第3話 ヤヌー

 

「じゃあ、タカシ行くよ!」


 金髪黒ギャルのエリーが、俺の手を握ってどこかに行こうとする。


「エッ!? ちょっと、どこ行くの?!」


 俺は、物凄く慌てる。てか俺、裸なのに。

 手を持たれちゃうと、見られたくない白バナナが見えちゃうし。


「勿論、学校!」


「学校って、俺、裸じゃん!」


「ん?それもそうね」


「俺が着てた服とか無かったの?まさか、俺、裸でエリーの部屋の外で倒れてた訳じゃないよね?」


「ん?服ならタンスに仕舞っちゃった! 今、持ってくるね!」


 エリーは、そういうとタンスから、俺が着ていたという服を出してくれた。

 というか、この服……


 そう、その服は、結構、上等そうな服で、まるで貴族のお坊ちゃんが着るような服だったのだ。


「これが、俺の服?」


「うん。タカシが着てた服」


「エリーが脱がしたんだよね……」


「うん。そして洗濯して、タカシの体も綺麗に拭いてあげた」


「そ……そうなんだ……」


 なんか、寝てる間に体の隅々まで拭いてもらったと思うと、とても恥ずかしくなる。

 きっと、俺の白バナナも丁寧に拭いてくれたに違いない。


 うわー! 俺って男は、なんて想像してるんだ!

 こんな、見た目は金髪黒ギャルだけど、心優しい少女に対して、卑猥な妄想をするなんて……俺は少しだけ反省してしまう。


 だけれども、ちょっと、この世界の貞操観念が気になる所。

 まあ、今の俺って、12、3歳くらいだから、15、6歳だと思われるエリーには子供に見えるのかもしれない。心は大人なのにね。


 取り敢えず、上等な貴族服を着ると、俺はエリーに手を繋がれて、学校に向かう事になった。


 そして、やっぱりというか、この世界を少し見て歩いて気付いたのだが、金髪碧眼の黒ギャルがスタンダードの世界で間違いないようだ。

 エリーより小さい子供まで、金髪碧眼の黒ギャルだし。


 子供から金髪黒ギャルになってしまうなんて、なんて進んだ世界。

 日本だと、早くても黒ギャルになってしまうのは中学生からなのに……


 まあ、男も例に漏れずに、金髪碧眼のこんがり日焼けしたサーファーばかりなんだけど。


 本当に、この世界何?

 ちょっと、みんな見た目がイケイケで怖いのだけど。

 しかも、みんなとんでもなくスタイルが良くて、顔が整ってるし、この世界には、ブ男が居ないのかよ?


 折角、欧州系美少年に転生できたというのに、こんなにイケメンばかりじゃ、俺のアドバテージが全く無いじゃん。俺は、ブ男ばかりの異世界に転生したかったよ!


 そんな事を思いつつも、俺はエリーに手を繋がれて学校に到着。

 本当に、全く、この世界についていけない。

 俺、そもそも記憶無いのに、何で学校に連れてかれちゃうのだろう。全く意味がわからない。


「あの~エリーさん……俺って、多分、この国の住人じゃないよね?ほら、俺って白いし、なのに、俺はこの国の学校に行かなきゃいけない訳?」


 俺は、当然の疑問を質問してみる。


「ん?普通、ヤヌーは学校に行くものだよ?学校行かないヤヌーなんて、居ないんだから!」


「えっと……ヤヌーとは?」


 俺は知らない単語が出て来たので質問する。


「ヤヌーは、ヤヌーだよ! 私もタカシもヤヌーだよ!」


「もしかして、人間とか?ヒューマンとかと同じ意味?」


「何?人間?ヒューマン?それ、美味しいの?」


 エリーは、首を捻る。どうやらこの国には、人間とか、ヒューマンという言葉がないようだ。代わりにヤヌーという言葉があるらしい。今迄、普通に言葉が通用してたので失念してたけど、ここは異世界、違う言葉が有ってもおかしくはない。

