第3話 「結晶」と「宝珠」



「うわああああぁああああぁあ!!??」




・・・・ビビった。

・・・・すっげービビった。





てか、途中から夢ってわかってたのに、わかってたはずなのに!

まさかこの歳で、母親の昔話の夢で驚かされるとは・・・・っ

なんで夢ってのはこう、抵抗力がなくなるっていうか、素直に受け入れてしまうんだろ?


・・・あっ



「・・・パンツ、だい・じょ・う・・・・ぶ、だな、ヨシ。」



まさか18にもなってオネショなんかしてたら、シャレにならん。

幼馴染のカティナに見つかった日にはどんなことになるや


「おーい! サーガー!起っきろー! 今日はお城に行く日だ、よ・・・・?」


「バッカ、ノックぐらいしろぉーーーーー!?」


「・・・あんた朝から何してたの?まさかそのトシで・・・」


「オネショなんかしてないぞ?」


「じゃあまさかアッチ・・・?まあ仕方ないよね、思春・・・」


「そっから先は女の子が言うもんじゃありませんっ!」


「冗談よ。さっさと朝ごはん食べてお城に行くわよ?」


「わかったから閉めろよ・・・」




そうだった。今日は「宝珠オーブの儀」だったか・・・






────────────────────




この世界は、「精霊」と共存している。というか、力を借りて人間は生活している。

とは言え、借りれる力は大したものではない。


火を熾すとか、水をまくとか、風を吹かせるとか、食べ物の毒のあるなしの鑑定をしてもらうとか、生活の手助けをしてもらうようなものがほとんどである。

精霊は「結晶」に宿っていて、精霊に「願う」ことで誰でも力を借りることができる。


ただし、極稀に、同調率が高い精霊と人間の組み合わせが見られたときには、もっと強い力が現れるときがある。


例えば魔物と戦ったりできるくらいの力が。

例えば対人間の戦いを有利に進めることができる力が。

例えば人々から搾取することができる力が。


残念ながら、「超常の力」というのはいつの時代でもどこの世界でも、武力として使われ、国家に利用される。そうでなければ・・・良くて厄介払い、悪けりゃ死ぬまで狙われる。どうにも「権力者」っていうのは、一度手にした「権力」を手放すことが難しいらしい。


とはいえ、手に入れた「戦力」をむざむざ手放すのもバカバカしい。何しろ「超常の力」を発現できる人間は、そうそういない。だったら様々な権利や特典を与えて地位を保証してやった方が、なにかと都合がいい。こぞって反逆されれば、対抗する手段は無いに等しい。そんなわけで、精霊と同調力が高い人間は「精霊士エレメンツ」と呼ばれ重用されている。




そして、もう一つ重要なものがある。


それが「宝珠オーブ」だ。


発見された「宝珠オーブ」は、各国家の監視の下、厳重に管理されている。

なぜなら、発現した時の力が「結晶」の比ではないからだ。

「宝珠」の力を引き出せた者は、崇敬と畏怖を込めて

宝珠の騎士ナイト・オブ・ローブ」と呼ばれ、国家の中枢を担うことになる。


ただし、「宝珠オーブの精霊」は滅多なことでは人間に力を貸さない。そして「宝珠」の力は、王族だろうと貴族だろうと発現するとは限らない。対象はあくまでも「波長が合うか合わないか」だからだ。歴史が始まって以来、「力を発現できた」という記録・伝承は、本当に稀である。



・・・ただし、あくまでも「記録上」は、である。



各国家としても全てを詳らかにしているわけではない。

未だに他国に対し秘匿されているものもあるからだ。



しかし、ここ「ナイン王国」では、毎年18歳になる若者に、「宝珠の儀」を受けさせるのが国全体の習わしとなっている。



それが、最初の王となった人物と「宝珠」が交わした「契約」故。


今の王が、とある「精霊士」と交わした「約束」故。








───────────────────





(・・・聞こえるか・・・)



(・・・聞こえるか 選ばれしものよ・・・)





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る