第28話
「そっか、そういう事情だったんだ」
「道理で神主様や巫女さんと親しいわけですね」
「ただの猫バカじゃなかったんだねー」
「真島さん…」
「あの子たちすっごい可愛いよねえ」
「白猫たちはすりすりしてくれて、少しなら抱っこもさせてくれましたね」
「黒猫ちゃんは背中以外を触ろうとすると、ペシってされた〜」
「真島くんが猫バカなのは否定しないよ。あと、シュラとマナは営業担当で、ヴァイは王様だからね。みんな素っ気ないと誰もオヤツくれなくなっちゃうから」
ナベちゃんが笑っている。
みんなにまた少し、笑顔が戻っていた。
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しばらくの間、須藤たちが清心組に猫たちのチャームポイントを説明していたが、いつしか話題は移り変わっていた。
「でもさー、真島のやつ、ぶっちゃけ勿体無いことしたよなー」
「…この美貌にこのないすばでー、これに抗えるとは、やつめ、ばけものか」
「やっぱそうだよね!?」
「ほら、サキってば!自信持ちなさいよ」
「姫ちゃんに誘われたら、大概の男どもはケモノになるぞー」
「べ、別にケモノになって欲しかったわけじゃなかったんだけど…」
女性陣が何か話している。
「やっぱり、いきなり素敵な異性に告白されるっていうのは憧れのシチュエーションなの?」
ナベちゃんが尋ねた。
「どうかな?相手によるかも」
「全く知らない人相手だと、いくらイケメンでもちょっと怖いかも〜」
「…無理です」
「よっぽどカッコ良かったらついてっちゃうかも〜。HAYATO様!私、どう?」
「ゴメンナサイ」
「即答された〜」
「葉月はすぐにそういうことを言うから…」
「あたし…無理かな。好きな人いるし…」
「おおー、カンナ、攻めろっ!」
「今じゃないと思うよ〜」
「初対面だと相手の情報が分からないから、判断つかないよねー」
色々な意見があるようだ。
「僕はライトノベルや漫画が好きでよく読むんだ」
ナベちゃんが話し始めた。
「一般人がいきなり見知らぬ美女に告白されるってシチュエーションは結構あるし、正直羨ましいなあって感じることもあったけど、これって男女を逆転すると怖いなあって思うシーンがあるんだよね」
「どんなのがあるの?」
「男子高校生が一人暮らししているところに、急に転がり込んでくる謎の美女。しかも許嫁を名乗っている。とか」
「逆だと…女子高生が一人暮らししていたら、急に許嫁を名乗る野郎が転がり込んでくるのね…」
「イケメンに限りオッケ?」
「いやあ、借金とか持ってそうじゃない?」
「あー定職についてなさそう」
「そもそもまともに働いてたら、女子高生に絡みに行かないだろー」
「ただしイケメンに限る。も、状況次第だからなー」
「じゃあ、昔助けたって男性が急に現れて、結婚してほしいって言われたら?ただし、自分はそんな気はなかったし、なんならその人の顔もしっかり見てなくて覚えてなかった。だけど、相手はすごく人気があるアイドルみたいで、これを無下に断ると周りから大きな反発を受けること必至ってシチュ」
「!!!」
「健太くん、ごめん。わかったから、勘弁してあげて」
「参りました」
岸田がちょっとだけ不満そうな顔をした。
「でもさー、ぶっちゃけ合コンとかだったらチョーうれしー状況じゃん」
「合コンだったらな。あれは合コンじゃねえぞ」
「あたしは清心の女子と合コンするつもりで行った!」
「お前の話は聞いてねえよ」
「真島くんのことだから、美人さんからチーズケーキもらって『Happy Cat』みたくハッピーハッピー言ってるところに、至近距離からバズーカぶち込まれて、『………はあ?』の猫ミーム状態だったんだと思うよ」
「真島は基本がアホだからな〜」
「そういえば、真島くんの動画でそんな感じのもあったよねー」
「ゲームのキャラになってるやつとか見たわ」
「あの動画、やっぱり差し止めてもらうべきだったかな…」
ハヤトがポツリとつぶやいた。
「あ、そうだよ。ハヤトくんの事務所は何も言わなかったの?」
岸田が尋ねた。
「オレの顔はともかくアキラの顔が思いっきり出ていたことについて、ちゃんと相談したよ」
「それで?」
「映像見るとわかるけど、顔の左側をタオルで押さえているから、普通にその辺で見かけても動画の人物と同じかわからないと思う。という見解だった。ただ、ごく少数だけど、アキラがカッコイイとかっていう変なヤツもいたから、ヤバい事件に繋がっても困るし、動画について説明しに真島家に行ったよ。ウチの顧問にも足を運んでもらってね」
「真島さんは素敵だと思いますけど…」
「まあ、人の趣味は色々だしね…」
「
「タデって何?」
「お店でお刺身とか頼むとシソの葉っぱとか菊の花とか飾ってあることあるでしょ?その時に一緒に置いてある赤紫色のちっちゃいハーブ」
「あれって食べれるの?」
「シソも菊の花びらも食べられるし、蓼もちゃんと食べられるハーブよ」
へーっとみんなで頷いたところで、ハヤトが首を傾げた。
「で、なんだったっけ?」
「真島さんのご両親に動画について説明に行かれた件です」
「あ、そうそう。動画を見せて説明したよ。ファンだけじゃなくてストーカーが出来てしまう可能性があること。コメント欄に書かれているような悪意ある中傷が今後も増える可能性が高いこと。勝手に動画を投稿されているので、肖像権の侵害として訴訟を起こせば勝訴できそうなこと。その際にはウチの事務所で協力できること。色々話をさせてもらったよ」
「ご家族はどう判断されたんですか?」
「色々考えていたけど、最終的にはアキラの判断に任せることになった」
「真島さんの見解は、どうだったんですか?」
水川さんの問いかけにハヤトがため息を吐いた。
「『ウケる!これって完全にお前の宣伝動画じゃん!事務所的には結構美味しい感じじゃないんすか』って言われたよ。オレも顧問も、ちょっと言葉を失った。顧問が話題性はあるので、一応の宣伝効果は見込めますって答えたら、『じゃあ、別にそのままで構いません』って言いやがった。それで、真島の親父さんたちもアキラがそれで良いなら、特に法的な措置などは取りませんという話になった」
「それは、つまり」
「オレの露出を増やそうとしたんだと思う。オレに「気を遣って俺がそんなこと言ってたと思ったん?アホか!恥ずかしー!違うっつーの!」
みんなが振り向くと、アキラが個室のドアを開けて立っていた。
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