第24話

***


「ヘイ! ウィンターズ、連れてきたぜい」

 メイが、じゃーん、と両手をきらきらさせて呼び込む。

「あ、こんにちは。高階柊です。スプスプのふたりに会えるんだ。嬉しい」

 あらわれるのは小柄な女子。あ、この子、夏休みの校舎でカメラを抱えてダッシュしていたの見たことある!

「柊ちゃん、て呼んでいい?」

「ヒーコでいいよ。スプスプのふたりはウィンターズって呼ばれているの?」

 わたしは、またか、と思いながら自己紹介をする。

「それ、メイしかそう呼ばないから。こちらが三角冬夕。わたしは松下雪綺。冬夕と雪綺でいいよ」

「冬夕ちゃんと雪綺ちゃんか。ほんとだ、ウィンターズ。ふたりはすごいよね。わたしもお小遣い貯めたらお願いしたいと思っているんだ。あ、そうだ、ブラじゃないんだけれど、手袋って作れる?」

「手袋?」

「あ、うん。わたしカメラを使うのね。結構、指とか日焼けしちゃうんだよね」

「いいじゃん、日焼け!」

「うーん。メイちゃんは似合ってるけどね。わたしはあんまり焼きたくないから。と言っても本格的にカメラと向かい合うようになったらそんなことも言っていられないとは思っているけれど」

「手袋、考えておくね。でも、今はちょっと難しいと思うの。ランジェリーのアイテムを揃えるのでいっぱいいっぱいなの」

 ああ、と困った顔をして両手を振る高階。

「ううん、いいのいいの。ちょっと思っただけだから。それよりも、」

 慌てながら、言葉を続ける。 

「ふたりがわたしにお願いがあるって聞いたんだけれど」

 冬夕がゆっくりとうなずいてこたえる。

「うん。あのね、わたしたち、フィルグラのアカウントを取ったのね。そこでブラを紹介してゆきたいんだ。

 スクープ・ストライプの公式アカウントだから、ブランドらしく素敵な写真を載せたいんだけれど、どうもわたしたち写真をうまく撮れなくて。それで写真の上手な人におねがいできないかな、と考えていたの」

 高階はあごに手を当てて考える仕草。

「そうか。うん、わたし、この夏休み中に写真の勉強をしたので、少しは上手に取れる自信はあるよ。でも、きっと大事なのは写真じゃなくてスタイリングだよね。モデルを使うのも必要なのかも、だけど、ブラだと結構気を使うよね」

「そうなの。そこも悩みどころなんだよね。医療用のブラに関しては、雪綺のママとわたしのママにお願いしようと思っているんだけれど、一般の方は、どうしようかな」

「それなんだけど、冬夕、」

 わたしは今日一日考えていたことを伝える。

「夏休み中に、それと、それまでにも結構いろんな種類のブラを作ったよね。友達のリクエストにもこたえた。

 でも、オンラインで展開するのにいちど初心に戻った方がいいとおもうんだ。

 ううん、これはわたしのわがままなのかもしれない。受験勉強というプレッシャーが大きくなったのが、たぶん理由のひとつではあるんだけれど。

 でも、いちど、医療用のブラだけに集中しない? 文化祭の展示も医療用ブラの変遷、みたいな展示にしたいと思っていたし、そうしたらモデルのこととかシンプルに考えることができるようになると思うんだけれど」

 冬夕も高階みたいに、あごに手をあてて考えこんでいる。

 自分の顔がみるみるこわばってゆくのがわかる。間違ったことをしゃべったかな? 冬夕の一挙手一投足がやたらと気になってしょうがない。

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