第3話
……………PiPi……PiPi……PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi
枕元に置かれたスマホからアラームが鳴り響いている。
ベッドの住人は頭まで布団をかぶって眠りについているようだ。
と、這い出てきた手が鳴り止まないスマホをつかみ、布団に引き摺り込んだ。
アラームを止めるため画面をスワイプしたが、指の位置が全然あっていないので一向に止まらない。
「…う……うぅ………うるせー!」
Tシャツ・ハーフパンツ姿の青年が布団を跳ね除けて起き上がり、画面をいじるとやっと音が止まった。
「…マジかよ…もう朝かぁ」
絶望した表情の青年はそのままパタリとベッドに倒れ込んだ。
スマホのロックを解除すると、登録しているサイトの新着情報やニュース・お天気情報の更新通知がきていた。
青年の名は真島アキラ。
16歳の高校2年生である。
とりあえず、今日の天気は晴れらしい。
最高気温は18度。薄着だと少し肌寒く感じるかもしれない。
眠い目を擦りつついくつかのサイトを見た後、スマホゲームのログインボーナスを受け取る。
友人から勧められたゲームで特に愛着はないが、惰性で続けている。
いや、イベントガチャに課金・爆死している友人の横で、配布ダイヤのみでキャラをブチ抜くのが快感ではあるのだが。
10分ほどベッドでダラダラしていると、ピコン♪という音とともに一件のメッセージが表示された。
『北口ロータリー』
青年はあくびをするとメッセージを返信した。
『OK』
改めて時計を見ると7時を過ぎている。
「飯食ってガッコ行くかぁ」
ベッドから立ち上がり部屋を出て1階に降りる。
階段を降りるとスーツ姿の男性が玄関で革靴を履いていた。
アキラの父、真島正明だ。
正明がアキラに気づき声をかけた。
「お、アキラ。おはようさん」
「あ、オハヨーっす」
「今日はちゃんと起きてるんだな」
「いつもちゃんと起きてるって。遅刻もしてねーし」
「それなら良いが……、最近交通事故が多いようだから、お前も事故らないように気をつけろよ?」
「わかったよ…いってらっしゃい」
「おお、それじゃあな」
正明は軽く片手を上げるとドアを開けて出勤していった。
「交通事故ねぇ…」
アキラは一言呟くと洗面所に入っていった。
=============
顔を洗い歯を磨いたアキラがダイニングに入ると、テーブルに朝食が用意されていた。
ご飯と味噌汁、目玉焼きにウィンナー、それに納豆のパックが置いてある。
隣のリビングでテレビを見ているのが母親の真島陽子だ。
朝っぱらから芸能人の結婚のニュースに釘付けになっている。
「オハヨーっす」
「おはようございます、でしょ。全くあんたは…。お味噌汁冷めちゃうわよ。とっと食べて学校行きなさい」
「へいへい…すんません…」
ダイニングテーブルの椅子に座り箸を持つと、手を合わせた。
「いただきます」
一口味噌汁を飲んでから、ご飯やおかずに手をつけていく。
今日は納豆の気分ではない。
後で冷蔵庫に戻しておこう。
ソファに座る陽子の頭越しにテレビを眺めていると星占いのコーナーが流れていた。
11位からカウントアップしていったランキングは、残すところ1位と12位のみになっている。
蠍座の陽子は1位だったらしい。
なんだか機嫌が良さそうだ。
わざわざこちらに振り向いた。
「思わぬ幸運が訪れるでしょう、ですって!宝くじでも買いに行こうかしら」
アキラの双子座はというと残念ながら12位だった。
人気だという女性アナウンサーが笑っている。
『双子座のあなたはごめんなさい〜今日はアクシデントに注意して!ラッキーアイテムは赤いシャツです!』
「あら、あんた双子座よね。せっかくだから白ワイシャツじゃなくて赤シャツ着ていけば?」
陽子が笑っている。
「流石にうちの高校でも赤シャツ着てったら怒られるわ。っと、ご馳走さん」
「食器は水につけておいてね〜」
母の軽口に付き合っていると遅刻しかねない。アキラはさっさと食事を済ませると流し台に食器を片付けた。
結局手をつけなかったパック納豆は冷蔵庫に突っ込んでおいた。
自室に戻ったアキラは制服に着替えた。白ワイシャツに紺のブレザー、グレーのチェックパンツ姿だ。
財布とスマホをポケットにしまい、ノースフェイスのリュックを手に持って部屋を出る。
あとは歯を磨いて身だしなみを整えれば良いだろう。
洗面台でワックスを使い髪型を整えていると、後ろの廊下を陽子が通り過ぎた。
一度通り過ぎた陽子が戻ってきてアキラに声をかけた。
「そういえばあんたの自転車キィキィいってちょっと五月蝿いから自転車屋さんで診てもらいなさいよ」
「ん?ああ…。この間からちょっとブレーキが調子悪いんだよ…。今日の帰りにでも南口の自転車屋行ってくるわ」
「あの自転車も結構乗ってるもんねぇ」
「…母上様、せっかくなので電動アシスト自転車とかに買い替えとか、どうっすか?」
「自分でお金出すなら良いわよ」
「マジかよ…。15万くらいするから無理だって…」
「バイト頑張んなさいよ。じゃあ行ってらっしゃい」
ケラケラ笑いながらリビングに立ち去る陽子を見送ったアキラはリュックを肩に掛けると自宅を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます