1555年〜1556年 畿内制圧

 足利義輝は罪人の様に大内の陣に連れ出された。


 縄で縛られ、陣の真ん中に捕らえられた幕臣達と共に座らされている。


「義植様、賊軍とはいえ、公方は公方、武家の頂点にいるお方。それ相応の扱いをしなければなりません」


 毛利元就はそう言う。


「それは無理だ。元就殿。この日ノ本の混乱は室町により始まった。私が立ち上がらなければ天下はあと五十年は乱れたままであっただろう。故に公方には責任を取ってもらわなければならない。征西将軍として、朝廷からの命令故にこの手で負の連鎖を断ち切る」


「諸将よ、永遠の命を足利義輝に与えようと思うがどうか?」


 私の問いかけに皆意味がわからないと言う顔をする。


「それはどういう意味で?」


「死ぬことができない···永遠の苦痛···自害できず、狂うこともできない私の考える最悪の刑罰だ」


 足利義輝に私は近づく


「公家もどきめ、将軍家の恩を忘れた悪人め!」


「足利義満の頃より大内は常に幕府によって苦渋を舐めさせられ続けてきた。幕府に恩義? 常に罰を与え続ける幕府に恩義など感じられるか!」


 私は足利義輝の頭を掴む。


 足利義輝の身体が徐々に石化していく。


「石になり、永遠の時の中で···天下を乱し続けた足利の罪を償え!!」


「恨み続けてやるぞ! 義植ぇぇえ!!」


 ガチンと足利義輝は灰色の石に変わってしまった。


 その光景を観ていた諸将らに幕臣達も大内義植の神通力に恐怖し、人を超えた力に恐れ慄いた。


「さて、幕臣の皆さんも国の礎となってもらいましょう」


 私が触れると体がグニャァと捻じれ、圧縮され、鮮血の様な赤い宝石へと変わっていく。


「畿内平定を進めるぞ! 朝倉、六角残党を制圧し、日ノ本を真なる意味で統一するのです!」










 大和平野の戦いは多くの者が書物を残したが、多くの将及び帯同したルイス・フロイスも大内義植は神に選ばれた者もしくは偉大なる錬金術師と称した。


 歴史解析が進んでいない頃は足利義輝に呪いをかけて石に変えたと伝わったが、足利義輝像の解析が進むと臓器や骨格をも石に変わっており、通常の石でないことが判明した。


 しかも足利義輝像に音波探知をしたところ、『た·す·け·て』とか『こ·ろ·し·て』という言葉に近い振動が起こっている事が判明し、大内義植をルイス・フロイスがこの時のことを人ならざる者、神秘を備えている、偉大な錬金術師と色々な事を書物に書くが、大和平野の戦いを総評してこう書かれている。


『旧体制と新体制を決定付ける日ノ本最大の決戦であり、大内軍は上杉軍(長尾景虎軍)による攻撃で背後を脅かされながらも、大友軍と大内軍が大砲を投入し、危機をだっした』


『主戦場であった平野では大内軍による鉄砲を集団運用した新戦術···戦列歩兵と呼ばれる運用で旧式の軍を圧倒し、島津が敵の将軍を捕えたことで西国政府軍の勝利に終わった』


『ただ捕えた敵将軍を石像に変え、敵将軍の家臣達を宝石に変えてしまった。大内義植に聞くと賢者の石だと言い、万物を生み出す奇跡の石だと言った。賢者の石をどう使うかは答えてくれなかったが、四国の島に突如として出現した第三の世界樹を産み出したのも義植によるものと考えられる』


 ルイス・フロイスの書により現代ではギネス記録となっている全長1500メートルの巨大樹の千年桃のことではないかと記載されていたが、時系列がおかしい為に歴史学者達は頭を抱えることになる。








