第38話
***
今日は新作ブラの撮影会だ。もちろん撮影は高階、モデルはエミリー。
「メイちゃん、久しぶり。見学?」
冬夕がメイに声をかける。休日の今日、わたしの家にやってきたメイは私服姿。ボーイッシュなのは意外ではないんだけれど、それが、すっと似合っていて、普段着でもヒロインめいている。パリの街角のカフェにいそうな雰囲気ある。
「谷メイはわたしが呼んだ。迷惑だったかな?」
「迷惑ってなんだよお! ウィンターズだってわたしに会いたかったでしょ」
「うん。会いたかったよ。メイちゃんに会えないと、とっても寂しい」
冬夕がにっこりと笑顔を見せる。
「ををを。そ、そんなこと言っても何も出ませんよ」
メイにとって思いがけない言葉だったのか、めちゃきょどってる。素の姿が見えれば、たちまちコメディエンヌ。でも、その落差が見ていて楽しい。ふたりの掛け合いを目で追う。
「雪綺。そんな嫉妬深い目で、そいつのことを見たりしなくていい。断然似合っているのは、ウィンターズのふたりだ」
下着姿のエミリーに言われて、
「な、な、な」
とわたしもしどろもどろになる。いや、そんな目してないって!
「あ、エミリー、ウィンターズって言った!」
びしっと指をさすメイ。
「いいネーミングだから、わたしも使う。これからこのふたりは、スプスプのふたりと呼ばれるようになるだろうし。わたしたちはスプスプである前に、似合いのウィンターズっていう存在を知っている。少しくらい特別な間柄でいたっていい」
今日もエミリーは颯爽としていてかっこいい。
「それでは、撮影入りまーす!」
高階の掛け声で、それぞれの位置にスタンバイする。といってもわたしたちは、ほとんど傍観者となる。高階の写真に絶大な信頼を寄せているから。仕上がった写真をフィルグラにアップするのが楽しみだ。そうだ、あとで新しいアトリエも撮影してもらおう。
ふいに、冬夕が立ち上がる。
「雪綺がメイちゃんを呼んだんだ。なかよしだね」
そう言って冬夕がわたしの髪の毛をかきあげて部屋を出てゆく。
「ちょっと、撮影見ないの?」
「トイレ」
撮影の時に冬夕が、つんとしてるの珍しいな。ブルーデー、来たのかな?
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