第11話 11日目

 

 11日目。


 異世界に来てから、11日目。教室に着くと、とんでもない話を聞いてしまったのである。

 俺の親友で、心の友であるタイガー君が、新入生のマイク・ベッケンベウアー君に彼女を寝盗られてしまったという話を。


「タカシ……俺、悔しいよ……」


 タイガー君は、悔しさのあまり泣いている。

 俺だって、大好きエリーを寝盗られたら悲しくなってしまうので、タイガー君の気持ちは、痛いほど解る。


 だけれども、ヤヌーは、ヤヌー同士で絶対に一線を越えれないのだ。

 そうすると、やはり、ヤヌーの女子は、俺やマイク君のような白い人と付き合いたくなるというもの。


 だって、ヤヌーて、とんでもない性教育を受けてるから、いつだってムンムンムラムラしているのだ。


 そして、タイガー君に、どうやってマイク君に彼女を寝盗られたのか聞いてみたのだが、そのやり方が、トンデモない卑劣なやり方だったのだ。


 その話は、昨日の夕方にまで遡る。


 突然、マイク・ベッケンベウアー君が、タイガー君と同棲してる彼女との愛の巣に、泊めて欲しいと訪ねて来たらしいのだ。


 ヤヌーの流儀として、隣人が訪ねてきて、家に泊めて欲しいと言われたら、無条件に家に泊めなくてはいけないルールがある。


 所謂、『ヤヌーの4つの戒律』の1つ目、『隣人に優しく、異民族により優しく手を差し出せ』と、2つ目、『隣人が食事に困ってたら、自分の食事を。寝床に困ってたら、自分の寝床を分け与えよ』だ。


 なので、タイガー君は、喜んでマイクベッケンベウアー君を家に招き入れたのである。


 そして、当然というか、ヤヌーは、混浴の文化があるので、タイガー君と、彼女さんと、マイク君は一緒にお風呂に入り、そして、ベットに入ったのだが、そこで事件は起きたのだ。


 既に、一緒にお風呂に入ってた時も、タイガー君が、マイク君に、『背中を流してやるよ!』言ったのに、マイク君は、『男は俺に触るんじゃねーよ!』と、拒否られた挙句に、ずっとマイク君は、彼女さんの必殺泡踊りを堪能してたらしい。


 そして、そのままベットに突入し、突然、マイク君は、タイガー君の彼女さんと、子作りを始めてしまったというのだ。


 本当に、言ってる意味が分からない。


 なんで、マイク君は、イキナリ、タイガー君の彼女さんと子作りするのだ?

 普通、彼女さんも、タイガー君も拒否する所じゃないのか?

 もしかしたら、これも、『ヤヌーの4つの戒律』が、関係してるのか?


 ヤヌーの4つの戒律は、


 1、隣人に優しく、異民族により優しく手を差し出せ。

 2、隣人が食事に困ってたら、自分の食事を。寝床に困ってたら、自分の寝床を分け与えよ。

 3、右頬を打たれたら、左頬を差し出し、嫌な人を愛し、敵を愛し、迫害する人を愛せよ。

 4、そして、この3つの戒律を守る事こそが、サルーに至る道である。


 と、ある。

 多分、今回の件は、1と、2と、3が関係するのだろう。


 タイガー君と彼女さんは、マイク・ベッケンベウアー君という、異民族に優しくして、自分の寝床を明け渡し、そして、タイガー君は、右の頬をぶたれた(彼女を奪われた)ので、そのまま、左の頬(彼女をさしだした)のだろう。

 そして、マイク・ベッケンベウアーという、嫌な人を愛し、赦してしまったという訳だ。


『ヤヌーの4つの戒律』……なんとも思ってなかったが、ヤバ過ぎる戒律である……


 ヤヌーという民族の特性上、異民族を使って、子孫を残さないといけないのは解るが、だからと言って、これは酷い。


 だって、タイガー君は、彼女さんとマイク君が子作りする所を、ずっとモンモンと文句も言わずに見ていたのだろ?

 マイク君も、せめて、タイガー君が見てない所で、タイガー君の彼女さんと内緒で子作りすればいいのに……


 というか、マイク君は、『ヤヌーの4つの戒律』を熟知していて、事に及んだと考えられる。

 胸糞悪い。マイク君は、ヤヌーの風上にも置けない糞野郎だ。


 人の彼女を寝取り、しかも、彼氏の目の前で事に及ぶとは……


「俺、悔しくて、悔しくて、自分が情けなくて、そして、彼女が気持ち良さそうに喘いでいるのに、興奮してしまって、本当に、俺って奴は……糞で……変態で……」


 タイガー君は、泣きじゃくり、机をガンガン殴り続ける。

 タイガー君の拳は割れ、血が滲み出ている。


「もう、止めろ! お前は悪くない!」


 俺は、見てられなくて、タイガー君の腕を掴む。


「俺は悪くないって?! そしたら、俺はどうすれば良かったんだよ? 彼女が気持ち良さそうに喘いでるのを、ただ指を咥えて見てたら良かったのか!」


「気持ち良さそうだったのか?」


 俺は、思わず聞いてしまう。


「ああ! 気持ち良さそうだったよ! 何回も何回もイッて、俺と擬似子作りをしてる時とは、比べられないほど、良い顔してたんだよ!」


 なんか、話を聞いてたら辛くなってきた。

 何十回もやる擬似子作りよりも、本番の子作りの方が何百倍も気持ち良いという事なのだ。


 これはもう、タイガー君は、絶対にマイク君には敵わない。

 だって、もう、タイガー君の彼女さんは、確実に、マイク君に虜になってしまっているのだから。


 女の子は、一度、気持ちいい子作りを覚えてしまったら、暫くは、オ〇ニー覚えたてのサル状態になって、何度も求めてくるようになると、昔、誰かがSNSで書き込んでたの見たし。


 本当に、タイガー君が気の毒でならない……

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