第51話 理想の国

応接室に座る7頭。


ピットを先頭に孔明・官兵衛・蒯通が座り、対面にイワイ・留侯・文終侯というイタチ、イワイにもうひとりの先

生と呼ばれるイタチが座った。


イワイはまず、孔明に問いかける。


「ナインテール…いや、今は諸葛亮・孔明殿でしたな」

「あなたは何故国をピット王にお渡ししたのですか?」


孔明は、さも当然のように答える。


「私が仕えたいと思った王が現れたのでそのようにしました」

「我が王ピットの下でわれら臣下が力を合わせれば、必ずや良い国が作れると考えたからです」


孔明ほどの人物が、此処まで王を信頼していることにイワイは愕然とする。


先生と呼ばれるイタチが質問する。


「では、ピット様はどのような国を目指しているのですか?」


ピットは孔明と官兵衛に目をやる。


孔明は静かに頷くと、ピットは話始める。


「私は『ウサギとして』この世界に生まれて半年ほど経ちます」


ウサギとして?皆の頭に疑問符が浮かぶ。


「つまり、私も同じく『転生者』のようです」


この発言に、2人以外は驚きを隠せない。


「そして私には、イワイ殿の方たちと同じく、前世の記憶がほとんどありません」


「皆の話をしていると、自分はいったい何者なのかと考えることはあります」


うん、これ少し前に夢枕で相談受けていたんだよな。

全部じゃないけど、なんかチョコチョコ知っている言葉や内容があるって。

まぁ、知らない単語とか理解していたし、ピット自身も転生者だろうとは思っていたみたいけどね。

一応ピットには俺知っていますけど今は言えないよ?みたいなこと言っておいた。

俺神様だけど、その辺含めて何も知らないんで…


ただ、転生者=名前が変更できないじゃないみたいだった。

ピットに確認してもらったけど、ボウイやツキノも前世があったように感じているみたい。

どうせ今考えてもわからないし、実例が増えてくれば答えがわかるかもしれない。

その時きっと未来の俺が何とかするだろう。

こうして俺は、得意の問題の先送りを行った。


「先ほど質問された、『どの様な国を目指している』ですが」

「私は望むのは、皆が笑って楽しく暮らせる国です」


「ほう、どうやってですか?」


「みんなが笑って楽しく暮らすためには、ちゃんとした生活基盤が必要です」

「だから私たちは、街の整備を行い」

「転生した人たちの様々な意見を取り入れて、食料や住宅などの問題を解決し」

「いつ敵が攻めてきても対応できるように、兵を整え訓練を行っております」

「また荷車の往来がおこないやすいよう、街の外の領地内も道路を整備しております

「特に、エルフの国との貿易がおこないやすくなるよう、家臣に道の整備を急がせております」


フムフムと先生は答える。


「そして近い将来的、イワイ殿が治める淮陰」

「そして、レッドキャップが治める咸陽とも道を繋ぎたいと考えています」


「レッドキャプの領地ともですか!」


驚くイワイ。


「はい、レッドキャップに勝利した後に出来ればと考えております」

「その方が、この後戦うことになるであろう『宋国』や『秦国』相手にも、素早く連携して戦えます」


「これは…我々はレッドキャップとどう戦うかを考えているとき、ピット殿は戦後のことを考えておられる」

「それに引き換え、私はいつまで前世の呪いに悩まされ続けるつもりなのか…」


過去にとらわれ恥じるイワイを横目に先生はピットに礼を取る。


「どうして皆ピット殿の下に集うのかよくわかりました」

「なるほど、理想を実現するために臣下の言葉を信じ実行する」

「かつて『大元帥』と言われていた昔の主を思い出しました」


その言葉を聞き、蒯通も立ち上がる。


「イワイ…いや、淮陰候・韓信様!」

「かつてあなたを切り捨てた漢王・劉邦はここにおりませぬ!」

「次はあなたが新しい王になり、我々の主となってください!」

「そして、ピット王と共にレッドキャップを倒しましょう!」


イワイの家臣3頭と蒯通は改めてイワイに共闘を願い出た。


目を瞑るイワイ。


そして決断する。


「ピット殿、ここまでご足労をかけた挙句、時間をかけてすまなかった」

「私はあなたを信じ、同盟終結をお願いしたい」


席を立ち願い出るイワイにピットも席を立つ。


「ご決断ありがとうございます」

「共にレッドキャップを倒しましょう!」


ふたりはがっちりと握手をする。


ここに対レッドキャップの共闘は完成する。

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