第25話 魔法の力

 

 俺は、魔法が使えないので、どうしたもんかと思ってたが、何とかなりそうな感じで胸を撫で下ろす。


 多分、無駄に体から溢れ出してる魔力が影響して、物凄いパワーのパンチが炸裂したと思われる。

 そういえば、俺のパンチって、魔力が抑えられた状態でも、強固なヤヌー牧場の結界にヒビが入れれるレベルだった。


 まあ、兎に角、ファイアーボールとかの目に見える魔法が使えなくても、多分、身体強化系の魔法はなんとなく使えるので、良しとしよう。


 というか、そんな事よりも、少し気になる事がある。

 多分、俺だけじゃなく、マリエも魔法が使える気がするのだ。


 俺の周りには、ヤバいくらいにオーラというか、魔力が纏わりついてるのだが、マリエの体にも俺ほどじゃないが、魔力の膜のような物が見えるのだ。


「マリエ、お前も多分、魔法使えるぞ?」


「ん?魔法って何?」


 マリエは、魔法と聞いてもピンとこないようだ。


「えっと……サルーで言うと、奇跡の力とか言う奴だな」


「嘘?!」


 マリエ、ビックリ仰天驚いている。


「だって、お前にも俺と同じように魔力の膜が張ってるだろ?」


「何?魔力の膜って?」


「お前、もしかして、俺の体から溢れだしてる魔力が見えてないのか?」


「ん? 何も見えないよ? でも、タカシ兄からトンデナイ覇気というか、プレッシャーは感じるけど?」


 どうやら、マリエには、俺のヤバい魔力は見えてないようだ。

 もしかしたら、魔力を見る能力は、俺だけに与えられた能力なのか?


「ちょっと待ってね!サルーの神父が、タカシ兄の拳の傷を治した所見てたから、同じように、私の指に出来たささくれ治してみる!」


 マリエは、ささくれした指先に向けて、「ヒール」と唱える。


 すると、白っぽい優しい光が、ささくれした指先を覆い、そして、見事にささくれが完治してしまった。


「やった! タカシ兄! 見た! 私ついに徳を積んでサルーになれたよ!

 きっと、ハイブリッドサルーのタカシ兄の、徳を積む旅に同行したからだよね!」


「えっと……奇跡の力を使える=サルーなのか?」


「う~ん……多分、そうだと思う。だって、奇跡の力は、徳を詰んだサルーしか使えないから」


 マリエもあんまり分かってないようだ。

 ただ、俺の認識だと、ヤヌー牧場の結界の中は、魔封じの術式も組まれてるので、ただ魔法が使えなかっただけで、元々、ヤヌーは魔法が使える種族なのだと思える。


 そして、サルーが付けてる隷属の首輪の効果か何かで、サルーだけが魔法の制限を受けていなかったのだ。


 だから、マリエがヤヌー牧場の結界の外に出れば、魔法が使えるようになるのは必然で、何もおかしな事など無いのである。


「私は、ハイブリッドサルーのタカシ兄に仕える使徒になったんだね!」


 なんか、完全にマリエは勘違いしてる。

 まあ、説明するのも面倒臭いので合わせておく。


「ああ。これが、ハイブリッドサルーである俺の力だ!」


「凄い! タカシ兄、私、お股ビショ濡れだよ!」


 マリエは、ヤヌーとサルーの最大限の比喩表現で、俺を褒め称えてくれた。

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