第48話

 放課後、アキラはバイト先の書店の前にいた。


 郊外の国道沿いにある大型の書店でゲームショップも併設していることから来店者数は結構多い。店前の駐車場には今日も車が何台も駐車している。


 紙袋を持ったアキラは、二重になっている外のガラスドアを引き開けて、中の自動ドアをくぐって店に入った。


 たくさんの本が整然と並んでいて、そして全体的に静かな空間。

 店内では静かなBGMを小さめのボリュームでかけている。

 紙の匂いなのかインクの匂いなのか。独特の匂いがする。


 アキラはこの匂いが結構好きだ。


 入って右手の方にあるレジのところに目を向けると、3人ほどのスタッフが会計や接客業務をしていた。

 少し遠くから様子を伺っていると、会計の列に並んでいたお客さんが全てはけた。

 今なら声をかけても大丈夫だろう。


「…お疲れ様でーす」

 小さめのボリュームでスタッフに声をかけた。


 するとアキラに気づいた3人のスタッフはすぐに近づいてきた。

「おー!真島くんじゃん。もう大丈夫なんか?」

「真島ちゃん、久しぶりね。怪我したんだって?大丈夫?」

「通り魔倒したんですって?すごいわねー。この間まで記者さんも来てたのよー」

「すんません。色々とご迷惑おかけしちゃって」


「いやいや、真島くんは高校生なのに働きすぎだったんだって。ちょっとくらい休んで学校生活楽しんだほうが良いんよ」

「そうよー。でも、おばちゃん、元気な顔が見れて嬉しいわあ」

「店長も心配してたんだから〜」

 バイトの先輩の男子大学生とパートのおばさまが2名。

 話を聞くとゲームショップの方も3名出ているらしい。


 とりあえず、自分が休んだことで迷惑をかけた事を謝ったが、みんなから問題なかったと言われた。

 安堵こそしたものの、…それはそれでちょっとだけ寂しい気もする。


「そういえば、店長は今日出てますか?」

「来てるわよ。新刊がたくさん届いたからシュリンク掛けしてるはずよ。漫画コーナーにいると思うわ」

「ありがとうございます。行ってみます。あ、それとこれ、ベイロードのケーキ屋さんのお菓子っす。迷惑かけちゃったお詫びってわけでもないんすけど、良かったら皆さんで摘んでください。後で店長に渡しとくんで」

「まあ、シュヴーのお菓子?わざわざ悪いわねえ。後でいただくわ〜」

「そんなの気にしなくていいのにぃ。でもありがとね〜」

「え?有名な店なんですか?」

「美味しいのよ〜」

「へー。わざわざありがとなー」

 やはりパートさんにも有名な店らしい。それを聞いた大学生もお礼を言ってくれた。


 3人に会釈をしてレジを離れた。


 店の奥に進んでいくと漫画・コミックコーナーが現れた。

 各出版社ごとに棚分けされた書籍が掲載雑誌ごとに分類されて陳列されている。


 その棚を抜けると、大きな台に積まれたコミック本とその横に置かれたシュリンカーと呼ばれる機械の間で、何か作業をしている男性の後ろ姿が見えた。


 本日入荷したのだろうか、たくさん積まれたコミック本一冊一冊に一枚ずつシートをかけてはシュリンカー上部の入口から投入している。

 シュリンカーにかけられたコミック本は、綺麗にビニールがかかった状態で下の出口から吐き出されてきた。


 シュリンク掛けと呼ばれる作業だ。

 立ち読み防止や、汚損破損防止のために行われることが多い。

 アキラもたまにこの作業をやっていた。



「てんちょー。お疲れ様でーす」

 後ろからアキラが小声で呼びかけると、男性が振り向いた。

 40代くらいのちょっと大柄な男性だ。


「おや、真島くん。お疲れ様。もう大丈夫なのかい?」

「あ、大体はオッケーっす。なんかホント色々とご迷惑をおかけしちゃったみたいですいませんでした」

「いやあ、心配したよー。そうだ、あと三冊やったらキリが良くなるんだ。ちょっと休憩取るから、バックヤードで待っててよ。シフトの事も相談したかったしね」

「了解っす。休憩スペースで待たせてもらいます」


 アキラはその場所を離れると、『従業員専用』と書かれた扉からバックヤードに入っていった。





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「いやー、それにしても最初ニュースで見た時はびっくりしたよ。北町のベイロードで通り魔が出たっていうので1回びっくりしてさ、通り魔を倒したのが真島くんて聞いて2回びっくり。で、入院したって聞いて3回びっくりしちゃったよ〜。でも大怪我じゃなくて良かったねえ。みんな心配したんだよ」

