第30話

 

 インベントリを持ってるチンカーヘルが、エリーを助ける旅に加わってくれて、本当に楽になった。


 大量にゲットしたオーク肉をどうしようかと思ってたけど、チンカーヘルが、インベントリに全て入れてくれた。

 そして、自由に光り輝く事が出来るから、夜はランタン代わりになってくれる。


 しかも、インベントリには色んな物がストックされており、特に料理器具と調味料をたらふく持ってたのだ。


 どうやって、手に入れたのか聞いたが、前回、人間の街に行った時に、全て拝借したのだとか。

 絶対にお金を払ってないと思うので、完全に泥棒である。


 自分では、プリティーな自分を捕まえる為に人間がチンカーヘルを捕まえようと追い掛けて来たと言ってたが、実際は、盗みを働いたチンカーヘルを捕まえようとしてただけと思われる。


 聖なる光の妖精が、盗みとか本当に終わってる。やはり、名前通り、水仙の毒粉を振りまく地獄の妖精で間違いなかったようだ。


 そんな事を思いつつ、エリーを助け出す旅は続く。


「お前って、人間の街まで行った事あるんだよな?」


「あるよ!人間の街は、夜でも明るくてキラキラしてるんだよ!」


「じゃあ、人間の街まで、後、何日掛かるか知ってるよな?」


 俺は、チンカーヘルに質問する。

 良く考えたら、人間の街に行った事ある奴に、後、どれくらい掛かるのか聞けば良かったのである。


「ん?何もなければ2週間くらいかな?」


「そんなに掛かるのかよ!」


 俺が想像してたより、遥かに時間が掛かる。

 というか、俺は少しでも早くエリーを助け出したいのに……


「ここは、山が連なるアビス山脈よ! 後、もう一つ山を越えなきゃならないし!」


「糞、こんなんじゃエリーを、いつまで経っても助けられないじゃないか……」


「何言ってるの?何もなければ2週間と言ったけど、本当に、何も無い訳ないじゃないの!

 因みに、越えなくてならない最後の山は、黒龍の縄張りだからね!

 私一人なら素通り出来るけど、アンタ達は、その黒龍を何とかしないと、そもそも街には辿り着けないわよ!」


 チンカーヘルの口から、まさかの言葉が飛び出してきた。


「黒龍って、あの龍かよ?」


「そうよ! この世界で一番神に近い生物と言われてるわね」


「俺達に、その黒龍を倒せれると思うか?」


 俺は、黒龍を見た事があろうチンカーヘルに質問する。


「まあ、アンタがどんだけ強かろうと、今の実力じゃ無理よね。だけど、数年掛けて修行して強くなれば、可能性はゼロでは無いわよ!」


 何故か、チンカーヘルが太鼓判を押してくれる。


「俺、急いでるんだけど……」


 俺は、ちんたらしてる訳にはいかないのだ。

 俺が、こうしてる間にもエリーはマイクにヤラれまくり、マイクの虜になってるかもしれないのである。

 実際、ヤヌー牧場でマイクにヤラれた黒ギャル達は、みんなマイクの虜になってたし。


「急いでも、無理なものは無理よ」


「違うルートはないのかよ?」


「どのルートを通っても、黒龍の縄張りは迂回できないわ。だから、この山脈はアビス山脈と言われてるの。

 黒の深淵アビスが、通り行く者を、必ず絶望の淵に突き落とすと言われてるからね!

 因みに、黒龍の縄張りを唯一無傷で通過出来たのは、この私だけ! どう、私って物凄いでしょ!」


 チンカーヘルは、エッヘン!と、胸を張る。


「それは、黒龍に何とも思われてなかっただけでは……」


「なんですって! 黒龍は私の秘めた力に恐れおののき、戦いを避けたのよ!

 私と黒龍が戦えば、絶対にお互い無傷じゃ終わらないからね!」


「へいへい」


 取り敢えず、黒龍は避けて通れない事だけは分かった。

 ならば、俺が出来る事は黒龍を倒す事だけ。

 まあ、実際、俺って強いし何とかなるかもしれないし。


 俺は、そんな感じで、軽い気持ちで考える事にしたのだ。


 そして、俺とマリエとチンカーヘルの3人で旅を続け、ついに黒龍の縄張りに到着したのである。


「アンタ、本当に黒龍と戦うのよね?」


 チンカーヘルが、改めて念を押して来る。


「ああ。俺はやる!」


「そんなに、エリーとかいう子の会いたいの?」


「ああ。エリーは俺の全てだ!」


「私より?」


「何で、お前とエリーを比べなきゃならんのだよ!

 どう考えても、毒虫のお前より、天使のエリーだろ!」


 アホな事を言う、チンカーヘルに強く言っておく。


「毒虫言うな! ただ言ってみただけよ!」


 チンカーヘルは、不満の御様子。

 どう考えても、エリーと自分を比べるチンカーヘルが悪い。


「タカシ兄、この戦いが終わったら、私と結婚しようね!」


 マリエまで、おかしな事を言ってきた。


「変なタイミングで、フラグになりそうな事、絶対に言うなよ!

 それから、俺は、絶対にマリエとは結婚しません!マリエは、ずっと俺の可愛い妹だからな!」


「う~ん残念。こんな状況だからこそ、結婚OKしてくれるかもと思ったのに……」


 何が残念だ。宝くじ買った人に、当たったら半分頂戴というのと一緒だぞ。

 そんなに金が欲しかったら、自分で宝くじ買えっての!

 宝くじ勝った人も、ここで欲をかくと当たらなくなるかもと思って思わず、『うん。いいよ』と言っちゃうんだよ!

 逆に、嫌だというと、運気が下がりそうな感じになって、なんか嫌な感じになっちゃうし。


 本当に、宝くじ勝った人に、当たったら半分頂戴と言うのは、駄目という法律を作って欲しい。


 俺が、もし、この帝国の帝王なら、絶対に法律作るし、半分くれと言った奴は、死刑にする法律に絶対にしてやるのだ!

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