第7話 調整弁と利益率
半壊したお菓子の製造工場も調査することになった。
AMIに所属する科学捜査&錬金捜査班が、壊れた製造ラインの残骸を調べて、すぐに問題が発覚した。
「これ、最近になって調整弁を追加でつけましたね」
ザーセクは、エーテルアーマーを装着したまま質問した。
「調整弁ってなんですか?」
「科学と錬金術をミックスして使用する機械には、本来外部への流出を防ぐための調整弁が必要なんですよ。でもこれを使うと反応効率が悪くなりますから、原材料の三割が消失する計算になります」
「調整弁がないと、流出するんですか、素材が?」
「排水内部に含まれる錬金増幅剤の比率が、工業用の下水に流していい水準を大幅に上回るんですよ。だから法律で制限されているんですが、利益率を増やしたいなら調整弁を外すことになります。だからたまに発生するんです、この手の企業犯罪って」
「たまに、ってことは、前例があるんですね」
「ありますよ。で、だいたいのパターンで、より事態が悪化していくんです。だからこの手の企業犯罪って、殺人より重い判決が下されるんですよ」
「……殺人より重いのに、なんでこんな大きな企業が悪いことをしちゃうんでしょうね」
「数字に心を支配されるんじゃないですか? ほら、聞き取り調査に応じている従業員の人たちも、あきらかに過労気味じゃないですか」
警察の聞き取り調査に応じている従業員たちは、みんな疲弊していた。
きっと普段から法外な条件で働かされていたんだろう。
それに彼らが悲しそうではないあたり、この工場が不正をしていたことに薄々気づいていたはずだ。
問題の中心であるセザリナ常務は、レイドリン課長が取り調べているから、その結果次第で、さらなる事態の究明が進んでいくだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます