わない、10時に待ってる」
恵梨はそれだけを俺に伝えて電話を切った。
パソコンの前に戻ると、與那城はまだ通話を切らずに待っているようだった。あいつ俺がミュートしてもずっと待っていたのか、少し健気に思いながらも俺は「ごめん」と伝えて通話に戻ると、彼女は無邪気に反応してきた。
俺はそれを聞いて、彼女の家のことを調べようとしていることに少し罪悪感を感じていた。開けてはいけない玉手箱を開けようとしているそんな感覚もあれば、彼女の知らないところでやましいことをしている気分になっている自分がいたからだ。
「ごめん與那城……」
小声で俺は與那城に謝り、自分の罪悪感を消し去ろうとしていた。
與那城の家のことを調べて何も無ければそれでいいんだ。そう、それならきっと何も無かったで終わるのだから。だが、あのとき俺に「家族のことか?」と聞かれた與那城は間違いなく怒っていた。
ならば、落ち込んでいた理由は間違いなく……。いや、とにかく何もないならそれでいいんだ。
それで……。
だが、その期待は裏切られることになる。
「與那城静音は血が繋がってない」
その言葉をきいたとき、俺は心の底から思ったことがあったのだ。
あいつは……與那城の心を開く鍵は相当の努力をしなければ手に入る事は出来ないだろうと……。
そして、あいつもまた俺と……。
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