第24話
翌朝、シャワーを浴び、母親がラップをかけてくれていた昨晩の夕食のトンカツをレンジで温め直して朝食を済ませた。
歯を磨いて髪型を整え、制服に着替えて財布とスマホとリュックを持ち、自宅を出る。
住宅街を抜けいつものバス停に着くと、珍しい姿がそこにあった。
ハヤトだ。
「お、おはー」
「うっす。ハヤトじゃん。こんなところでどうしたんだよ。自転車パクられたか?」
「いや、そうじゃないんだけど…。大丈夫か?」
「え、何が?」
「だ、大丈夫なら良いんだ。じゃ、じゃー行きますかー」
ちょうどバスが来たので乗り込み、ハヤトと横並びに座った。
「昨日、楽しかったなー」
「あ、ああ」
「川口さんの親戚がやってるっていうお店のケーキ美味かったなー」
「…そうだな」
「あ、そうだ。昨日、俺なんか疲れてたみたいでさー。社務所の和室で寝てたんだよ。ヴァイが叩いて起こしてくれてさあ、気がついたら、もう結構暗くなってて」
「すまん。オレとナベちゃん、ちょっと先に帰ったから」
「うん?だってお前ら自転車だし、別に問題ないじゃん」
「いや、そうなんだけど、そうじゃなくて…」
「清心の子たちはチャンと帰れたんかなー」
「多分問題ないと思うぞ。ほのかっちとカンナっちが一緒だったし」
「家帰ってからもなんか疲れてて爆睡しちゃって、よく覚えてないんだよなー。俺、あの子たちにちゃんとお礼言ってた?」
「大丈夫。お前はちゃんとしてた。立派だった。ほら、YouTubeで猫動画見つけたんだ。一緒に見ながら学校行こうぜ」
「おー、かわいーなー」
坂ノ上高校の最寄りのバス停で降りてからも、ハヤトと一緒に話しながら登校した。
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昼休みの教室で、菓子パンで昼食を済ませたアキラが課題に取り組んでいる。
が、もう補習授業は済んでいるはずだ。
「真島くん…、何やってるの?」
「ナベちゃん、お疲れー。ちょっと勉強〜」
「ああ…、うん。わかった。今日さ、放課後ウチのサークルに遊びにきなよ」
「おー、良いねー」
「じゃあ、放課後にね」
「ウッスー」
アキラがシャーペンを持った手をナベちゃんに振った。
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ハヤトとナベちゃんが須藤と岸田を呼び出して説教をしている。
「お前ら、アキラに何した」
「流石に真島くんの様子がおかしいよ」
「いやあ、ちょっとねえ」
「あたしらも少しだけやり過ぎたかもしれないなーなんて反省してるんよ?」
「あいつ、昨日の記憶、飛んでるぞ」
「え゛?」
「マジ?」
ハヤトがブチ切れた。
「お前ら、意味わかんねー。なんで礼を言われに呼び出された人間がボロボロにされてるんだよ。お前らだけじゃなくて昨日の清心の女どもも呼び出せ。週末空けろ。全員でアキラに詫び入れろ」
「…僕もちょっと、須藤さんにはガッカリしたよ」
「ごめん!」
「け、健太くん…」
「いいな。今日の放課後までに向こうと話をまとめろ。何があってもだ。この前の南口の喫茶店に個室をとっておく。明日、土曜の11時に集合。わかったな」
「あ゛い゛」
「げん゛だぐん゛、ごめ゛ん゛…」
「謝る相手が違うと思うよ。じゃあ、明日ね」
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昼休みが終わったのだが、隣の席の須藤が戻ってこない。
ハヤトに尋ねると体調不良で帰宅したらしい。
午前中は普通だったし、むしろ何かと俺の事を気にかけていたのに、自分の方が具合が良くなかったのか。
この間入院していた時見舞いに来てくれたし、5限の数学Ⅱと6限の物理のノートはコピーして週明けに渡してやろう。
放課後、ナベちゃんの所属する『e-sports研究会』にお邪魔した。
普段は『FPS』や『TPS』などのシューターゲームや『MOBA』(Multiplayer Online Battle Aren)ゲームをプレイすることが多いらしいのだけれど、なぜか『ぷよぷよ』や『桃鉄』をサークルのみんなとプレイした。
久しぶりに大人数でゲームをプレイしたので、ちょっと小学校時代を思い出して楽しかった。
それと、以前約束したベイロードのゲーセンに明日ナベちゃんと行って、スト6で対戦することになった。
お昼に駅前集合なので、遊んだ後にバイト先に持って行く菓子折りを買いに行こう。ナベちゃんが行ったことがあると言っていた気がするので、ついでに店まで案内を頼んでみよう。
夜、ハヤトからメッセージが届いた。
YMBの担当の人から連絡があって来週の水曜日に自宅に自転車を届けてくれるそうだ。
母親に受け取りとロックをお願いしておこう。
盗まれたりしたら洒落にならないし、ハヤトはじめ関係各位に迷惑をかけてしまう。
母上様に頼んだら少し面倒そうにしていたが、なんとかオッケーしてもらった。こういう時、父さんが口添えしてくれると話がスムーズに進むので助かる。
朝10時に病院で検査の予約があるので、少し早い時間だけどもう寝よう。そろそろ病院での治療も終わりでいいだろうとじいちゃんセンセーが言っていた。明日がラストだと良いんだが。
身体が治る時は睡眠を必要とするからやたら眠たくなる。と聞いたことがある。やたらと疲れているのはそのせいだろうか。
ベッドに寝転んでそんなことを考えていると、意識が枕に溶けていった。
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