美琴 side②

 

 美琴 side②



 夏休みの初日。私は例年と同じように宿題を進めていっていたわ。


 たくさんある宿題は七月中に終わらせておけば、八月いっぱい自由に使えるからよ。


 ただでさえ今年の夏休みは自分の中では『とても大切』だと思っているわ。

 山野先生の言っていたように、高校二年の夏休みをどう過ごすかが将来に繋がるからよ。


 朝はいつも通りの時間に起きた私は、家の周りをかるく散歩をしたあとにシャワーを浴びる。

 家族三人で朝食を食べあとに、私は自室で宿題を始めたわ。


 それと室内でも熱中症になると聞いてるわ。

 私はエアコンの効いた部屋で、しっかりと水分と塩分を摂っていったわ。


 そして、お昼を回った頃、お母さんと一緒に昼ごはんを食べたわ。


 食器洗いを手伝ったあとは趣味の読書を楽しんだわ。

『ライトノベル』

 と呼ばれる簡単に読める小説を読むのが好きなのよ。

 特に好きなジャンルは『学園ラブコメ』ね。


 区切りの良い所まで読んだら、また宿題を再開したわ。

 気分転換も出来て、しっかりと宿題を進めることが出来たわ。


 そうしていると、今日のノルマにしていたところまで宿題を進めた所で時間は夕方になっていたわ。


「……ふぅ。とりあえず今日は予定通りに過ごせたわね」


 机の上にペンを置いて、椅子の背もたれに体重をかけながら私は軽く息を吐いたわ。


 そして、私は机の端に置いてあるスマホを手に取り、電源を入れて中を確認したわ。

 まぁ、やっぱりと言うか、予想通りと言うか、誰からの連絡も無かったわ。


「……うーん。南くんから簡単な話でもされるかと思ってたけど、そんなことは無かったわね」


 彼と連絡先を交換した日。

 私はその夜に

『今後もよろしくね!!』

 とメッセージを送ったわ。


 それに対して南くんからは

『はい。了解です。こちらこそよろしくお願いします』

 と返って来たわ。


 ま、まぁ……今の私と彼の仲ならこんなもんよね……


 そして、トークアプリはそれからうんともすんとも言わずに今に至る。という訳ね。


「な、何だかこのまま何もしなければ、この状態から一個も進まずに夏休みが終わる気がするわ」


 待ってるのは私らしくない。

 こっちから連絡しようと決めたけど、ちょっと様子を見てしまった感はあるわ。

 やっぱりこっちから動かないと何も始まりそうにないわね。


「とりあえず、いきなり電話をするのは失礼よね。まずはメッセージを送って電話をしていい時間を聞くことにするわ」


 そう決めた私は、トークアプリに登録してある南くんの連絡先にメッセージを送ったわ。


『こんにちは、南くん。夏休みの初日はどう過ごしたかしら?私は例年通りに宿題を進めていったわ。それで本題だけど、もし良かったら南くんと少し話したいと思っているの。貴方の都合の良い時間を教えてくれると嬉しいわ。返事を待ってるわね』


「ふふふ。私から男の子にメッセージを送るなんて初めてよ。さて、どんな返事が返ってくるか楽しみね」


 そう思っていると、メッセージに対して『既読』のマークがついたのを確認したわ。

 これはつまり、私のメッセージを南くんが目にした事を意味するわ。


 私の身体に少しだけ緊張が走ったのを感じたわ。


「き、既読スルーだけはして欲しくないとは思うわね……」


 何だか『恋する乙女』みたいな思考回路をしてるわ。

 でも、嫌いじゃないわね、この感覚は。


 そして、少しすると彼から返事のメッセージが来たわ。


『こんにちは、七瀬さん。連絡ありがとう。七瀬さんが夏休みの初日から宿題を進めるのは、なんて言うかイメージ通りな気がしたね。俺はこの夏休みはアルバイトをしてみようと思っててね。その面接に行ってたよ。無事に面接に受かったからほっとしたよ。ちなみに電話していい時間だけど、今なら時間的に平気だよ』


「あら、アルバイトをしようと思ってるのね。これは良いことを聞いたわ」


 何を話せば良いかな?と思ってたところだったけど、いい話題が出来たわ。

 あとはそうね、ちょっと彼と親睦を深めたいと思ってたから、八月に入ったあたりにでも遊びに行こうとも思ってるわ。

 彼がアルバイトをしてるなら、シフトに被らない日にしないといけないわね。


 ふふふ。あとはそうね、彼が許可をくれるなら働いている姿を見に行くのも楽しそうね。


 そして、私はトークアプリで南くんに


『ありがとう、南くん。それじゃあ今から電話するわね。色々と聞いておきたいことがあるから、教えてちょうだい』


 と返事を打ったわ。


『わかった。俺に答えられることなら答えるよ。それじゃあ七瀬さんからの電話を待ってるね』


「……よし。それじゃあ南くんに電話をするわよ」


 こうして私は『少しだけど気になっている男の子』

 に対して、初めての電話をかけたわ。

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