「もうご心配ばかりかけちゃって、すいませんでした。あの、これベイロードにあるケーキ屋さんのお菓子っす。ご迷惑おかけしたお詫びって訳でもないんすけど、皆さんで摘んでもらってください」


 アキラが紙袋から取り出した菓子折りを差し出すと、店長が呆れたように笑った。



「ホント、君は気にしすぎなんだって。わざわざこんなことしなくてもよかったのに…」

「でもさっき、レジのところで北島さんにも『店長に差し入れ渡しときます』って伝えたんで」

「それ、先に言ってよー。ここで持って帰ってなんて言ったら殺されちゃうよ」

 店長が困ったような顔をしたので、アキラはつい笑ってしまった。



「うわあ、すごい立派な菓子折り。高かったでしょう?ありがとね。ちゃんと張り紙しとかなきゃねえ。『真島くんからです!一人二つくらいまで好きなの食べてオッケー!』っと。これで良いかな?」

「旅行のお土産とかもそんな感じっすから、大丈夫じゃないっすか?」

 店長が早速休憩スペースの一角にお菓子の箱を開けると、その上に張り紙を貼っていた。



「じゃあ、シフトの件だね。7月はどんな感じなんだい?」

「7月の第1週が期末試験なんで、8日以降から入ろうと思ってます」

「ちょっと待ってね…。君が休んでる間に新人さんも入ってくれたから…。じゃあ後で今空いてるところをメールで送っておくから、これに希望する場所入れて送り返してくれるかな?」

「了解っす」

「シフトだけなら電話だけでも構わなかったのに、菓子折りまで持ってきて。律儀な子だよねえ」

「いや、記者さんの対応とか余計な手間増やしちゃったそうで、今日いないスタッフさんにもすいませんでしたと伝えてください。じゃあ、ちょっとこの後も用事あるんで失礼します」


 早速ノートパソコンで7月のシフト表をいじり始めた店長に挨拶をして立ち上がった。


「ちょっと待ってて〜」

 と、店長が裏の冷蔵庫からペットボトルのコーラを1本取り出してきた。


「ほら、そんなに謝るなよ、ヒーローくん。君がウチのスタッフで僕も嬉しいんだ。コイツはささやかなご褒美だ。休憩中にたまに飲んでただろ?持って行きなー」


 アキラは笑顔の店長からコーラを受け取って、バックヤードを後にした。


 レジで他のスタッフに声をかけ、店をでた。




 ハヤトの家に急ごう。



 思ったよりも長居してしまった。







*****************





オッサンズの後は、ケーキ屋さんとバイト先の本屋に行っただけで、こんなに掛かってしまった。

なんでスッキリと描けないのだろう。




またまた、御礼申し上げます。


相変わらずヒロインがほとんど出てこないのは、この際諦めてください。

出てきても電話だけって…。


でも読んでくれて、ありがとうございます。


怒られる前に、今回も謝っておきます。


?。


蛇足っぽいけど、なんでか書かないとダメなしょーぶんなモンで。

サーセン。

各キャラの行動スケジュールは合わせてるつもりなんですが、よく分からなくなってきました。

とりあえず、寝ればなんとかなる。



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すごく励みになっています!いや、ホントに。

なんとなくでも良いので、また押してくれると嬉しいかも。


この作品のラブコメ部門順位がどんどん上がっていってるのを見て「………はあ?」状態です。

ええんやろか。詐欺とか言われんやろか。



もしもこの作品を読んで「こんなところまで読んでしまった!」と思っていただけましたら、お手数ですがタイトルページ・レビュー欄、もしくは最新話の下にある『★で称える』の『プラスボタン』をポチッとしてもらえると、とても嬉しいです。


気が向いたらコメントとか残してくださいませ。

あの、気軽な気持ちで良いんで、レビューコメントとか書いていただけると、めっちゃ喜ぶかも。たぶん。


ラストまで楽しんでもらえるように頑張りますので、よろしくお願いします。

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