第22話 タカシの決意

 

 家に到着すると、ちょうど学校に行こうとしてたマリエが、玄関から出る所だった。


 それを見つけた俺は、そのままマリエを押し倒し、お姫様抱っこして、ベッドルームに連れていく。


「エッ? 何? どうしたの? ついに私を襲うの?」


 なんかマリエは嬉しそうだ。

 金髪黒ギャルは、やはりというか、貞操観念が破綻してる……というか、フローレンス帝国の奴隷というか愛玩奴隷として飼育されてるので、わざと、貞操観念が破綻するように飼育してると言った方が良いかもしれない。


 ヤヌーとは、なんと可哀想な種族なんだ……とかは、今は考えないようにする。

 俺は、そんなヤヌーの破綻した貞操観念を利用しようとしてるのだから。


 俺が今すべき事は、愛するエリーを、マイクの魔の手から救う事なのだ。

 その為だったら、俺は鬼畜にでも、強姦魔にでも、なんにだってなってやる。


 俺は、妹としか思ってなかったマリエを、自分の都合だけで襲う訳だから、ハッキリ言うと、俺はマイクより酷く悪い奴だ。


「悪いなマリエ……兄ちゃんを許してくれ……」


「タカシ兄は、何も悪くなんてないよ。エリーお姉ちゃんを思い出して、寂しくなっちゃったんだよね!

 私は、エリーお姉ちゃんの妹として、タカシ兄を慰める義務を果たすだけだよ」


 俺は、ヤヌーという種族の考え方を、完全に利用してる。

 ヤヌーの性についての考え方は、全ては、フローレンス帝国によって洗脳された教えなのだ。

 だけれども、今の俺には、その腐った教えを利用するしか手がない。


 そして、俺は、意を決してマリエの布を脱がしたのだが、


『何で、俺の白バナナは立たない……』


 マリエは、俺が愛するエリーと同じ姿だというのに、俺のバナナはピクリとも反応しないのだ。逆に、萎えてしまっている。


 俺は、心を鬼にして、マリエを襲おうとしたのに。俺という男は、なんて情けない男なんだ……

 愛するエリーの為だというのに、俺は鬼になり切れないのだ……


「タカシ兄、落ち込まないで……きっと、帽子被った白バナナが痛くなったのを思い出して、怖くなっちゃったんだよね」


 優しいマリエが、俺を慰めてくれる。

 いや、そういう事じゃないのだけど……


 俺は、情けないやら、悔しいやら、しかも時間も無いので、反論出来ずに、マリエを置いて家を飛び出し、再び教会に戻ってきた。


「神父さん! 俺には無理だ! エリーの妹のマリエと子作りなんか出来ない!」


 俺の告白に、サルーの神父は心底驚いた顔をしてる。


「貴方は、相当な好き者で、ヤヌー偏愛主義者と聞いていたのですが、まさか、大好きなヤヌーを襲わないなんて……」


「神父さんが俺の事を、どう思ってたかは知らないけど、実際の俺は、こんなだからね」


 俺は、自虐するしかない。元の俺、侯爵子息タカシ・エベレストはどうだったか知らないけど、31年日本で生きてきた派遣社員のサイトウ・タカシは、こんなものなのだ。

 だって、31年間、ずっと童貞を守り続けてきたんだよ。いざとなるとビビっちゃうよ。


「いやいやいや。タカシ殿はヤヌー牧場に来るや否や、私に、今居る全てのヤヌーのカタログ見せろと仰られて、そして、一番美人で好みのタイプのエリスさんを見つけると、今から家に行くと、入学式も待たずに襲いに行ったような人ですよ!」


「何、それ……俺、本当にそんなに、ヤヌー狂いの鬼畜野郎だったの……」


「そうです!」


 何故か、神父が胸を張って言った。

 まあ、そんなに性格が変わってたら、神父も驚くしかないか……

 俺の方が、侯爵子息タカシ・エベレストのヤバ過ぎる性格に驚いたけど。


 まだ、鬼畜のマイクの方が、可愛く見えてしまうって……本当に俺は、マイクも言ってたけど、問題児でヤバい奴だったようだ。


「兎に角、俺は、エリーに会って変わったんだよ! もう金輪際、ヤヌーに酷い事しないし、エリーしか愛さないから、直ぐに、別のヤヌー牧場から出る方法を教えてくれ!」


 そう、俺には時間が無いのだ。こうしてる間にも、マイクの魔の手が、エリーに迫っているのである。


「分かりました。タカシ殿にそれ程までの覚悟があるのなら、一つ手を貸しましょう」


 神父が、勿体ぶって言う。


「何だよ! 他に手があったなら、最初から教えてくれよ!」


「ん? ヤヌー偏愛主義者のタカシ殿なら、ヤヌーと子作りする事など簡単な事だと思ってましたので?」


 まあ、そうだよね。俺でも思う。

 だけど今の俺は、サイトウ・タカシであって、侯爵子息タカシ・エベレストではないのだ。

 童貞の俺にとって、イキナリ彼女の妹と子作りするミッションなど、まさにエベレストタカシなのである。


 せめて、高尾山程度の山にして欲しかった。


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