瑠衣 side ② 前編
瑠衣 side ② 前編
夕ご飯を終えた私は、自室にある自分用のパソコンを起動させて『オンラインゲーム』にログインをした。
ライジン。と言うゲームを私は数年前からやっている。ガチャの無いゲーム性もあって、無課金でも楽しく遊べている。
ただまぁ、最近は『課金』をしてもいいかなぁなんて思ったりもしてる。
理由としては、課金をしてる人との『火力の差』を痛感することが多いからだ。
無課金でも楽しく遊べる。
でもお金を使った方がもっと強くなれる。
無理の無い範囲で課金してもいいんじゃないかなぁ……
何て最近は思うことが多い。
そう思っていると、私の『パートナー』がログインをした。
『よう!!サトルもログインしてたんだな!!』
『サトル』と言うのは私の『ハンドルネーム』。
三郷瑠衣。の真ん中の部分を抜いて作った物だ。
名前からもわかるように、私はゲームの中では『男』として振舞っている。
理由は『女』だとわかると『変な奴』に絡まれることが多いと聞いたから。
現実でも変な男に絡まれることが多いから、ゲームでくらいはそういう煩わしさから解放されたい。
私はそう思って、アバターを男にしてプレイをしてる。
そのおかげもあって、変な男に絡まれたことは今までで一度も無い。
『やっほー!!ここでミナミを待ってたんだよね!!』
私はチャットを使って、パートナーの『祐也先輩』にメッセージを送った。
『ミナミ』と言う名前のアバターで、可愛い女の子の姿をしてる。
先輩は『ネカマ』をしてる訳では無いけど、趣味で女の子のアバターを使ってるみたい。
向こうはこっちに気が付いて無いみたいだけど、流石に私はわかってしまった。
そもそも『ミナミ』って名前で二つ上の男の人。
聞けば聞くほど先輩と同じ話が出てくる。
これでわからないのはどうかしてるでしょ……
私も結構『リアルの話』を先輩にしてるつもり。
実家で人員不足が起きてる話とかもしたんだけど、全然気が付かなかったみたい。
まぁ、気が付かれて変に関係がギクシャクするよりはいいかも知れないけど。
『結婚』というシステムが施行されたこともあって、私は元からゲームの中で一番仲の良かった先輩と結婚することになった。
男のアバターと女のアバターでパートナーになる機能だ。この結婚をするとパートナーと一緒にクエストに挑んだ時に、性能が上がったり、特定のダンジョンに挑めるようになったりもする。
先輩は男と男で結婚した。
なんて思ってるだろうけどね。
こうして先輩と一緒にゲームを楽しんでいると、時間があっという間に過ぎ去って行った。
『あーあ。楽しい時間はあっという間だなぁ』
『あはは。そうだね。僕も楽しかったよミナミ』
ダンジョンのボスを倒した私と先輩。
『課金による火力の差』をまたしても見せ付けられる結果になった。
先輩の『プレイヤースキル』もあると思うけど、やっぱり羨ましいよね。
時間にして二時間くらいかな?
二人で一つのダンジョンをアイテム目的で『周回』をした。
『倍書』と言われるアイテムや経験値を二倍にするアイテムを使ってスピード重視でダンジョン攻略を繰り返した。
単純作業。とも言えるかもしれないけど、先輩の言うように、楽しい作業だったと思うかな。
『そう言えばサトル。聞いてくれよ』
『ん?どうしたのミナミ??』
倍書の効果が切れたタイミングで、先輩が私に話しかけてきた。
これまではいつもはやってる日常会話をする時間すら削ってダンジョン攻略をしてたからね。
『今日。初めてのアルバイトをしたんだよ!!』
あはは……本当に。
こんな話を何回も聞かされるんだから、普通に気が付くよね……
『そうなんだ!!それで、どうだったの?』
『色々大変なことはあったけど、何とか出来たと思ってるよ』
そうだよね。先輩のおかげで『厄介なクレーマー』は来なくなったし。
先輩の働きぶりは、アルバイト初日とは思えないくらいにしっかりしてた。
とても助かったよね。
『明日もアルバイトだからな。今日も早めに寝ようかな』
『そうだね。明日に響いたら大変だからね』
これは私にも言えること。
すると、先輩が『少し気になること』を言ってきた。
『明日はアルバイトが終わったあとに、ちょっと予定があってね。いつもは可愛い後輩に勉強を教えてるんだけど、明日だけはキャンセルしようと思ってるんだよね』
『…………え?』
…………え?そんな話し聞いて無いよ。
いや、今の先輩の話し方だと『私にはまだ伝えてない』って感じかな。
『そうなんだ。ミナミの予定を聞いてもいいかな?』
気になった私は、少し反則だと思うけど先輩に予定を聞いてみた。
すると、本当に『ネットリテラシー』の無い先輩は話をしてくれた。
『クラスメイトの女の子と俺の妹がちょっと話をすることになってね。その場に俺も参加することになってるんだよね』
なるほど。七瀬先輩と結花が直接話しをするのね。
七瀬先輩が結花に電話をして『一方的にやり込めた』って話は聞いてる。
プライドの高い結花だし、七瀬先輩を『敵』として認定してるはず。
敵の姿を見るために、その場を先輩に用意してもらったのかな。
そして、先輩は二人きりにしないためにその場に立ち会うことにした。
そんな感じかな?
『そうなんだ。じゃあその後輩にはきちんと理由を話してあげないとね』
『もちろんだよ。ただ今日はもう遅いから、明日の朝にでも話そうと思ってるよ』
そっか。先輩の声で『おやすみ』って言って欲しかったんだけどなぁ……
こうして先輩とゲームの中でお別れをした私。
軽く伸びをしながらゲームの疲れを取ってると、私のスマホが着信を告げてきた。
「祐也先輩?いや、違う。先輩は今日はもう私に連絡しないって言ってたし。七瀬先輩が明日のことで聞きたいこととか出来たのかな??」
そんなことを呟きながら私がスマホを手に取ると、そこには
『南 結花』
と名前が映し出されていた。
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