 各方面軍は義植の命令で弱体化した幕府勢力討伐に向けて動き出し、大内義植は京へ向かった。


 京の大内館へまず挨拶に赴いた。


「久しぶりですね父上」


「ずいぶんとまぁ···将軍を倒してしまうとはな···」


「まぁこれで室町幕府は倒れました。足利義輝の親族も捕え、幕臣達もほぼ討ち取りました。足利が北条執権を打ち倒した様に···今度は大内が足利を打ち倒した。それだけのことです」


「大内家を短期間でこれほどまでによく成長させたものだよ全く···帝から直接話したいと仰せだ。上殿できるな」


「勿論。これより天下を統一する一大事業が始まるのですから!」


「武家の大内を頼むぞ」


「ええ、公家の大内は亀丸に頑張らせてくださいよ」










 帝から今回の働きに報い、日本国王を名乗る事が許された。


 帝は天皇として君臨し、実務を国王が行うという体制に移行。


 まぁ私は今まで通り征西将軍を名乗るが、帝に新政権を承認してもらい、室町幕府に付くものは朝敵であることを約束させた。


 1555年、内閣府畿内平定。


 今回の功績として畿内の新たに獲得した領土なのだが、四国全域と畿内全域は大内直轄領として組み込み、他は松永家みたいな早期に西国政府軍に合流もしくは服従した大名や国人は国替えはしたもののほぼ朝倉とか六角旧領に移動させ、領土の広さは維持。


 紀伊等の地侍等が抵抗する地域は畿内平定軍をそのまま制圧に転用し、畿内付近の各国は九州各家や毛利の分家が統治することになる。


 1555年から1556年にかけて制圧した地域は阿波、讃岐、播磨、但馬、丹波、山城、丹後、摂津、河内、和泉、大和、紀伊、近江、越前であり、14国にも及んだ。


 一つの地方を制圧したことにより行政能力はいかに内政能力に長けた大内率いる西国政府及び大内家であってもパンクしてしまい、ここで勢力の拡張の一時停止を余儀なくされる。


 大内家は西国各家の次男以下の余剰人材を新政権への参加を要請し、西国に避難していた貴族達や京の貴族達···行政能力を持つ者をかき集め、新政府への参加を要請。


 西国政府改め内閣府は公武合体を達成し、新たな領域に突入していくことになる。








 暫定的に東国進出の拠点として石山本願寺の大坂を畿内行政の拠点を琵琶湖があり、交通の要所である安土の地に東国進出の拠点をそれぞれ建造を開始した。


 更に内閣府に美濃の斎藤道三と尾張統一を完了した織田信長が合流し、未だ抵抗を続ける伊勢の北畠家を包囲することに成功。


 一方北は加賀が制御不能な一向一揆が石山の制御を逸脱し、新政府と敵対。


 更に東国では甲相駿三国同盟など一体化が加速していた。


 越後に帰った長尾景虎(上杉謙信)も内閣府と敵対を表明しており、まだまだ日ノ本統一には程遠いのであった。








「始めまして織田信長、君と喋りたいと思っていたんだ」


「余も是非喋りたいと思っていたんだ! 征西将軍殿」


「妹が息子に嫁いでいるんだ。叔父でも年が近いから兄とでも呼べば良いさ」


「ではお言葉に甘えて···兄上は今後どの様に動くのですか?」


「急速に拡張してしまった為に五年は行動不能だ。とりあえず伊勢は攻め滅ぼすが、北伊勢は信長いるか?」


「貰えるなら貰いたいが」


「ならやるよ。軍は出してもらうがな」


「わかった」


「伊勢制圧後は行政能力の強化と新政府の根幹となる法律を決めなければならない。武家と貴族の対立も今は表面化していないが中華の様に武官と文官が対立するように亀裂が起こるだろう。それを解決していく」


「どうやってだ?」


「手っ取り早いのは原因だ。私は種が強いらしくてね。子供がドンドン産まれるから血で汚染するのさ···貴種をね」


「それだけではないんではないのか兄上」


「日本国王として帝の代理人として千年帝国を作らなければならない。信長、世界と戦うぞ! 私の命が尽きる前に日ノ本を拡張する!」


 私の言葉に信長は力強く頷くのだった。

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