 きっと、ヤヌーとは、人間と同意の言葉で間違い無いであろう。


 学校に到着すると、エリーが友達を色々紹介してくれる。というか、この国が天国に思えてきた。日本で金髪黒ギャルなんて、絶滅種族だが、俺的には大好きな種族なのだ。


 だって、とてもエロ可愛いく感じるし。

 しかも、どうやら制服は、エリーと同じ格好の薄い布だけ。大事な所を隠すだけで、お腹も丸出しだし。お腹が冷えないかが心配になるレベルだし。


 因みに、下の布は中身が見えないように、褌のように巻いてから、パレオみたいに横に巻いて結ぶ感じになってる。

 胸を隠す布は、前で結んだり、横で結んだり、後ろで結んだり様々。みんなただの布で個性を出してるのだ。

 流石は、オシャレな金髪黒ギャルといった感じ。

 多分、制服であるただの布でも、最大限のオシャレを楽しんでいるのであろう。


 逆に、男の服は白いカッターシャツに、黒いズボンを履いている。

 何故か、胸元が開いてるのは気になる所。

 ヤケにセクシー。多分、校則で第3ボタンまで開ける規則でもあるのだろう。


 そして、学校の授業が始まる。

 学校の先生は、白人の異物である俺が居るというのに、全く気にする素振りもない。

 やはり、ヤヌーというか子供は学校に行くのが、この世界のスタンダードかもしれない。


 そして、朝礼の後、授業が始まる。


 1限目は、道徳の授業。

 嘘をついてはいけないとか。人に親切にしようとか。基本的な事を教える授業のようだ。

 確かに、この国の住人は、良い人ばかり。

 見ず知らずの他人の俺を、自分の家に入れて介抱してくれる可愛い女の子とかも居るし。


 2限目は、歴史の授業。


 ヤヌー国の国の成り立ちや、聖なる山、アビス山の話。

 どうやら、ヤヌーという種族は、アビス山の麓にある割れ目からこの世界にやって来た種族であるらしく、選ばれた種族であるらしい。

 まあ、真実かどうかは分からないが、兎に角、ヤヌーは、アビスから生まれて、アビスに帰るとか。


 本当に、神秘的な話で、山岳信仰と、歴史と、宗教がゴッチャになってるような話だった。人間が割れ目は割れ目でも、山の割れ目から生まれてくる筈ないのにね。


 というか、もしかしたらこの世界では、本当に、人は山の割れ目から生まれてくるかもしれない。

 まあ、異世界だし、俺の知らない事もありそうだ。その辺の事はおいおい人に聞くなり、勉強していこうと思う。


 それからもう一つ。先生達は種族が違うらしく、サルーという種族らしい。

 なんでも、アビス山の割れ目に帰って、戻って来た者達の事をサルーというらしく、サルーは25歳以上の大人しか居ないらしい。


 大体、見た目で分かるのだけど、サルーは首にオシャレな銀の首輪を付けてる。なんかアビス山の割れ目が描かれていて、割れ目の中心には丸が描かれている。話によると、深淵を覗く目との事。


 本当に、もっと上の方に丸が描かれたら、違う割れ目の絵になっちゃって、首輪を付けるのが恥ずかしくなっちゃう所。


 そんな下賎な話は置いといて、話によると、16歳以下の子供は全員ヤヌーで、25歳以上の大人は全員サルーとの事。

 ヤヌーは、16歳の誕生日に、一度アビス山の割れ目に入り、そしてなんらかの修行をして、徳を積んだ者だけが、銀の首輪を得てサルーになり、またこのヤヌー国に戻っで来られるらしい。


 そして、ヤヌー国に帰ってきた大人のサルーが、この国の先生をしたり、国を管理してるのだとか。


 どう見てと、同じ人間に見えるけど、何がどう違うのだろう?

 サルーとは、徳を積んだヤヌーらしいので、何か違う特徴を得たヤヌーだけが、サルーになれるのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る