第58話 砦陥落
少し時間は戻り、中央の砦。
三秦の司令官であるレッサーパンダは、昼食後の政務の真っ最中だった。
「報告します、北の砦が現在イワイと交戦状態に張った模様」
司令官はその報告を受けて考え事を始める。
「報告します、本土より援軍500が到着しました」
500?意外と少ないな。
司令官は考えながら、援軍の指揮官を通す。
「初めまして、指揮官殿」
狐の援軍指揮官は丁寧に挨拶をする。
「狐殿が援軍か…もう少し兵が来ると思っておりましたが」
思惑と少し違い、少しがっかりする司令官に、狐は話を進める。
「大王様も、こちらの兵2000で十分に対応できるとのお考えなのでしょう」
「どうやらウサギ共は南から攻め入るようですので」
「その話は本当か?」
この言葉を唱えた直後に、新たな伝令が入る。
「報告します」
「現在、南の砦よりラビット王国の攻撃が始まったとの事」
「敵兵の数5000程度いるとの情報から、あちらが主力と思われます」
わかったと話し、司令官は狐に向き直る。
「どうやらウサギ共は、南から渡河しての攻撃を行うようですな」
「此方にも明日には援軍6000が参ります」
狐の言葉に、司令官はほっと胸をなでおろす。
「狐殿、先の援軍で不満を言って申し訳なかった」
お詫びにと司令官は、砦に入った狐の援軍の20人を含め宴会を開いた。
少し酒が回ったのか、司令官はレッドキャップについて語り始める。
「あの方は我々をあまり信用してはいないのだ」
「狐殿もわかるだろうが、大王が大事にするのは古参の者ばかり」
「途中で投降した三秦の我々はあまりよく思われていない」
司令官に対して狐も相槌を打つ。
「まったくです」
「私も幾度となく功績をあげたのですが」
「自身が狐ということで信用してもらえません」
「私と司令官殿は似た者同士でございますな」
狐のその言葉に司令官は寂しく微笑む。
やがて、会場にいる司令官たちが皆眠りに入ってしまう。
狐は皆を縛り上げ、そのまま結界を張る魔石の部屋へと向かう。
そこに魔石を守る魔族たちが、狐たちの侵入を拒む。
「ここから先は誰であろうと入ることは許されぬ!」
そう話し終えようとする前に、後ろの20人の百地の部下が一斉に斬りかかる。
「この反逆者共めが!」
抜刀や呪文を唱えようとする魔族の兵50名。
しかし、忍者衆の速さに全くついていけない。
壁や天井を所狭しと走り回り、羽を出し飛びながらクナイや炸裂弾を次々と投げ込んでくる。
このような戦い方をしてくる敵と戦ったことがない魔族の兵は混乱の極みに陥った。
剣や槍を持ったまま狼狽えるものや、何もない空間や味方に攻撃魔法を打ち込む始末。
そのまま2分ほどで、魔族兵は皆動かなくなった。
下階の異常に気づいた魔族兵が、慌てて魔石の部屋に戻り扉を閉じようとするが、天井を走ってきた百地にあっさりと斬り捨てられた。
そのまま部屋になだれ込んだ狐たちは、炸裂玉を使い、魔石を見事爆破する。
この瞬間、レッドキャップ領を覆う結界は消滅した。
百地はすぐさま屋上に上がり、魔石破壊の花火を打ち上げる。
それを確認した数十人の兵団は、ゆっくりと入口の門へと向かう。
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